それは、真夏の炎天下の下、突然告げられた。
「俺、実は好きな女子がいるんだ」
 私は頭が真っ白になった。
 突然、掴めそうだった風に舞う桜の花びらが、遠いところに飛んでいってしまい、なす術がなくなったような。
 それまでしっかりと握っていたものが、ふとした隙になくなってしまったような。
「誰?」
 私は思わず言ってしまった。
「吉野、椿さん…」
 君は恥ずかしそうに言った。
「優しくて、可愛くて、上品な特別な女の子なんだ。」
 君の顔は、完全に恋をしている表情を浮かべていた。
「へぇ、そうなんだ」
 私はわざと冷たく言った。
 でも、次に君の口から溢れた言葉に、確かな絶望を感じた。
「だからね、もう僕に近づかないでほしい。」
 君は申し訳なさそうに、でもキッパリと私を振り払った。
 私の恋は、失恋に終わった。