◇◇◇
ズキズキと痛みが増していく頭をなんとか抑えようと机に突っ伏す。机の冷たさで少しだけマシになる。
あー、いてえ。
もう今日はノートを取るのは諦めた。普段もただ書いてるだけで特に役に立ってもいないから1日くらいいいだろう。
そんなことを考えているとカサッと音がした。
ちらっと机の上を見ると折り畳まれたメモがあった。明らかな不審物を開くと小さい字で『どうかした?』と書かれていた。この字に見覚えがあって驚いた。
そっと隣を伺うと本人は何事もなかったかのように授業を聞いている。
わざわざ聞いて来るくらいだから何かあるのかと思ったけど単なる気まぐれっぽい。
だから特に何もしないでそのまま目を閉じた。
「ーーーー」
何かが聞こえた気がした。
「ーーねえ、蒼井」
急にクリアに聞こえた声にガバッと体を起こす。
「ーーびっ、くりした。ねえ、今日どうしたの?」
驚いたように目を丸くした木野が俺の前にいた。
「は?えっ?なにが?」
「いや、今日様子おかしすぎるでしょ。ていうか、さっきの授業もだけど今日全然ノート取ってないじゃん。いつもは態度悪くてもノートくらい取るでしょ?」
木野の言い分に苦笑する。
「……そんなこと言うなら、お前もいつもと違うだろ。普段は俺のことなんか眼中にない感じなのにやたら気にかけてくれんじゃん」
頭痛の原因は心当たりがある。ただ、だからこそ、こいつには言えない。言いたくない。
俺の言葉に不意をつかれたような顔をした木野は「たしかに、どうしてだろ……」と首を捻っていた。しばらくそのまま首を傾げて固まっていたがわからないものはわからないと諦めたみたいだ。
「とりあえず、ノート見るなら貸すけど」
そう言って差し出されたノートを大人しく受け取る。
「サンキュー。助かるわ」
それからも頭痛は治らず休み時間になるたびに来る直樹をのらりくらりとかわしながら、なんとか放課後になった。
木野は伺うように視線をよこすけど特に何もしてこなかった。そういえば昨日記憶のこと話したからそれで何か気になってるのかもな。
「悠ー!帰ろうぜー!」
「はあーー」
「ちょっため息って酷くね?!」
「うるさい。お前彼女は良いのかよ」
「そうそれ!聞いてくれよ。桜と帰ろうと思ってたら今日は友情優先だって!俺かわいそうだろ?」
直樹のうるさい声が頭に響く。
「うるさい。帰るぞ」
重い体を起こして荷物を肩にかける。その勢いのまま歩き出す。
昇降口を出たところで直樹が口を出す。
「おいっ本当に大丈夫か?」
心配そうな声はさっきまでただうるさかったやつとは思えない。
「うるさい、大丈夫だ」
こいつは俺の記憶のことを知ってる。だからこその反応なんだろう。それでも鬱陶しいものは鬱陶しい。
「……まあ、そこまで言うならいいけど」
直樹は俺の態度にしぶしぶ納得した。
「でも、そこまで体調崩すってことは、木野とルーム長やることになったことと関係あるんだろ?」
木野の名前に反応したように痛みが増す。
「さあな、とりあえずまだ何もわかんねえ」
正直なところ俺もかなり困惑している。こんな痛み方も初めてだ。
「仕方ねぇな。まぁ、何かわかったら教えろよ?」
ニッと笑った直樹は直樹なりに心配してくれているんだろう。
「ああ、わかったよ」
さすが幼馴染ってとこなんだろうな。じゃなきゃこんな俺と仲良くなろうなんて思わないだろう。本当に嫌になるほどいいやつ。
直樹とは家の前で別れて帰宅する。
「おかえり」
と声をかけてくる母さんへの対応もそこそこに部屋に入る。
カバンの中から木野から預かったノートを取り出す。
それから、引き出しを開けた。
確認したいことがあったからだ。
ほぼ確信していた。それでも、目の前の景色が信じられなかった。
現実から目を逸らすように窓の方に目を向ける。
オレンジ色に染まった世界が怖いくらいに不気味だった。
