突き動かされたように目が覚めた。そこには見慣れた天井があった。汗でシーツがぐっしょりと濡れている。それが夏の暑さのせいではないことが、僕にはすぐにわかった。
 どうやら夢を見ていたらしかった。一度も使ったことがないはずの公衆電話を使って、一度も彼女に言われたことがないはずのこと言われた。そんな不可解な夢だ。おぞましくて仕方がない。冷や汗が溢れ出て止まらなかった。
 スマホで時間を確認する。窓の外はまだ明るく、それほど経っていないような気がしたが、すぐにそれは大きな間違いだと気付いた。日付は十三日になっていた。どうやら僕は、あろうことか二十四時間近く眠っていたらしかった。部屋に引きこもった生活をしているのに、いったいどこにまだそんな睡眠欲が残っているのだろうと、呆れるなんてものより不安で満たされる。
 九月十三日。文化祭の最終日だ。千種を殺した犯人を見つけ出す期限だが、もう今となってはどうだっていい。
 改めて夢のことを思い返す。いつもは起きたら忘れてしまっているというのに、今日はやけに色濃く焼き付いている。
 千種の顔。
 千種の声。
 千種の言葉。
 頭がズキズキと痛む。頭痛があるというか、もはや頭痛が痛い。抱えても治まらなくて、ベッドから起き上がった。

「痛……」

 立ち上がって背伸びをすると身体のあちこちが悲鳴を上げた。寝すぎていたせいですっかり鈍ってしまったようだ。頭の上からつま先まで、もれなく全身が痛くて仕方ない。
 ずっと部屋の窓を締め切っていたせいで空気も淀んでいた。熱気が籠もっていて気持ちが悪い。臭いも充満している。息が詰まりそうだった。
 だが何より、どうしても千種が頭から離れない。それが苦しくてたまらなかった。
 じっとしていられなくなって、僕はとうとう部屋を出た。