「ねぇ、なんか喧嘩してない?」
ガムテープなどを取りに行き、教室に戻っている時、黒川さんがそう言った。赤坂さんも耳を澄まして教室のほうを見る。
「なんか言い合ってるね。どうしたんだろう?」
心配になりながら、教室のドアを開けた途端、
「だから、あんたたちが多数決に反対すればよかったでしょ!」
「そう言われたってみんながいいよって言ってる中、そんなん言えるわけないだろ⁉それに、俺らはコスプレカフェやりたいなんて思ってないし。」
「ちょっと!」
怒声が響いて、数人の男子と葵ちゃんを含めた女子たちが言い合っていた。
「ちょ、葵、どうしたの?」
「どうしたもこうしたもないよ!こいつらがやっぱりコスプレカフェなんてやりたくなかったとか言い出してさ…。」
不満げな顔をしていた男子が確かここら辺の人だった気がする…と、記憶を探りながら葵ちゃんを睨んでいた男子を見つめていると、黒川さんが「みんな落ち着いて。一回全員の意見を聞きましょうよ。」とその場を執り成した。
「それで、両方の言い分は何?」
まるで裁判官のように教卓に立ち、黒川さんは葵ちゃんたち女子と不満げな顔の男子を見比べた。
「まず、私たちが内装を頑張って考えているときにさ、急に男子たちが「なんでこんなのを頑張んないといけないんだ。こんなの個人の趣味じゃん。」って言いだして。それで私たちが問い詰めたら、「やっぱりやりたくなかった」とか馬鹿なことを言い出したわけ。」
「それは本当なの、宮ヶ瀬くんたち。」
「俺らはやりたいと思って手を挙げたわけじゃねーし!そもそも、なんでコスプレとかしなきゃいけないんだよ。んなもん勝手に個人でやれよ。」
「はぁ!その言い方はひどくない⁉クラスのためを思って意見出してくれた朱莉ちゃんに失礼でしょ。」
どんどんとヒートアップしていく2人の横で、私は小さく縮こまる。
私のせいだ…。どうしよう。
「なら、最初に自分の意見を通せばよかったじゃん。そんなこともしてないのに今更やりたくなかったとか言うなよ。迷惑。」
困り果てていた私の後ろからはっきりと口にしたのは陽彩だった。そのまま、畳みかけるように言葉を紡ぐ。
「お前らがギャンギャン言ってる間にも時間が刻一刻と迫っているんですけど。文化祭があと2か月なのにそんなことに付き合ってる暇はないし。」
「紺野、お前…。」
「というか、自分たちで意見も出さずにほかの人の意見に文句を言うのはものすごく傲慢だね。だったら最初から意見を言えよ。」
「…。」
淡々とした口調で相手を追い詰めていく陽彩は眉をひそめながらとどめの一言を発した。
「嫌なら何もやんなくていいよ。かえって邪魔。」
その状況にみんなが揃ってポカーンとした。
「ちょ、陽彩それはさすがに…。」
「葵だって怒ってたよね?この人たちのためだけにうちのクラスの出し物を潰すのは嫌だ。」
止めに入ろうとした葵ちゃんにそう言い返すと、まだ縮こまったままの私を見た。
「ご、ごめんなさい。私のせいで…。」
怒られそうで、私は即座に謝る。すると、ふっと表情を緩めて、まっすぐに私と視線を合わせた。
「『自分のせいで』は呪いだよ。そんなこと思い込んだら一生抜け出せなくなる。」
「え?」
言われた言葉が理解できなくてパチパチと目を瞬かせる私に微笑むと、さっさと内装係が集まる一角へと去っていった。
「なんかめっちゃかっこよかった…。」
背後で、葵ちゃんがそうつぶやいた。
ガムテープなどを取りに行き、教室に戻っている時、黒川さんがそう言った。赤坂さんも耳を澄まして教室のほうを見る。
「なんか言い合ってるね。どうしたんだろう?」
心配になりながら、教室のドアを開けた途端、
「だから、あんたたちが多数決に反対すればよかったでしょ!」
「そう言われたってみんながいいよって言ってる中、そんなん言えるわけないだろ⁉それに、俺らはコスプレカフェやりたいなんて思ってないし。」
「ちょっと!」
怒声が響いて、数人の男子と葵ちゃんを含めた女子たちが言い合っていた。
「ちょ、葵、どうしたの?」
「どうしたもこうしたもないよ!こいつらがやっぱりコスプレカフェなんてやりたくなかったとか言い出してさ…。」
不満げな顔をしていた男子が確かここら辺の人だった気がする…と、記憶を探りながら葵ちゃんを睨んでいた男子を見つめていると、黒川さんが「みんな落ち着いて。一回全員の意見を聞きましょうよ。」とその場を執り成した。
「それで、両方の言い分は何?」
まるで裁判官のように教卓に立ち、黒川さんは葵ちゃんたち女子と不満げな顔の男子を見比べた。
「まず、私たちが内装を頑張って考えているときにさ、急に男子たちが「なんでこんなのを頑張んないといけないんだ。こんなの個人の趣味じゃん。」って言いだして。それで私たちが問い詰めたら、「やっぱりやりたくなかった」とか馬鹿なことを言い出したわけ。」
「それは本当なの、宮ヶ瀬くんたち。」
「俺らはやりたいと思って手を挙げたわけじゃねーし!そもそも、なんでコスプレとかしなきゃいけないんだよ。んなもん勝手に個人でやれよ。」
「はぁ!その言い方はひどくない⁉クラスのためを思って意見出してくれた朱莉ちゃんに失礼でしょ。」
どんどんとヒートアップしていく2人の横で、私は小さく縮こまる。
私のせいだ…。どうしよう。
「なら、最初に自分の意見を通せばよかったじゃん。そんなこともしてないのに今更やりたくなかったとか言うなよ。迷惑。」
困り果てていた私の後ろからはっきりと口にしたのは陽彩だった。そのまま、畳みかけるように言葉を紡ぐ。
「お前らがギャンギャン言ってる間にも時間が刻一刻と迫っているんですけど。文化祭があと2か月なのにそんなことに付き合ってる暇はないし。」
「紺野、お前…。」
「というか、自分たちで意見も出さずにほかの人の意見に文句を言うのはものすごく傲慢だね。だったら最初から意見を言えよ。」
「…。」
淡々とした口調で相手を追い詰めていく陽彩は眉をひそめながらとどめの一言を発した。
「嫌なら何もやんなくていいよ。かえって邪魔。」
その状況にみんなが揃ってポカーンとした。
「ちょ、陽彩それはさすがに…。」
「葵だって怒ってたよね?この人たちのためだけにうちのクラスの出し物を潰すのは嫌だ。」
止めに入ろうとした葵ちゃんにそう言い返すと、まだ縮こまったままの私を見た。
「ご、ごめんなさい。私のせいで…。」
怒られそうで、私は即座に謝る。すると、ふっと表情を緩めて、まっすぐに私と視線を合わせた。
「『自分のせいで』は呪いだよ。そんなこと思い込んだら一生抜け出せなくなる。」
「え?」
言われた言葉が理解できなくてパチパチと目を瞬かせる私に微笑むと、さっさと内装係が集まる一角へと去っていった。
「なんかめっちゃかっこよかった…。」
背後で、葵ちゃんがそうつぶやいた。