……嘘だろ?
彼女の後ろをついて、連れてこられたのは遊園地。カチューシャをつけて、世界観に入り込めるタイプのテーマパークだ。
「最後に来たかったんだよね」
寂しそうな目は、相変わらずだ。
「きっと卒業したあとも来れますよ」
「そうだね。そうだよね」
財布を見て不安になりながら、チケット売り場へ向かうと、彼女はもう中に入っていた。
柱の隙間からひらひらと手を振る彼女は、最高に可愛かった。
「今日は制服デートですか?」
僕の格好を見て、スタッフのお姉さんが微笑んで問いかけてきた。
「はい、まぁ」
すこし、かっこつけた。そうなればいいのに、という希望で、嘘をついた。
「素敵ですね。楽しんできてください」
そう送り出されてやっと彼女の隣に追いついた。
「いつの間に入ったんですか」
「んー?隣で並んでたら、入ってた」
そんなことあるか?と思いながらも、楽しそうな彼女の顔を見たらそんなことはどうでも良くなった。
「パレードが見たかったんだ。制服で」
そう言われて彼女の服装をしっかりと見ると、まだ暑いのにブレザーをしっかり羽織っている冬服を身にまとっていた。
「暑くないんですか?それ」
「私、冬服とは別れられない運命だから。暑くないから気にしないで」
なんて、よく分からないことを口にして、楽しそうに目を輝かせていた。
まるで父親にでもなったかのような気分で彼女の後ろをついて行くと、アトラクションに乗る気配はさらさらなく、綺麗な景色が見られるような場所ばかり選んで、うっとりとそこから見える小さい世界を眺めていた。
「絶叫系苦手なんですか?」
気になって尋ねてみると、ゆっくり首を振った。
「好きだよ。でも今日の目的はアトラクションじゃないから」
どうやら、一度決めたら揺るがないタイプらしい。次もその次も、そのまた次も、絶景スポットを駆け回っていた。
たまに、羨ましそうにアトラクションを眺める列を眺めながら。
それでも楽しいことには変わりないみたいで、たたん、たたんと、初めて楽しそうな彼女の足音を聞いたような気がした。
「優澄先輩、そろそろパレードの時間ですよ」
すっかり暗くなった、九月の十九時。
つい最近までこの時間は昼間と変わらないくらい明るかったから、なんだか不思議な感じ。
「え、もう?」
「はい。もうです」
「じゃあ行かないとだ」
場所取りをしているわけじゃないから、人混みの隙間から見るような形にはなったけど、キャラクターが手を振っているのを見て嬉しそうに、でも切なそうに笑っていた。
「また、来ましょうね」
一通りパレードを見終えて、帰ることになったとき、思わず未来の約束を持ちかけた。
「……考えとくね」
彼女はそう、笑った。
今まで見てきた中で一番辛そうな顔をして、口角だけを上げて笑った。
「あの、連絡先教えてください」
すっかり忘れていた今日のミッションを、帰りの電車を待っているホームで思い出した。
「……ごめん!私スマホ持ってないんだよね」
「そう、なんですね」
必死で振り絞った勇気は、簡単に打ち砕かれてしまった。
「 」
ゴーっと音を立てながら、目の前を電車が通った。
髪が風に乗ってなびいて、肌に触れて少し痒かった。
彼女の口が小さく動いた。でも、聞き取れなかった。
なにか、大事なことを聞き逃してしまったような、そんな気がした。
彼女の後ろをついて、連れてこられたのは遊園地。カチューシャをつけて、世界観に入り込めるタイプのテーマパークだ。
「最後に来たかったんだよね」
寂しそうな目は、相変わらずだ。
「きっと卒業したあとも来れますよ」
「そうだね。そうだよね」
財布を見て不安になりながら、チケット売り場へ向かうと、彼女はもう中に入っていた。
柱の隙間からひらひらと手を振る彼女は、最高に可愛かった。
「今日は制服デートですか?」
僕の格好を見て、スタッフのお姉さんが微笑んで問いかけてきた。
「はい、まぁ」
すこし、かっこつけた。そうなればいいのに、という希望で、嘘をついた。
「素敵ですね。楽しんできてください」
そう送り出されてやっと彼女の隣に追いついた。
「いつの間に入ったんですか」
「んー?隣で並んでたら、入ってた」
そんなことあるか?と思いながらも、楽しそうな彼女の顔を見たらそんなことはどうでも良くなった。
「パレードが見たかったんだ。制服で」
そう言われて彼女の服装をしっかりと見ると、まだ暑いのにブレザーをしっかり羽織っている冬服を身にまとっていた。
「暑くないんですか?それ」
「私、冬服とは別れられない運命だから。暑くないから気にしないで」
なんて、よく分からないことを口にして、楽しそうに目を輝かせていた。
まるで父親にでもなったかのような気分で彼女の後ろをついて行くと、アトラクションに乗る気配はさらさらなく、綺麗な景色が見られるような場所ばかり選んで、うっとりとそこから見える小さい世界を眺めていた。
「絶叫系苦手なんですか?」
気になって尋ねてみると、ゆっくり首を振った。
「好きだよ。でも今日の目的はアトラクションじゃないから」
どうやら、一度決めたら揺るがないタイプらしい。次もその次も、そのまた次も、絶景スポットを駆け回っていた。
たまに、羨ましそうにアトラクションを眺める列を眺めながら。
それでも楽しいことには変わりないみたいで、たたん、たたんと、初めて楽しそうな彼女の足音を聞いたような気がした。
「優澄先輩、そろそろパレードの時間ですよ」
すっかり暗くなった、九月の十九時。
つい最近までこの時間は昼間と変わらないくらい明るかったから、なんだか不思議な感じ。
「え、もう?」
「はい。もうです」
「じゃあ行かないとだ」
場所取りをしているわけじゃないから、人混みの隙間から見るような形にはなったけど、キャラクターが手を振っているのを見て嬉しそうに、でも切なそうに笑っていた。
「また、来ましょうね」
一通りパレードを見終えて、帰ることになったとき、思わず未来の約束を持ちかけた。
「……考えとくね」
彼女はそう、笑った。
今まで見てきた中で一番辛そうな顔をして、口角だけを上げて笑った。
「あの、連絡先教えてください」
すっかり忘れていた今日のミッションを、帰りの電車を待っているホームで思い出した。
「……ごめん!私スマホ持ってないんだよね」
「そう、なんですね」
必死で振り絞った勇気は、簡単に打ち砕かれてしまった。
「 」
ゴーっと音を立てながら、目の前を電車が通った。
髪が風に乗ってなびいて、肌に触れて少し痒かった。
彼女の口が小さく動いた。でも、聞き取れなかった。
なにか、大事なことを聞き逃してしまったような、そんな気がした。