然して、強くもない私の目力が、服部くんに通じてしまうなんて、思ってもいなかったから。

目が合う、それだけでこんなにも胸が高鳴って、顔が熱い。

彼のことは、駄目なら駄目だと割り切ろうと思っていたけど。

次の恋に進もうと思っていたけど。

こんな調子じゃ、どうやったって無理そうだ。

そりゃ、そうだ。

やっぱり私の心をこんなにも掻き乱すのは、服部くんだけ。

やっぱり好きだ。

「好き」なんて、こんな言葉、単純すぎて、歯痒くて、嫌になるけど。

それでも、苦しいくらいに、好き。

胸が、じわじわと疼く。



「清水……?」



不意に名前を呼ばれて、湧き出した恥ずかしさを堰き止められなくなる。

耐え切れず、目を逸らした。

しかし、服部くんはそんなどうしようもない私の姿を、見た後、缶の中身を一気に呑み干す。

そして、勢いよく缶を地面に打ち付けるように置いた。



「おい、直江」

「はい?」

「あんまり、清水をいじめるなよ」

「いじめてませんけど?」



今の服部くんにいつもの、みんなのお兄さんオーラは少しも感じられない。

ここまでおっかない彼を見たのは、初めてかもしれない。

せっかくのお花見が台無しになりそうな気がした。

これ以上、雰囲気が荒れてしまう前に、今度こそ食い止める。

2人の視線がぶつかる地点に、物理的に入り込む。



「だ、大丈夫……! いじめられてないし。そんなことで落ち込む程、私、弱くないです」

「しみ、ず……」



服部くんの声が突然、辿々しくなり違和感を感じたものの、構わず続ける。



「むしろ、勉強になった。ありがとうね、直江く――」