今日も未羽が話しかけてくることを除けば、誰とも会話をせず、家に帰る。家でも会話という会話はほとんどない。リビングのテーブルの上で、樋口一葉が渋い顔をして待っているだけだ。母は今日家に帰ってきたのだろう。そして、テーブルの上に樋口一葉を置き、またどこかに行ったのだ。もう何年も顔を合わせていないような気もするし、つい最近会ったような気がする。ただ、会わなくていいということに安心するだけだ。会わなければ傷つけられずに済む。そして自分のことも傷つけずに済む、それだけだ。
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