(声は出る、でもなんで歌えないの?!)

 その瞬間、甲高い声がホールに響き渡った。

「神の怒りを受けたのですわ!」
「え……?」

 まるで舞台役者のように大きな身振りと声で人々に聞こえるように言う。

「ああ、やはりロラの言ったことは本当だったのだな」
「ええ、ゼシフィード様、エリーヌは次の大舞台に立つわたくしに嫉妬して何度も嫌がらせをしていたのですもの」
「え……」

 その言葉に聴衆は耳を傾け始める。
 そして、ゼシフィードはゆっくりと舞台上にいるエリーヌの元へと歩み寄ると、彼は皆へと宣言した。

「聞けっ! このエリーヌは私の婚約者という立場でありながら、他の男と浮気をしていた。さらに、そこにいるロラに地位を奪われると危惧して嫌がらせの数々をした!」

(え……!? 私、そんなことしてない……!)

 何が起こっているのかわからず、否定の言葉をなんとか紡ぐ。

「違いますっ! 人違いです! そんなことやっておりません!!」
「いいえっ! エリーヌはわたくしのドレスを破いて舞台に上がれなくしたり……」

(それは、ロラが仮病で休み、私が代打に入った日……!)