ペットは飼うことは許されていたが、わたしは犬や猫のような動物の毛のアレルギー体質なので、何も飼ってはいない。
「へえ、じゃあ、十二年前に雨の中、掘り起こしに行ったのは無駄足だったね」
「なに言ってるの?あれはあれでよかったの。わたしたちの友情が深まったんだから」
 確かに、わたしはその二か月後、再び東京の高校に転校するのだが、別れ際に由梨に泣かれてしまった。
 わたしが東京に舞い戻っても、連絡は取り合っていた。
 大林先生はまだ諦めていないとか、タイムカプセルの目印になっていた桑の樹が伐採されて、地元で活躍した、名前の知らない武将の像ができたといったことなどをメールで知った。
 あれから十二年、わたしたちは大人になり、いい歳をした女性になった。
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「十二年後に向けた友人、自分への手紙を書くように」
 ホームルームで担任が生徒に向けて言った。その未来に向けた手紙をタイムカプセルに埋め、十二年後に開いて、皆の前で発表するという。
 なんだか楽しそうでもあり、無神経な企画のような気がした。
 そもそも未来なんてわからない。クラスの大半は手紙に書かれた内容通りにはいっていないだろう。それらの手紙を発表することで、一体誰が得をするのだろうか。
 わたしは不思議だった。由梨はというと、未来への手紙をさっさと書いてしまった。わたしには書くべきことがなかった。
「わたし、もう書けた。というか、十二年後、自分がそうなっていたらいいなあと思うことを書けばいいのよ」