「大林先生はわたしに、絶対気がある」
 思春期の女子特有の根拠のない自信。ある意味、楽天家でその姿勢は良いのだが、あまり自信を持ち過ぎると、手痛い傷を負うことをわたしは、心配してしまう。
 友達が悲しんでいる顔をできれば見たくはなかった。
 わたしたちはテニスの技術は素人並みなので、球拾いやコートの整備などをやらされた。
「大林先生は人気がある。やめた方がいいよ。それに、テニス部に入った動機が不純だよ。そろそろ辞めようかなあ」
 わたしが帰り道で由梨に言うと、由梨は目を三角にした。
「綾子がそんなこと言うなんて...。でも、わたしは一人になっても辞めない。大林先生を追い続ける」
 由梨の決心は固かった。
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「でもさあ、結局、タイムカプセルの中の手紙は変えることができなかったんだよねえ」
 わたしが言うと、由梨は待ってましたとばかりに、くすりと笑った。
「実はさあ、今同棲している拓也と真夜中に出かけて、手紙を交換したんだ。だから、もう大丈夫。タイムカプセルお披露目会の時には、わたしは恥をかかずに済むってわけ」
 現在、由梨は山梨で拓也というトラックドライバーと同棲しているらしい。近々、結婚も決まっている。
 一度紹介されたことがある。大林先生とはまったく、タイプの違うガテン系で、大林先生はどこ吹く風で、すっかり彼にぞっこんの様子だ。
 わたしはというと、特定のカレシもおらず、一人気ままに都内でOLをしている。都内の駅から徒歩、十五分くらいのワンルームマンションに住んでいる。