わたしは手紙を開き、大林先生が好きだったこと。将来的には大林先生と温かい家庭を築いているといった内容の手紙を朗読した。
 周りの男性陣からは冷やかしの声が上がったが、わたしは気にならなかった。わたしが気になったのは、由梨の反応だった。由梨は表情ひとつ変えず、ずっと一点を見つめていた。
 そして、由梨の番が来た。
 由梨はおもむろに手紙を開いた。
「わたしには大切な友達がいます。わたしはその友達のことが大好きです。大人になって結婚して家庭を持っても、その友達とは死ぬまで仲良くしていたいです。
 彼女はわたしと同じく、テニス部顧問の大林先生が好きらしいです。わたし、知っていました。友達は嘘をつくの下手だから。わかっちゃうんですよね。わたしは良き恋のライバルを持ったわけです。もし、大林先生とつきあうことになったとしても、わたしは応援します。だって、知らない女性に盗られるくらいなら、友達に盗ってもらった方がいいでしょう。
 わたしはそれでも、卒業するまでに大林先生に思いの丈をぶつけます。それでダメなら、諦めます。
 十二年後、わたしはまだ独身かもしれません。でも、運命の人が見つかれば結果オーライだと思います。友達が大林先生といっしょになっていたら、わたしは全力で応援します。
 最後に、わたしにいろいろ協力してくれてありがとう。わたしの愛しき友よ」
 その瞬間、周りからまばらな拍手が沸き起こった。わたしも自然に拍手をしていた。
「これがわたしの秘密。お互いに貸し借りなしね」
 由梨はわたしにウィンクしてみせた。