高校1年生の時に誠の存在を知った。
 中学校の頃に学級委員を務めており、その名残から高校でも学級委員を務めることとなった。高校では毎月学級委員会が開かれ、そこに他クラスで学級委員を務めていた誠がいた。

 誠の印象はフットワークの軽い気遣い上手といった感じだ。何でも器用にこなし、周りがよく見えていて困っている人がいるとすぐに助けてくれる。私は彼とは真逆で、よく言えば真面目だが、悪く言えば頑固。不器用なのに多くの仕事をこなそうとしてパンク。それでいて頼り下手なのでいつも困っていた。

「柊さん、今日からよろしくね」

 高校2年生で私たちは同じクラスになり、当然のように2人とも学級委員になった。
 委員が決められてすぐに開催された委員会で、私たちは深く交流することとなった。2人で学級委員が集まる教室に行く最中に軽い挨拶を交わした。

「私の名前、よく覚えていたね」
「いやいや、流石に自分と一緒の委員の名前は覚えるよ。それに去年も一緒だったでしょ。逆に俺のことは覚えている?」
「……せい?」
「多分、下の名前の事言ってるんだろうけど違うね。まことだよ」
「ごめん。ちょうどその時、漢字テストで『誠実』が出てたから『せい』で覚えてた。でも、去年も同じ学級委員だったのは覚えているよ!」

 誤解を解くために慌ててフォローする。名前を覚えるのが苦手なだけで、生徒自体のことはよく知っているのだ。私の弁明に誠は驚くような素振りを見せると少しして破顔し、盛大に笑った。

「はははっ。柊さんって面白いね。じゃあ、改めて自己紹介しようか。俺は悠凪 誠。趣味はこれと言ってないけど、基本的に何でも手をつける。今はサバゲーにハマってる。取り上げていうことはないけど、クラスの友達からは明るくて馴染みやすい性格って言われるかな」
「それは何となく見れば分かる。私は柊 香恋。趣味は知らない所に行くこと。大学に入ったら海外旅行に行きたいと思ってる。クラスの友達には真面目って言われる」
「あー、柊さんも見れば分かる。真面目というよりは頑固だよね?」
「なにをー!」

 図星を突かれたため大きな声を出してしまう。誠は「ごめんごめん」と両手を合わせて謝罪した。彼の友達が言うように、誠は陽気で馴染みやすい生徒だった。私たちはそれからも2人で軽い雑談をしながら教室へと向かった。