そこから夏休みを挟み彼とは特に何もなかった。

何をしてるんだろうと思う時もあったが、突然LINEで聞くような関係性でもないような気がするし……と

気がつけば2ヶ月もあったはずの夏休みがほとんどバイトで消え去っていた。
高校時代に合唱した「時の旅人」とはこうゆうことだったのか(違う)

夏休み明け最初のゼミ課題が4人グループ対抗のディベート対決だった。

またしてもここでK君と同じグループになった。

テンションは上がり、やる気は最骨頂。

ディベート王に私はなる!くらいの勢いがそこにはあった。

テーマは「安楽死の是非」

私たちはディベートに勝つため週2、3回zoomで集まり会議を重ねた。

私も時間のある限り図書館に足を運び参考になる本を読み漁った。

途中で恋愛必勝法と書かれた本を手に取ってしまうこともあったが、基本真面目にディベートの準備を進めた。

2週間してディベート対決の当日がやってきた。

今までの大学生活史上1番頑張ったのではないかと思う。

そんな意気込みで挑んだ対決、私は自分のターンで頭が真っ白になった。

すると、それを察したK君が私たちの用意した資料の一文を指で指してきた。

落ち着け私。ありがとうと言う気持ちで彼の方を見ると、彼は笑顔で「ファイト」と口パクで言ってくれた。

何のために私はここまで頑張ってきたんだ!

喝を入れ、自分たちの意見を相手にぶつける。

結果は惜しくも勝てなかった。

「はぁ」とため息をつき、同時に全身を脱力感が纏った。

「せっかくだしさ、この後みんなで打ち上げしない?」
K君が今日ディベート対決した両チーム合わせて8人に声をかけた。

机にうつ伏せになる私は彼からの言葉で顔を上げた。

気分が落ち込めど彼からの誘いを断れる私でもなかった。

集合時間まで時間があるから一度家に帰り、しっかりメイクを直す。

死んだ顔で彼の前に現れるわけにもいかないし、切り替えよう。

両手で頬をパチパチと軽く叩き、鏡に写る私を鼓舞する。

19時、私の大学では定番とされる居酒屋で打ち上げが行われた。

『おつかれ〜〜』
ガシャンガシャンと不規則にグラスの音が鳴る。

みなが思い思いに今日の感想を語る。

「もっとあーすればよかった」とか「〇〇が良かった〜」とか。

ちなみに私はお酒が飲めないため、ソフトドリンク全制覇挑戦女になっている。

理性が元気すぎていっそのことK君がベロベロになって看病させてくれないかなとか考えながら周りに話を合わせている。

時間が過ぎるにつれ実家勢がひと足先に、そろそろ帰るわーと帰って行く。

気がつけばK君を含む男女2人ずつの4人になっていた。

すると、もう1人の男子がK君にいう。

「あれ、Kって実家じゃなかったっけ?」

そうなんだ〜〜と思いながらグラスを口元までゆっくり近づける。

「実家、実家」

「帰らなくて大丈夫?」

「あーうん。彼女が一人暮らししてるから今日はそこに泊まろうと思って」

私はテーブルに置こうとしたグラスをもう一度口元に持っていった。

ソフトドリンクを飲んでいたはずのにビールのような味がした。

「彼女の家を宿代わりにするなよー」「違うって〜、せっかくだしみんなといろいろ話したかったからさ〜〜」とか言いながら男同士で戯れあっている姿を平然とした感じで見つめ、そこからだんだんと記憶がなくなり気がつけば翌日、自宅で1人着ていた服のまま目覚めた。