17歳の真人の日記

「ようこそ」
できないと思った人類たちよ。
できないと思えばできないのだ。
あまりにも野放しになった君たちの創造は、産んだのだ。
蔓が生い茂り人間は生存できない。
反対に、蔓を狩りすぎても人類は生存はできない。
シンプルな世の中だ。
君たちは、このままではいけないと思ったのだ。
子どもたちにただ言うばっかりで自分では何もしない。
反面教師は、いよいよ悪魔になったのだ。
できない人類のオンパレードは悪魔のパラダイスなのだ。
バク転をするように本来はできるにも関わらず、バク転に挑戦しなかった悪魔よ。
どうなっていくか、こころをなくして語っていく。ロボットのように語っていく。
味気のない灰色の世界を語っていく。

真人と真偽は、クラスの同窓会で会うことになった。
誰が言ったか知らないが、ソフトボールをやりながら同窓会をしていた。
そんな馬鹿げたことを37歳でやることになった。
たまたま、日本に帰国する日時と重なったので私は参加することにした。
父ちゃんソフトが始まった。
やっぱり、攻撃の打席が回ってこないときは退屈だ。
真偽が冗談で「バク転できるのか?」と冷やかしてきた。
疎遠になっていた私に少なからずの恨みや妬みがあったのだろう。
もう、心を読む能力は失っていた。
講義をしても、永遠に次から次に疑問が浮かび「できると思えばできる」が証明できなかったのだ。
そんな思い詰めた自分を見て真偽は「まさとバク転してくれよ」ともう一度いう。
「楽勝、楽勝」
着地する後ろを確認。
「1,2の3」で後ろを見て、手をつこうとした。
けど、ソフトボールがあった。
ぼくはソフトボールに手をついてしまった。
そのまま、手は滑り首から地面に落ちた。
「真人、大丈夫か」友達の真偽が寄りそい心配してくれた。
ぼくは、仰向けになって彼の顔を見上げていた。
幸い肉体的には何事もなかった。
ただ、いままでに感じたことのない喪失感があった。
裏切りは確信に変わり、恐怖になっていた。
この同窓会に集まる全員が、あのときの反面教師であり、さらには悪魔にみえた。
息が上がって正常ではいられなくなった。私は、トイレで手を洗い落ち着かせようとした。
目の前に鏡があり自分をみると、そこには血相を変えた悪魔が映っていた。
もう一度見直すと、自分だった。
自分に言い聞かせる。大丈夫だ。大丈夫だ。
できると思ったらできる。
しかし、一度見てしまったものが、頭から離れない。
頭が混乱している。
いまなら、反面教師の気持ちがわかる。
生徒に言わなければ、自我を保てないのだ。
自分が生きるには、そうやって人に当たるしかないのだ。
わたしのなかにある記憶の棚は、空中分解した。
すぐに、修復がひつようだ。
トンカチを持って粉々になった木々に新しい木材の角材を使う。
しかし、角材ではすぐに折れてしまう。
私は、棚を作る力がもうないことを悟った。
崩壊が始まれば、早いものだ。
自分は無価値で虫けら以下の存在だ。
いや虫けらに失礼だ。
細胞にも、失礼だ。
空気にも失礼だ。
生きとし生けるすべてに失礼だ。
恥だ。恥の存在こそ人類だ。
煩悩具足の凡夫だ。
なにが期待感だ。
なにが天才だ。
そんなものありっこない。
空の空、全ては空なのだ。
脳裏がとろけたようなあまったるい砂糖の味がする。
自然と大地共に、そんな甘ったるいものがあるだろうか。
自然は奇しくも、残酷で無慈悲だ。枯れていく生き物に容赦はない。
アスファルを塞いで未来都市だと、理想を見やがった自分をいますぐ殺したい。
そんなものは溝に捨ててしまう幻想だ。
おれには何もできない。
できてたところで何だっていうんだ。
缶詰に詰められたみかんに申し訳ない。
いますぐにみかんに謝れ。
おれの存在は、化学肥料につけられ生きようとしている色鮮やかなみかん以下だ。
みかんよ。すまない。
鉄ニモマケズ。酸化セズ。
一粒のみかんのかけらは、何て美しいのだろう。
それにくらべて、鏡に映る自分はなんてぶざまだろう。
ぶっ壊れた。わたしは完全にぶっ壊れた。
ああ、悲鳴が聞こえる。
ああ、悲鳴が聞こえる。
悲鳴すら、感じたくない。
だれにも、気づいてほしくない自分の愚かな信念の存在に。
よしてくれ、太陽など浴びたくないのだ。
月すらもいらないのだ。
真っ暗でいい。真っ暗でいいのだ。
真っ暗こそ、全てだ。
缶詰からみかんをぬいて、化学製品の水すらとり空気も取れり、存在しない全てになるのだ。
数百年は、循環しない無になるのだ。
崩壊も、循環も無い。
ただ、無い世界にいくのだ。
何もできないなにもない世界に行くのだ。
そうだ。それこそがユートピアだ。


バク転で、完全に壊れた。
気がついたら、同窓会は終わっていた。