目が覚めると、私は真っ黒な服装の人たちを目にした。
 みんなティッシュやハンカチを目元や鼻に当て、悲しみが滲んでいた。
 それに比べて私は真っ白なワンピースを着て座っていた。
 ふと思い出したのは、ひいおばあちゃんが死んじゃった時のお葬式。
 私はやっと、さきほどのことを思い出した。
 私は二人を庇って、地面に転がって……
 その時、私は気づいた。

 私は、死んだ。

 つまり、これは葬式で、みんな私の死を悲しんでいるんだ。
 よく見たら、家族や友達、担任の先生など見知った顔が並んでいた。
 …うん?待って、何で私は今、意思があるんだろう?
 私は死んだはず…だよね?
 もしかして、これって幽霊ってやつ?
 へぇ、幽霊って本当にいるんだ。
 ところで、私はどこに座ってるの?
 みんなはこっちを見てる。ということは…
 足元を見る。白い箱だ。
 少しだけ中が見えていて、そこには自分と全く同じ顔があった。
 つまり私は、自分の亡骸が入った棺の上に座っている。
 なんて残酷な!
 ツッコミを入れつつ、ここにいたらもらい泣きしてしまいそうなので移動しようと棺から飛び降りた。
 そのまま足を一歩踏み出そうとした、その時。
 私の頭の中に、あるイメージ画が浮かんだ。
 …私、幽霊だから空も飛べるんじゃない?
 私は地面より一歩分ぐらい高い空中に足を踏み出した。
 すると、もう一つの足もつられたように空を飛ぶ。
 わあ、すごい!飛んでる!
 そこから先は、思うように前後左右、どんなふうにも飛べた。
 でも、同時に私はもう人間ではないんだという現実を突きつけられたような気分だ。
 …もう、ゆーくんにも会えない。
 私はそんな思いを振り払うべく、葬式会場を出た。