彼について行ってたどり着いたのは、通っていた中学だった。
「なんで、ここにきたの?」
彼は少し考えて答えた。
「だって、君と兄が出会った場所なんでしょ?」
「え……?」
私の口からはそんな声が漏れた。
「気づいたんだ。君が失恋した相手が、僕の兄だってね。」
彼は言った。
「え?あんたが?」
「そう。夏目北斗、夏目祐樹の…双子の弟だ。」
確かに、北斗はゆーくんに少し似ている。
二卵性双子だろう。二人は全く違う雰囲気を纏っているけど、北斗にはゆーくんの面影が滲んでいた。
「少し、僕の話を聞いてもらえないかな?」
北斗はそう言って私の顔を覗き込んできた。
「別に、いいけど…」
「よかった。一つ言い忘れてたんだけどね、僕の死因は……病気なんだ」
私は息を呑んだ。
「僕たちの親は厳しくて、悪く言えば…虐待だった。だから、僕の病気が発覚しても、看病を親戚や兄に任せ、遊びまくってたんだ。最低な親だよ。」
北斗はまんざらでもなさそうな顔をして言う。
「だけど、そんな両親に愛想が尽きたのか、親戚たちは離れていった。そんな中、最期までそばにいてくれたのは兄だったんだ。そんな兄に、恩返しがしたかったんだ。でも、それもできずに、僕は死んでしまった」
私は悲しくなった。
ゆーくんが、そんな悲しい環境にいたなんて。
そして、そのことを知らない自分に腹が立った。
「だから、もう絶対に天国に行かないって決めた」
北斗は冷たく言った。
「どう、して…?」
「だって、逃げてるだけじゃないか。僕に天国に行ける資格なんてない。僕は祐樹が死ぬまで成仏しない。見守り続ける」
「そんなこと、ゆーくんは望んでないはずだよ」
私は自分のことを棚に上げて言い返した。
「僕は、自分が許せないんだ。ありがとうも言えずに死んでしまったことが。だからいいんだよ」
私はふと思い出して真っ白なワンピースのポケットを探った。
「…あった」
それは、一枚の紙切れだった。
私が幽霊になる前、夢を見た。
ゆーくんが、この紙切れを私に渡して言ったんだ。
『これを、弟に渡してほしい』
と。
その時は、何が何だかわからなかったけど、北斗のことだったんだ。
私は北斗に紙切れを差し出した。
北斗は訝しげに紙切れを受け取り、目を通した。
すると、驚いたように目を見開いた。
「……祐樹っ!」
そして、真珠のような涙が、北斗のほおを濡らした。
北斗は紙切れを落とし、紙切れは宙に舞った。
そこには、大好きな字で、丁寧にこう書かれていた。
『北斗へ
最期に北斗を看病できて、お兄ちゃんは幸せです。
ちゃんと天国に行かないとお兄ちゃんの看病した甲斐がないので安らかにお眠りください。
天国でガールフレンド作って幸せになってください。 祐樹より』
私まで、泣いてしまった。
そして、私は、震える北斗をギュッと抱きしめた。
「なんで、ここにきたの?」
彼は少し考えて答えた。
「だって、君と兄が出会った場所なんでしょ?」
「え……?」
私の口からはそんな声が漏れた。
「気づいたんだ。君が失恋した相手が、僕の兄だってね。」
彼は言った。
「え?あんたが?」
「そう。夏目北斗、夏目祐樹の…双子の弟だ。」
確かに、北斗はゆーくんに少し似ている。
二卵性双子だろう。二人は全く違う雰囲気を纏っているけど、北斗にはゆーくんの面影が滲んでいた。
「少し、僕の話を聞いてもらえないかな?」
北斗はそう言って私の顔を覗き込んできた。
「別に、いいけど…」
「よかった。一つ言い忘れてたんだけどね、僕の死因は……病気なんだ」
私は息を呑んだ。
「僕たちの親は厳しくて、悪く言えば…虐待だった。だから、僕の病気が発覚しても、看病を親戚や兄に任せ、遊びまくってたんだ。最低な親だよ。」
北斗はまんざらでもなさそうな顔をして言う。
「だけど、そんな両親に愛想が尽きたのか、親戚たちは離れていった。そんな中、最期までそばにいてくれたのは兄だったんだ。そんな兄に、恩返しがしたかったんだ。でも、それもできずに、僕は死んでしまった」
私は悲しくなった。
ゆーくんが、そんな悲しい環境にいたなんて。
そして、そのことを知らない自分に腹が立った。
「だから、もう絶対に天国に行かないって決めた」
北斗は冷たく言った。
「どう、して…?」
「だって、逃げてるだけじゃないか。僕に天国に行ける資格なんてない。僕は祐樹が死ぬまで成仏しない。見守り続ける」
「そんなこと、ゆーくんは望んでないはずだよ」
私は自分のことを棚に上げて言い返した。
「僕は、自分が許せないんだ。ありがとうも言えずに死んでしまったことが。だからいいんだよ」
私はふと思い出して真っ白なワンピースのポケットを探った。
「…あった」
それは、一枚の紙切れだった。
私が幽霊になる前、夢を見た。
ゆーくんが、この紙切れを私に渡して言ったんだ。
『これを、弟に渡してほしい』
と。
その時は、何が何だかわからなかったけど、北斗のことだったんだ。
私は北斗に紙切れを差し出した。
北斗は訝しげに紙切れを受け取り、目を通した。
すると、驚いたように目を見開いた。
「……祐樹っ!」
そして、真珠のような涙が、北斗のほおを濡らした。
北斗は紙切れを落とし、紙切れは宙に舞った。
そこには、大好きな字で、丁寧にこう書かれていた。
『北斗へ
最期に北斗を看病できて、お兄ちゃんは幸せです。
ちゃんと天国に行かないとお兄ちゃんの看病した甲斐がないので安らかにお眠りください。
天国でガールフレンド作って幸せになってください。 祐樹より』
私まで、泣いてしまった。
そして、私は、震える北斗をギュッと抱きしめた。