その日から、百合絵と別れ。

 私は一人になった。

 私はアルバイトをして、夏休みのスケジュールをうめた。

 もう、がむしゃらに働いた。
 
 秋も冬も、学校帰えりにアルバイト。
 
 稼いだお金は、欲しかったものをどんどん買った。

 心に開いた穴を埋めるように。

 ただただ、働いた。



 そして、クリスマスイブの日。
 彼女は私の自宅前にいた。

「ヒナタ」
 
 百合絵は私に気づくと、こちらにやって来た。

「何?」
 
 自分でも呆れるくらい冷たい声だ。
 百合絵の目から涙がこぼれ落ち、冷え切った地面を濡らす。

「直人と別れた」
 その言葉に、心の中で、歓喜(かんき)してしまう自分の(みにく)さに苦笑(くしょう)した。

「そっか……」

「ヒナタと一緒にいたい」

 彼女は涙を流しながら、言った。

「わかった。おいで」

 私の家に百合絵を(さそ)った。

「ごめんね、ヒナタ」

「いいよ……」

 私の心は醜い。

 彼女が直人と別れて、嬉しい気持ちが()き出ていた。
 
 私は百合絵をぎゅっと抱きしめた。

 私達はクリスマスを祝った。
 食べたショートケーキが、おいしくて、おいしくて、しょうがなかった。
 やっぱり百合絵がいないと楽しくない。

「ねぇ、百合絵」
「なあに?」
 彼女は目を丸くさせ、首をかしげる。
 その愛らしい仕草に思わずキュンとする。

「何でもない」
「そっか」