期待はしていなかったが、尋達の顔色を窺うに、やはり大した成果は上げられなかったようだった。

「やっぱ駄目だった。屋上へは完全に行けなくなってる」

 扉は修理されており、鍵がない限り開かないようになっている、と蓮は話した。当然といえば当然ではあった。それまでは学校側も大目に見ていたのだろうが、犠牲者が出てしまった以上は看過できなくなっていた。

「お前らは? 何かわかったか?」

「いいや、こっちも特には」

「そうか。もう、何度目だろうな」

 一週間で僕らがしてきたのは、人に尋ねることばかりだった。返ってくる言葉もおおよそ決まっている。「覚えていない」もしくは「知らない」、そのどちらかだ。

「……ずっと、足踏みしてる気分だ」

 このままでは平行線を辿る一方だ。今の僕らは、足掛かりになるものすらも見つけられず、崖の前に突っ立ってただ眺めているだけに過ぎない。焦燥を感じずにはいられなかった。
 それに、それだけではなかった。一度冷静になってこれまでのことを考え直してみた。そして一つの結論に辿り着いたのだ。僕らが目を背けていたから導き出せなかっただけで、それは至極単純なものだった。皆の思いを踏みにじるかもしれないが、けれど何よりも現実的だった。
 メールはただの悪戯だった。
 そう思い込んでしまえば、きっと楽になれる。これ以上時間を浪費することもなくなる。千種のことを偲ぶなら、これからのことについて考えるべきだ。その方が、残された僕らのためにもなる。
 だけど皆には言えなかった。歩調を乱してはいけないということも理解していたからだ。そんなことを言ってしまえば、溝が深まるのは目に見えていた。
 だから僕は、椅子を引いて席を立った。

「ごめん、ちょっと生徒会の用事思い出した」

 そう言って三人を残し、僕は教室を後にした。