コルネリアはどうしていいか迷い、グラスの縁を指でなぞっては目を泳がせる。
 そう、今日は彼の誕生日。
 好きな人の誕生日という絶好の機会を逃すわけにはいかない、そう思ってコルネリアは自分の中に眠っていた気持ちを打ち明けた。

「恋をしました」
「……え?」

 あまりに予想外の言葉がコルネリアから出てきたため、目を丸くして食事をする手が止まった。
 レオンハルトがコルネリアに目を向けると、もう彼女は顔が真っ赤どころの騒ぎではない、耳も真っ赤になり、瞬きは速く、そして膝にちょこんと置かれた両手も小刻みに震えていた。
 そのあとすぐに間に耐えられないといった様子で目をぎゅっと閉じる彼女を見て、レオンハルトはカトラリーを置いて彼女の元へと向かう。

「──っ!!」

 コルネリアは気づくとレオンハルトに後ろから抱きしめられていた。
 首元に回された逞しい腕、そして伝わってくるあたたかさの中に少し彼の緊張が混じっているような気がした。

「ようやく気づいてくれた」
「え?」
「僕はずっと前から恋をしていたのに」

 レオンハルトはコルネリアの首元に顔をうずめて耳元で囁く。