千種が死ぬ前と後で、尋には決定的に変わったところがある。

 ――目だ。

 彼のその双眸は、獲物を虎視眈々と狙う猛獣のようにも見えたし、助けを乞う草食動物のようにも見えた。あまりの迫力に、思わず後退りしたくなりそうになる。実際、一週間前に久しぶりに会った時、僕は変に緊張してしまって、口以外まったく動かせなかった。
 以前はあんな目つきなんてしていなかった。千種が彼を変えてしまったんだ。決定的に、どこまでも深く、後戻りしようなんて気を起こさせないほどに。
 他の二人がこの僅かな変化に気が付いているかどうかはわからないが、ただ僕には、あの目が恐ろしくてたまらなかった。