「きみせんせー! さよーなら!」



「はい、さようなら。みんな車には気をつけて帰るのよ!」



 教壇に立ちながら一人一人の顔を見ながら、挨拶をする。夢や希望を抱いている様子の子どもたち。自分にもこんな時期があったのだと思うと随分と昔のように感じてしまう。



 運がいいのか、私は自分が育った小学校の隣の小学校の一年生の担任をしている。実家からも近いので、いつでも顔を出すことができるので、とても都合がいい。ゆくゆくは自分が生まれ育った小学校の担任になってみたい。



 今の小学校の教師になって二年目の春を迎えた。去年は、初任ということもあり、四年生の担任をしていたが、今年は一年生の担任になってしまった。



 二年目でわからないことはだいぶ減ったが、それでも一年生はまだまだ不安が多い。



 何しろ、この前まで幼稚園や保育園だった子たちに一から教えないといけない。小学校とはなんなのか、してはいいこととダメなこともここからはっきりさせていく必要がある。



 まだ小さいので優しくするが、時として厳しく接しないといけない時だってある。それが難しいのだが...



 誰もいなくなった教室で、私は二枚の写真を取り出す。一枚は高校を卒業した時に三人で校門の前で撮った集合写真。手には卒業証書を抱えて、涙ぐんだ様子の三人が写し出されている。



 そして、もう一枚は最近一人暮らしをするために実家の掃除をしていた時に見つけた、高校の入学式の時に四人で撮った集合写真。あどけなさを含んだ幼い私たちがそこには写っていた。



 私の大好きな彼もぶかぶかの制服に身を包んで、緊張した顔で写っている。



 二枚を見比べて見ると、三人とも身長や顔つきが大人に近いものになっていて、途端に懐かしさが込み上げる。