痛つつつつ。
後頭部の痛みで目を覚ました。目の前には変わらない青空がある。どうやら、俺は気を失っていたようだ。海岸で気を失うなんて危険極まりないが、何とか俺は波に飲まれずに済んだとみえる。潮が満ちて来るまで気を失っていたら、確実に死ぬところだった。
上半身を起こしてタモ網の中を見ると、もうすっかりフナムシはいなくなっていた。それはそうだな。いつまでも俺に食われるために留まっている理由はない。
ってそうだ! 配信はどうなった! 慌ててスマホの画面を見る。……うん? 日付がおかしいぞ。フナムシを口に入れた時からちょうど24時間経っている。いや、おかしいのはそれだけじゃない。何故かスマホに充電中のマークがついてある。もちろん、モバイルバッテリーには繋いでない。一体、何が起きてる……。
動画配信プラットフォームのアプリを立ち上げると、俺の配信はまだ続いていた。しかし、今度はコメント欄もおかしい。
コメント:悲しいです。昨日からずっと泣いてます。
コメント:ルーメンさん、生きてて。お願い
コメント:何処の無人島かマジで情報ないの?
コメント:ルーメンさん、事務所入ってないからなぁ。
コメント:絶対生きてる! 諦めるな!!
コメント:でも、波にのまれて……
おいおい! 勝手に殺すなよ!! 俺は慌ててアクションカメラを自分の方に向け、視聴者に手を振る。
コメント:えっ!?!?
コメント:生きてたあぁぁぁぁぁー!!!!
コメント:ウオオオオオオー!! 生きてたァァァァ
コメント:マジ? 幽霊じゃない?
コメント:ルーメン、不死身かよwwwwwwww
コメント:あれ、声聞こえないよ。ルーメンさん
声が聞こえない? マジ? カメラのマイクが死んだかな? 慌てて配信元をスマホに切り替えるが、視聴者の反応は変わらない。どうやら映像しか配信出来ていないらしい。
まぁ、悩んでも仕方ない。気持ちを切り替えよう。一旦拠点に戻って水を飲みたい。
俺は痛む頭をさすりながら海岸から離れ、切立った崖の下に作った拠点を目指して歩き始めた。
……おかしいぞ。これは本格的におかしい。俺は元来、楽天家で細かいことは気にしないタイプだ。しかし、どう考えてもおかしい。
まず、拠点がない。行けども行けども見えて来ない。そもそも崖がないし、地形も全然違う。共通点は海があることだけで、ここが島かどうかすら怪しい……。
──サササササササッ。
俺の目の前を生物が通り過ぎた。それは見覚えのあるフォルムで、海辺にはよくいる節足動物、フナムシに見えた。しかし、サイズが違う。このフナムシ、二十センチ以上あるぞ……。それに、何やら目が赤く、ギラギラしている。ちょっと怖いな。カメラにその姿を映すと視聴者がざわつく。
コメント:……何このフナムシ。
コメント:デカくね?
コメント:これ、本当にフナムシ? やばくね?
コメント:こんなフナムシあり得ないだろ!
コメント:えっ、ルーメンさん、原始時代にいるの? 未来?
コメント:えっ、これ食べるの?
食わねーよ! しかし、一体全体、どういうことだ。俺の目がおかしいわけではない。視聴者が見てもこのフナムシはおかしいのだ。こんな生き物が地球上にいるわけがない。少なくとも現代の地球には。俺は、時空を超えてしまったのか?
