総勢三十人の元生徒たちが校庭に集まっていた。このご時世のせいか、男子も女子も独身が多くて、出席率は高った。
 校庭の隅には小さなショベルカーが鎮座しており、わたしたちの未来への手紙の発掘作業を待っている。
 それぞれが校庭で、高校時代の話に花を咲かせていた。
「ほら、この辺に桑の樹があったけど、今はこの通り、わけのわかんない武将の像が建ってるの。記念に写真でも撮る?」
 由梨が訪ねると、わたしは首を横に振った。
 わたしは由梨をまともに見れなかった。大林先生と半同棲なことも、未来への手紙に大林先生といっしょになっていることを書いたことも、胸のうちから出してはいないのだから。
 いよいよ、ショベルカーが穴を掘り始めた。すくいあげた泥土が、わたしたちが過ごしてきた時間の堆積のように見えた。
 横にいた由梨がわたしに囁く。
「実はさあ、わたしも綾子に隠していたことがあるんだ」
 わたしは思わず、由梨の横顔を見た。由梨はショベルカーが土を掘っている場面を楽しそうに微笑みながら見ていた。
   ★    ★    ★
 担任は参加した元生徒たちに未来への手紙を配った。わたしと由梨の手元にも、十二年ぶりの便りが届いた。
「えええ、出席番号順に披露してもらおうと思っていたが、今回は逆からにしようと思う。異論はないね」
 参加者から戸惑いの声が出たが、担任は独断で進行した。となると、わたしの方が先に秘密を打ち明けることになりそうだ。
 大林先生が助言したように、手紙の内容を変えて披露すればいいと言ったが、もしかすると、担任がお披露目会の前に各自の手紙をチェックしているかもしれない。それに、こんなたくさんの元生徒たちの前で嘘なんかつけない。
 それぞれが十二年前に書いた手紙を朗読する。わたしは自分の番が回ってくる気配に手に汗握る。やはり、これはれっきとした公開処刑だ。