本棟3階にある自販機が見えた時、みおは駆け出した。「おっ、イッツ・ショウブタイムー!」という唐突な開戦宣告と共に車椅子でダッシュする亮。
二人が先に着いたはずなのに、後からやってくる姫と雅代が到着しても、まだ飲み物を決めかねていない様子だ。
「う~~~~~~~ん」
「ヨシ、決めた!」
「お、お兄ちゃん、何にするのぉ~?」
「さっぱり分からないことは分かっタ!」
「……それ、決めたとは言えなくない?」
「ヒュー、姫のツッコミは今日もキレキレですなぁ~。しゅきィィ」
「お姉ちゃん、だぁーいすきぃ~」
ふざける亮とは違って、みおのは純粋な好意から来るものだ。
そんな二人からの突然の告白を受け止めた姫は戸惑いを隠せず、言葉に詰まってしまう。行き場を失くした視線が二人の間を彷徨い、やがて自販機のブラック缶コーヒーに止まる。
「……ええっと、ちょっといい?」
「どうぞどうぞ」
亮がみおのところへと後退し、道を開けた。彼女が何を選ぶのだろう、と二人の視線が姫の指先に集中。
「「おお~~」」
「すごぉーい。お姉ちゃん、大人だぁ~」
一瞬、缶コーヒーを運ぶ姫の手が一瞬ピタリと止まったが、すぐに再開した。
だけどその後、缶コーヒーを美味しそうに飲んだ彼女を見て何を思ったのか、亮が唐突に「私も飲んでみたい!」と主張した。
雅代はすぐさまに彼を睨んだが、その攻撃は無効だと分かっていても尚、攻撃の手を止まず、更に鋭くする。自分の従者がそんなことをしているとは知らずに、姫が少し逡巡してから缶コーヒーを差し出した。
「……じゃあ、飲んでみる?」
「なッ」
「おっ、いいですか? じゃあ、遠慮なく……」
「ちょッ」
雅代が止めようにも時は既に遅し。缶コーヒーが既に亮の手に渡ったのだ。
「いただきまース!」と缶をクイッと傾けている亮を見て、姫は思わず「あっ」と声を上げた。
「うん! にっがぁぁぁぁーーい!!」
そんな彼のリアクションにみおは腹を抱えるように笑い、雅代に至っては「当然でございます」と言い放つ。はいと共に、亮は姫に返しては再び自販機に向け直り、悩ましい声を上げ続ける。
「とうとうやってくれましたね、下郎」
「うん? 何の話?」
あからさまにとぼける亮を見て、雅代はムカついた。
みおの前で間接キスのことを持ち出すわけにもいかず、代わりに「この恨み、いつか晴らしてみせます」と宣言。
一方、肝心の姫はというと、彼女は無言で飲み口の部分を見下ろしている。正確には、飲み口の部分で少し溜まったコーヒーをだ。
「………」
自分が飲んだ時にはなかったのに、彼が返してくれた時にはそれがあった。いくら彼女が温室育ちとは言えど、これを飲んでしまえば間接キスになるということを以前、雅代から拝借した恋愛小説で知った。
自身のほっぺが少し赤くなっていることを知らずに、姫はそっと飲み口に唇を寄せる。
二人が先に着いたはずなのに、後からやってくる姫と雅代が到着しても、まだ飲み物を決めかねていない様子だ。
「う~~~~~~~ん」
「ヨシ、決めた!」
「お、お兄ちゃん、何にするのぉ~?」
「さっぱり分からないことは分かっタ!」
「……それ、決めたとは言えなくない?」
「ヒュー、姫のツッコミは今日もキレキレですなぁ~。しゅきィィ」
「お姉ちゃん、だぁーいすきぃ~」
ふざける亮とは違って、みおのは純粋な好意から来るものだ。
そんな二人からの突然の告白を受け止めた姫は戸惑いを隠せず、言葉に詰まってしまう。行き場を失くした視線が二人の間を彷徨い、やがて自販機のブラック缶コーヒーに止まる。
「……ええっと、ちょっといい?」
「どうぞどうぞ」
亮がみおのところへと後退し、道を開けた。彼女が何を選ぶのだろう、と二人の視線が姫の指先に集中。
「「おお~~」」
「すごぉーい。お姉ちゃん、大人だぁ~」
一瞬、缶コーヒーを運ぶ姫の手が一瞬ピタリと止まったが、すぐに再開した。
だけどその後、缶コーヒーを美味しそうに飲んだ彼女を見て何を思ったのか、亮が唐突に「私も飲んでみたい!」と主張した。
雅代はすぐさまに彼を睨んだが、その攻撃は無効だと分かっていても尚、攻撃の手を止まず、更に鋭くする。自分の従者がそんなことをしているとは知らずに、姫が少し逡巡してから缶コーヒーを差し出した。
「……じゃあ、飲んでみる?」
「なッ」
「おっ、いいですか? じゃあ、遠慮なく……」
「ちょッ」
雅代が止めようにも時は既に遅し。缶コーヒーが既に亮の手に渡ったのだ。
「いただきまース!」と缶をクイッと傾けている亮を見て、姫は思わず「あっ」と声を上げた。
「うん! にっがぁぁぁぁーーい!!」
そんな彼のリアクションにみおは腹を抱えるように笑い、雅代に至っては「当然でございます」と言い放つ。はいと共に、亮は姫に返しては再び自販機に向け直り、悩ましい声を上げ続ける。
「とうとうやってくれましたね、下郎」
「うん? 何の話?」
あからさまにとぼける亮を見て、雅代はムカついた。
みおの前で間接キスのことを持ち出すわけにもいかず、代わりに「この恨み、いつか晴らしてみせます」と宣言。
一方、肝心の姫はというと、彼女は無言で飲み口の部分を見下ろしている。正確には、飲み口の部分で少し溜まったコーヒーをだ。
「………」
自分が飲んだ時にはなかったのに、彼が返してくれた時にはそれがあった。いくら彼女が温室育ちとは言えど、これを飲んでしまえば間接キスになるということを以前、雅代から拝借した恋愛小説で知った。
自身のほっぺが少し赤くなっていることを知らずに、姫はそっと飲み口に唇を寄せる。