そしてもう一つ。中学一年の時だった。真面目だったクラスメイトが死んだ。自殺だった。原因はクラスメイトからのいじめと、父親からの性的虐待。
あの子が死んだ後で、彼女が父親から性的虐待を受けていることを知った。驚いた。いじめだけじゃなかったこともそうだし、何より、彼女の境遇が私と似ていると思ったから。
あの子が座っていた席を見ると色んなことを考えた。彼女が実の父親から虐待を受けるようになったのには、どんな理由があったんだろう。犯されている時、どんなことを感じていたんだろう。憎んでいたのかな。それとも私みたいに憐れんでいたのかな。そんなことばかり頭に浮かんできて、授業なんて耳に入らなかった。
あの子が死ぬ一週間前、私は彼女と図書室で話したことがあった。話しかけてきたのは彼女のほうからだった。それまでほとんど会話をしたことがなかったから、突然小説の話をされて対応に困った。
小説の話をする彼女は笑っていた。彼女の笑顔を見たのは久しぶりだった。本来はこんな子だったと話している時は思ったけど、今思えば、彼女は虐待を受けていながらも学校ではそんなことを感じさせないほど明るかったことになる。
――私は、無力だから。
あの子が言った言葉だった。彼女はいじめや虐待を限界まで堪えて、破裂してしまった。
私なら救えていたかもしれない。彼女は周りに期待していなかったけど、私なら救うことができた。少し行動すればいいだけだった。彼女がいじめだけじゃなく、性的虐待を受けていることを知っていれば、私はきっと誰かに助けを求めていたと思う。
でも私は何もしなかった。そんなこと、知らなかったから。なんであの時もう一歩踏み出せなかったんだと、何度も悔やんだ。けどいくら悔やんだところで何も変わらない。罪滅ぼしをするためには、私も彼女と同じ立場になるしかないと思った。
馬鹿なんだと思う。私の頭のネジは、お母さんが死んだ日から壊れてしまっていた。でも、それでよかった。お母さんが死んで目標を失っていた私に、新たな意味が与えられたような気がした。
それから私は、彼女を演じるようになった。
あの子が死んだ後で、彼女が父親から性的虐待を受けていることを知った。驚いた。いじめだけじゃなかったこともそうだし、何より、彼女の境遇が私と似ていると思ったから。
あの子が座っていた席を見ると色んなことを考えた。彼女が実の父親から虐待を受けるようになったのには、どんな理由があったんだろう。犯されている時、どんなことを感じていたんだろう。憎んでいたのかな。それとも私みたいに憐れんでいたのかな。そんなことばかり頭に浮かんできて、授業なんて耳に入らなかった。
あの子が死ぬ一週間前、私は彼女と図書室で話したことがあった。話しかけてきたのは彼女のほうからだった。それまでほとんど会話をしたことがなかったから、突然小説の話をされて対応に困った。
小説の話をする彼女は笑っていた。彼女の笑顔を見たのは久しぶりだった。本来はこんな子だったと話している時は思ったけど、今思えば、彼女は虐待を受けていながらも学校ではそんなことを感じさせないほど明るかったことになる。
――私は、無力だから。
あの子が言った言葉だった。彼女はいじめや虐待を限界まで堪えて、破裂してしまった。
私なら救えていたかもしれない。彼女は周りに期待していなかったけど、私なら救うことができた。少し行動すればいいだけだった。彼女がいじめだけじゃなく、性的虐待を受けていることを知っていれば、私はきっと誰かに助けを求めていたと思う。
でも私は何もしなかった。そんなこと、知らなかったから。なんであの時もう一歩踏み出せなかったんだと、何度も悔やんだ。けどいくら悔やんだところで何も変わらない。罪滅ぼしをするためには、私も彼女と同じ立場になるしかないと思った。
馬鹿なんだと思う。私の頭のネジは、お母さんが死んだ日から壊れてしまっていた。でも、それでよかった。お母さんが死んで目標を失っていた私に、新たな意味が与えられたような気がした。
それから私は、彼女を演じるようになった。