「そんなのんびり構えてて、大丈夫ですか? 年下と分かれば、見境の無い人ですよ」



頬杖を付きながら、そう言った椿ちゃんは突然、何かを思い出したらしく、自身の鞄の中身を漁り始めた。

何が出てくるのだろう、と待ちながら水を口に含む。

少し待って、そこから取り出されたのは、1本の缶のカフェオレだった。



「さっきの講義で服部先輩と偶然、席が近くて、それだけでこんなの貰っちゃったんですけど。私、要らないので、先輩にあげます」

「え、いいよ。せっかくだし、椿ちゃん飲んだら?」

「私、ブラック派なので。いいから、貰ってください」



半ば強引に、手の中に缶を押し込めれる。

その缶を見つめ、考えてしまう。

服部くんが、後輩である椿ちゃんにあげた物。

これには、彼女にとっては、有り難迷惑だったとしても、彼の何かしらの厚意が込もっているかもしれない。

私が受け取るには、少し罪悪感が湧く。

缶を見つめて静止した私に、椿ちゃんは「先輩……」と何故かしら気まずそうに声を掛けてくる。



「きっと、みんなにこうやって配ってるんですよ!」



口調から、気遣ってくれているのが、よく伝わってきた。