もしもこの想いが赦されるなら君に伝えたいことがあるんだ

 過去。
 記憶。
 思い出。
 そんなものがあるから苦しくなる。
 そんなものがあるからつらくなる。
 だったら最初からなにもいらない。
 過去も記憶も思い出も全部忘れてしまえばいい。
 あの日、意識が白くなりながら、私はどこにいるのかも知らない神様に、あるいは別の何者かに。
 奇跡を信じて、そう願ったーー。

 忘れることに後悔なんてあるはずがなかった。
 それなのに、どうしてーー?
「ねぇ……忘れたくないよ。君のこと、明日も覚えていたい」
 ところどころ字が滲んでいるのはどうしてなんだろう。
 どうして、こんなに涙があふれてくるんだろう?
 ーー君は……誰なの?