ズキズキと痛みが増していく頭をなんとか抑えようと机に突っ伏す。机の冷たさで少しだけマシになる。
あー、いてえ。
もう今日はノートを取るのは諦めた。普段もただ書いてるだけで特に役に立ってもいないから1日くらいいいだろう。
そんなことを考えているとカサッと音がした。
ちらっと机の上を見ると折り畳まれたメモがあった。明らかな不審物を開くと小さい字で『どうかした?』と書かれていた。この字に見覚えがあって驚いた。
そっと隣を伺うと本人は何事もなかったかのように授業を聞いている。
わざわざ聞いて来るくらいだから何かあるのかと思ったけど単なる気まぐれっぽい。
だから特に何もしないでそのまま目を閉じた。
「ーーーー」
何かが聞こえた気がした。
「ーーねえ、蒼井」
急にクリアに聞こえた声にガバッと体を起こす。
「ーーびっ、くりした。ねえ、今日どうしたの?」
驚いたように目を丸くした木野が俺の前にいた。
「は?えっ?なにが?」
「いや、今日様子おかしすぎるでしょ。ていうか、さっきの授業もだけど今日全然ノート取ってないじゃん。いつもは態度悪くてもノートくらい取るでしょ?」
木野の言い分に苦笑する。
「……そんなこと言うなら、お前もいつもと違うだろ。普段は俺のことなんか眼中にない感じなのにやたら気にかけてくれんじゃん」
頭痛の原因は心当たりがある。ただ、だからこそ、こいつには言えない。言いたくない。
俺の言葉に不意をつかれたような顔をした木野は「たしかに、どうしてだろ……」と首を捻っていた。しばらくそのまま首を傾げて固まっていたがわからないものはわからないと諦めたみたいだ。
「とりあえず、ノート見るなら貸すけど」
そう言って差し出されたノートを大人しく受け取る。
「サンキュー。助かるわ」
それからも頭痛は治らず休み時間になるたびに来る直樹をのらりくらりとかわしながら、なんとか放課後になった。
木野は伺うように視線をよこすけど特に何もしてこなかった。そういえば昨日記憶のこと話したからそれで何か気になってるのかもな。
「悠ー!帰ろうぜー!」
「はあーー」
「ちょっため息って酷くね?!」
「うるさい。お前彼女は良いのかよ」
「そうそれ!聞いてくれよ。桜と帰ろうと思ってたら今日は友情優先だって!俺かわいそうだろ?」
直樹のうるさい声が頭に響く。
「うるさい。帰るぞ」
重い体を起こして荷物を肩にかける。その勢いのまま歩き出す。
昇降口を出たところで直樹が口を出す。
「おいっ本当に大丈夫か?」
心配そうな声はさっきまでただうるさかったやつとは思えない。
「うるさい、大丈夫だ」
こいつは俺の記憶のことを知ってる。だからこその反応なんだろう。それでも鬱陶しいものは鬱陶しい。
「……まあ、そこまで言うならいいけど」
直樹は俺の態度にしぶしぶ納得した。
「でも、そこまで体調崩すってことは、木野とルーム長やることになったことと関係あるんだろ?」
木野の名前に反応したように痛みが増す。
「さあな、とりあえずまだ何もわかんねえ」
正直なところ俺もかなり困惑している。こんな痛み方も初めてだ。
「仕方ねぇな。まぁ、何かわかったら教えろよ?」
ニッと笑った直樹は直樹なりに心配してくれているんだろう。
「ああ、わかったよ」
さすが幼馴染ってとこなんだろうな。じゃなきゃこんな俺と仲良くなろうなんて思わないだろう。本当に嫌になるほどいいやつ。
直樹とは家の前で別れて帰宅する。
「おかえり」
と声をかけてくる母さんへの対応もそこそこに部屋に入る。
カバンの中から木野から預かったノートを取り出す。
それから、引き出しを開けた。
確認したいことがあったからだ。
ほぼ確信していた。それでも、目の前の景色が信じられなかった。
現実から目を逸らすように窓の方に目を向ける。
オレンジ色に染まった世界が怖いくらいに不気味だった。