「しかし、やばいな。水分を摂らないと」
照りつける陽射しがどんどん体力を奪う。もう拠点がないことは確定した。ここが何処かなのかを調べるよりも先に、早いところ飲み水を確保しないとまずい。空腹もそうだが、まず、何より水だ。どこかに河はないのか……。
スマホを見ると視聴者が心配している。俺は棒切れを拾って地面に「水さがす」とだけ書いて、一旦配信を切った。
後頭部の痛みで目を覚ました。目の前には変わらない青空がある。どうやら、俺は気を失っていたようだ。海岸で気を失うなんて危険極まりないが、何とか俺は波に飲まれずに済んだとみえる。潮が満ちて来るまで気を失っていたら、確実に死ぬところだった。
上半身を起こしてタモ網の中を見ると、もうすっかりフナムシはいなくなっていた。それはそうだな。いつまでも俺に食われるために留まっている理由はない。
ってそうだ! 配信はどうなった! 慌ててスマホの画面を見る。……うん? 日付がおかしいぞ。フナムシを口に入れた時からちょうど24時間経っている。いや、おかしいのはそれだけじゃない。何故かスマホに充電中のマークがついてある。もちろん、モバイルバッテリーには繋いでない。一体、何が起きてる……。
動画配信プラットフォームのアプリを立ち上げると、俺の配信はまだ続いていた。しかし、今度はコメント欄もおかしい。
コメント:悲しいです。昨日からずっと泣いてます。
コメント:ルーメンさん、生きてて。お願い
コメント:何処の無人島かマジで情報ないの?
コメント:ルーメンさん、事務所入ってないからなぁ。
コメント:絶対生きてる! 諦めるな!!
コメント:でも、波にのまれて……
おいおい! 勝手に殺すなよ!! 俺は慌ててアクションカメラを自分の方に向け、視聴者に手を振る。
コメント:えっ!?!?
コメント:生きてたあぁぁぁぁぁー!!!!
コメント:ウオオオオオオー!! 生きてたァァァァ
コメント:マジ? 幽霊じゃない?
コメント:ルーメン、不死身かよwwwwwwww
コメント:あれ、声聞こえないよ。ルーメンさん
声が聞こえない? マジ? カメラのマイクが死んだかな? 慌てて配信元をスマホに切り替えるが、視聴者の反応は変わらない。どうやら映像しか配信出来ていないらしい。
まぁ、悩んでも仕方ない。気持ちを切り替えよう。一旦拠点に戻って水を飲みたい。
俺は痛む頭をさすりながら海岸から離れ、切立った崖の下に作った拠点を目指して歩き始めた。
……おかしいぞ。これは本格的におかしい。俺は元来、楽天家で細かいことは気にしないタイプだ。しかし、どう考えてもおかしい。
まず、拠点がない。行けども行けども見えて来ない。そもそも崖がないし、地形も全然違う。共通点は海があることだけで、ここが島かどうかすら怪しい……。
──サササササササッ。
俺の目の前を生物が通り過ぎた。それは見覚えのあるフォルムで、海辺にはよくいる節足動物、フナムシに見えた。しかし、サイズが違う。このフナムシ、二十センチ以上あるぞ……。それに、何やら目が赤く、ギラギラしている。ちょっと怖いな。カメラにその姿を映すと視聴者がざわつく。
コメント:……何このフナムシ。
コメント:デカくね?
コメント:これ、本当にフナムシ? やばくね?
コメント:こんなフナムシあり得ないだろ!
コメント:えっ、ルーメンさん、原始時代にいるの? 未来?
コメント:えっ、これ食べるの?
食わねーよ! しかし、一体全体、どういうことだ。俺の目がおかしいわけではない。視聴者が見てもこのフナムシはおかしいのだ。こんな生き物が地球上にいるわけがない。少なくとも現代の地球には。俺は、時空を超えてしまったのか?
「しかし、やばいな。水分を摂らないと」
照りつける陽射しがどんどん体力を奪う。もう拠点がないことは確定した。ここが何処かなのかを調べるよりも先に、早いところ飲み水を確保しないとまずい。空腹もそうだが、まず、何より水だ。どこかに河はないのか……。
スマホを見ると視聴者が心配している。俺は棒切れを拾って地面に「水さがす」とだけ書いて、一旦配信を切った。