二年の文化祭は最悪だったと言ってもいい。なぜなら尋に、このメモを見られたからだ。
 終わったと思った。引かれるに決まっている。私のメモを見る彼の顔が、この先の私達の関係を物語っていた。
 でも、これでいいんだとも思った。もともと、死んだあの子を演じるために仲良くなったんだし、気味悪がられてしまえば後は時間の問題だ。この話はクラスに広まって、いじめられ、それに耐えきれなくなった私は自殺をする。完璧なシナリオだった。
 けど尋は、誰にも言いふらしたりしなかった。
 この際言ってしまおう。もうメモは見られちゃったんだから、何も隠すことなんてない。いつか、私が死んだあとでこれをもう一度見ることになった尋に、伝えておきたい。
 私はあなたのそばにいることが好きだった。
 これまでの話を読んで、とてもそうは思えないかもしれないけど、今の私は間違いなくそう思っている。
 尋の部屋でなんでもない話をするのが好きだった。私の愚痴をちゃんと聞いてくれるのが好きだった。肯定をするでも否定をするでもなく、受け止めてくれる姿勢が好きだった。君と一緒にいられる時間が、たまらなく好きだった。表には出さないようにしていたけど、でも私は確かに君に恋をしていた。
 私のことを意識しているかと訊いた時、君はしていると答えた。たとえそれが冗談だったとしても、嬉しかった。そうであってほしいと願った。
 けど、たぶん私は君に嫌われた。
 尋と一緒にホテルに行ったときのこと。あの日はどうかしていた。ただ、理由があった。私はその前日に、悠成にもう一度犯されていた。部長に告白した後にした以来、なるべく彼とは距離をおいていたから、話しかけられたこと自体久しぶりだった。あの時ほど精神が弱っていたわけじゃなかった私は、きっぱりと断った。でも聞いてもらえず、無理やりされた。逃げようと思ったけど、私はあまりに非力だった。好きな人がいるのに、こんなことをされているのが悔しかった。
 だから、ホテルに行った時、私達もしようって言ったのは、私の本心だった。あの男の感触を忘れたくて、あんなことを言った。でも君はそれを拒んだ。突き放されて、言ってしまったことを後悔した。結局その日は朝まで寝られなかった。
 その日から尋とは面と向かって話せなくなった。みんなといる時も、尋のことを変に意識しちゃって落ち着かなかった。
 どうしてあんなことを言ってしまったんだろう。こんなことになるなら、ホテルになんか行かなきゃよかった。