病室で急に怒鳴ったことで、何事かと慌てて入ってきた看護師さんが私を外へ連れ出した。他にも患者がいる、落ち着いてくれと。自分でもわかっていたけど、どうしても気持ちが先走ってしまった。
 母から自販機で買ったばかりの温かい缶コーヒーを受け取る。手のひらで転がしていると、母は言う。
「今夜、お通夜だって。お母さんはおばさんの手伝いに行くけど、美織はどうする?」
「…………」
「……裕くんもきっと、何か理由があって連絡できなかったのよ」
「裕は……どうして死んだの?」
 裕が死んだと連絡をもらったとき、上京していた私には裕が今までどこにいて、どうやって死んだのか、「公園のベンチで見つかった」こと以外、詳細を聞かされていない。
 まっすぐ見据えると、誤魔化しきれないと悟ったのか、母は躊躇いがちに答えてくれた。
「病院のすぐ近くにある公園のベンチで、雪に埋もれていたらしいわ。いつからいたかはわからない。救急車を呼んでくれた人が裕くんのこと知っていたから、おばさんのほうにも連絡がきたの」
「雪に……?」
「でも心臓は昨日の夕方には止まっていたって、お医者様はそう言っていたわ。もしかしたら、最後に会いに戻ってきてくれたのかもしれないわね」