前を行く尋達の少し後ろを、俯き気味で歩いていた。目的地は、今通っている渡り廊下の先の角を曲がってすぐにある。生徒会室だ。
 窓から差し込む斜陽が眩しい。外を見下ろすと、数人の女子生徒がダンスを踊っているのが見えた。きっと文化祭の演目で、ステージ上で踊るんだろう。
 浮足立った雰囲気は学校中から感じられた。客寄せのための張り紙や、スプレー缶の独特な臭い、パフォーマンスで使用するポップな音楽など、いつもとは全く違っていた。
 私には縁のないことだった。これまで二回あった文化祭も、進学に響かないよう出席は一応するものの、喧騒から離れた美術室に引きこもって、絵を描いてばかりいた。普段滅多にやらないデッサンをした。目についたスケッチブックや石膏像を描いてみたり、他人が描いた絵を模写したりして時間を潰していた。出来はどれもひどいものだった。
 文化祭なんて、私にとってはくだらないイベントだった。
 けど千種は、そういうことを楽しもうとする子だった。小さな感動にも一喜一憂し、誰よりも笑う子だった。
 彼女の笑い声が聞こえない。
 その事実は、私を、私達を苦しめていた。千種がいれば、みんな笑っていたのに。今は一人も笑ってなどいなかった。
 話は少し前にまで遡る。