抱きしめた、よりぎゅっと。
 彼は私のことを。


「俺は君のことを食べたい、
 っていうこと」


 出ない、声が。
 驚き過ぎて。



 ツッコミたい、本当は。
 彼の言葉に。

 そう思っている。
 だけど。
 わからない、何を言えばいいのか。


 とはいっても。
 何を言うのか思いついたとしても。
 どのみち出ない、声が。


「俺は君とこうしていたい。
 だから今はご飯のことは全く考えられない」


 まぁ、確かに。
 そうだよね。
 本当に食べるわけではないよね。

 わかってはいたのだけど。



 それにしても。

 今の彼の言葉。
 なんだか恥ずかしいっ。
 ものすごくっ。


 恥ずかしい、十分。
 今の言葉だけでも。

 それなのに。
 彼はさらに言葉を続ける。


「だって、まだ君が足りていない。
 だから、もっともっと君のことを充電させて」


 甘い、今まで以上に。
 彼の声。





 火が出る、顔から。

 込み上げてきた。
 それくらいの恥ずかしさが。


 たぶん。
 ううん、絶対。
 真っ赤になっている、顔。



 彼が今の私の顔を見たら。
 言う、きっと。
「顔真っ赤」と。


 だから。
 見られたくない、絶対に。

 恥ずかしいから。



 そう思った。
 だから。
 抱きつく、ぎゅっと。
 彼の胸に潜り込むように。


「うん?
 なんか今日の君、積極的」


 焦っている。
 彼の言葉を聞いて。


 真っ赤になっている顔。
 見られてしまう、彼に。
 恥ずかしい、そのことが。
 それだからなのに。

 思われてしまった、積極的だと。


「そんなにも可愛いことされると
 我慢できなくなりそう」


 困った、ものすごく。

 離れてしまった、少しだけ。
 彼が私から。


 今、離れられると。
 見えてしまう、彼に。
 真っ赤になっている私の顔。

 それは。
 恥ずかしい、ものすごく。



 だから。
 彼から離れないように。
 ぎゅっと抱きつこうとする。


 だけど。
 敵わない、当然。
 彼の腕力()には。


「ほ~ら、ジタバタしない」