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家に帰れば母がいるということに慣れた頃、美音が主演を務めた映画が賞をとった。そのインタビューの時、美音が着ていた服は、白のノースリーブのロングドレスであった。
それまでも活動の幅が増えて、雑誌の表紙などを飾ってきたが、全て、腕が隠れるものであったため、私の目は無意識に釘付けになる。
「今回このような賞をいただけて、本当に嬉しいです。私には経験もポテンシャルも何もなく、ただあるのは、この傷だらけの体で。この体で何ができるんだって思って、自分の可能性を狭めていたんだということに、監督に、この役に、共演者の皆様に、気づかせていただきました。だから、私も気づかせてあげたいです。後一歩が踏み出せない方に。可能性は無限だよ、と。ありがとうございました」