『鈴音結夏は裏切者』
次の日の朝、学級掲示板にその張り紙が貼ってあるのを見た私は、確かな喪失感と絶望感、そして、何よりも恐怖を感じた。
私はその張り紙を恐る恐る剥がし、黒板に目を向けた。
『渡辺遥をいじめたのは花夜柚月!みんなで柚月をいじめよう!あいつ、浮気してるサイテー女なのにイキってて草!』
私だけではなく、柚月もいじめの標的になってしまったのだ。
元はと言えば、柚月が余計なことを言うから私までいじめの標的になってしまったのだ。
許せない。
私はギュッと唇をかみしめて、逃げるようにトイレに向かった。
私がトイレから帰ってくると、たくさんの罵詈雑言が飛んできた。
「バカ」「ブス」「お前のせいでクラスの雰囲気が壊れた」「生きる価値ない」「身の程わきまえろ」「なんでお前なんかがクラスの女王と一緒にいるんだろ」「きえろ目障りだ」「ウザい」「死ね」。
たくさんの罵詈雑言が飛び交う中、私は席について鞄の中身を机に移そうとした。
…だけど、私の鞄の中には、ビリビリに破られた教科書と、濡れた筆箱(トイレの水だろう)と、消し跡が残る宿題があった。
…全部、予想してたことだ。
私はその日、そんな使えそうもない物たちを使い、周囲に笑われ、先生に「なんでこんな酷いことをするんですか」と私を叱りつけた。ボロボロの教科書を見て、勉強が嫌になって破ったと思ったのだろう。
いじめの可能性なんて、1ミリも考えずに。
先生は、自分が悪者になりたくないがため、いじめという可能性を見て見て見ぬふりするあまり、いじめに気が付かなくなったのだろう。
私は帰り道をとぼとぼ自転車を引きながら歩いていた。
はあ、本当に疲れた。
「あ、結夏じゃん!やっほ〜!」
隣から、明るい声が聞こえてきた。
…私が、今一番恨んでいる人。
「柚月…っ」
「どうした?そんな暗い顔して」
柚月は私の顔を覗き込んできた。
「…柚月こそ、なんでそんな平気そうな顔してるの?」
「え?なんでって…結夏、ちょっと待って。顔色、悪いよ。なんかあった?」
そう言って、私の肩を抱く。
「しっかりして。あ、そうだ!近くにエンゼルスマイルあるから寄ってこうか。なんか食べる?」
柚月は有名ハンバーガーチェーン店の名前を口にした。
「…なんで、私にそんなに構うの」
「え?」
柚月から、素っ頓狂な声が漏れた。
「なんで柚月は、私に構うの?」
私は語気を強めて言った。
柚月は少し考えて、優しく、でもキッパリと言った。
「だって結夏は、友達だから。」
…友、達…
私は、その言葉の意味を考えた。
私はこれまで、柚月のことを「友達」なんて考えたことがあっただろうか。
でも今、柚月は私のことを力強く「友達」と言い切った。
それは、嘘偽りもない純粋な友情だった。
…でも。
それじゃまるで、柚月が私のことを嘲笑っているみたいだ。
私をキッパリと「友達」と言った柚月と、柚月のことを「飛び道具」として利用した私と。
なんて汚い心、愚かな人だと嘲笑っているのだろう。
私は、柚月の手の中で、踊らされている…?
もしかして、いじめに巻き込んだのも、私をバカにしたかったから?
許せない!
「…私は、あんたなんかの友達じゃない」
「え?」
「あんたなんかね、私にとってはただの「飛び道具」なのよ!一度も友達なんて思ったことない!もう私に構わないで!」
私は一気に捲し立てると、思いっきりペダルを漕いで自転車を走らせた。
次の日の朝、学級掲示板にその張り紙が貼ってあるのを見た私は、確かな喪失感と絶望感、そして、何よりも恐怖を感じた。
私はその張り紙を恐る恐る剥がし、黒板に目を向けた。
『渡辺遥をいじめたのは花夜柚月!みんなで柚月をいじめよう!あいつ、浮気してるサイテー女なのにイキってて草!』
私だけではなく、柚月もいじめの標的になってしまったのだ。
元はと言えば、柚月が余計なことを言うから私までいじめの標的になってしまったのだ。
許せない。
私はギュッと唇をかみしめて、逃げるようにトイレに向かった。
私がトイレから帰ってくると、たくさんの罵詈雑言が飛んできた。
「バカ」「ブス」「お前のせいでクラスの雰囲気が壊れた」「生きる価値ない」「身の程わきまえろ」「なんでお前なんかがクラスの女王と一緒にいるんだろ」「きえろ目障りだ」「ウザい」「死ね」。
たくさんの罵詈雑言が飛び交う中、私は席について鞄の中身を机に移そうとした。
…だけど、私の鞄の中には、ビリビリに破られた教科書と、濡れた筆箱(トイレの水だろう)と、消し跡が残る宿題があった。
…全部、予想してたことだ。
私はその日、そんな使えそうもない物たちを使い、周囲に笑われ、先生に「なんでこんな酷いことをするんですか」と私を叱りつけた。ボロボロの教科書を見て、勉強が嫌になって破ったと思ったのだろう。
いじめの可能性なんて、1ミリも考えずに。
先生は、自分が悪者になりたくないがため、いじめという可能性を見て見て見ぬふりするあまり、いじめに気が付かなくなったのだろう。
私は帰り道をとぼとぼ自転車を引きながら歩いていた。
はあ、本当に疲れた。
「あ、結夏じゃん!やっほ〜!」
隣から、明るい声が聞こえてきた。
…私が、今一番恨んでいる人。
「柚月…っ」
「どうした?そんな暗い顔して」
柚月は私の顔を覗き込んできた。
「…柚月こそ、なんでそんな平気そうな顔してるの?」
「え?なんでって…結夏、ちょっと待って。顔色、悪いよ。なんかあった?」
そう言って、私の肩を抱く。
「しっかりして。あ、そうだ!近くにエンゼルスマイルあるから寄ってこうか。なんか食べる?」
柚月は有名ハンバーガーチェーン店の名前を口にした。
「…なんで、私にそんなに構うの」
「え?」
柚月から、素っ頓狂な声が漏れた。
「なんで柚月は、私に構うの?」
私は語気を強めて言った。
柚月は少し考えて、優しく、でもキッパリと言った。
「だって結夏は、友達だから。」
…友、達…
私は、その言葉の意味を考えた。
私はこれまで、柚月のことを「友達」なんて考えたことがあっただろうか。
でも今、柚月は私のことを力強く「友達」と言い切った。
それは、嘘偽りもない純粋な友情だった。
…でも。
それじゃまるで、柚月が私のことを嘲笑っているみたいだ。
私をキッパリと「友達」と言った柚月と、柚月のことを「飛び道具」として利用した私と。
なんて汚い心、愚かな人だと嘲笑っているのだろう。
私は、柚月の手の中で、踊らされている…?
もしかして、いじめに巻き込んだのも、私をバカにしたかったから?
許せない!
「…私は、あんたなんかの友達じゃない」
「え?」
「あんたなんかね、私にとってはただの「飛び道具」なのよ!一度も友達なんて思ったことない!もう私に構わないで!」
私は一気に捲し立てると、思いっきりペダルを漕いで自転車を走らせた。