大林先生はその封書をテーブルに置くと、わたしの目を真っすぐに見た。
「参加するのか?」
「正直、迷ってる。参加して、未来に向けた手紙をみんなの前で読んで。それってある意味、公開処刑じゃん...」
 大林先生は二本目の缶ビールを開け、喉に流し込む。
「でも、正直に手紙の内容なんて読まなくったっていいんじゃないか。三島は文才があるから、架空の内容で聞かせてやってもいいいんじゃないか」
「大林先生は参加するの?」
「わたしはもう、あの高校とは関係ない。参加する権利なんて、ないよ」
 おそらく、由梨は参加するだろう。そのことで近日中に、由梨から連絡が来るだろう。わたしがきっと、お披露目会に参加すると由梨は信じている。

 案の定、由梨から電話がかかってきた。
「もちろん、綾子も参加するでしょう?」
 わたしはまだ、この時点では参加するかどうか決めかねていた。わたしには由梨に隠していることがあるし、由梨がそのことをいずれ知る。そうなった時、わたしたちの友情は薄氷を踏み破るように瓦解してしまうだろう。
 Y高校ではたった三か月の在籍だったが、唯一できた親友は由梨一人だけだ。大人になってからも友人関係は続いている。そんな彼女を裏切るような内容の手紙を読む。そして、手紙の通り、わたしは大林先生と半同棲中だ。もしかすると、結婚だって考えられる。
 その事実を知った彼女を想像しただけで、肌が粟立つようだった。
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 お披露目会当日、わたしが駅に降り立つと、由梨が赤いミニバンに乗って迎えに来た。
 レイバンのサングラスをかけ、鳶色のブラウスを着た由梨は白い歯を見せ、わたしに笑いかけた。