「私は、中学でいじめられてたの。」

事の発端は中2の冬。私は日直の仕事を手伝ってくれたクラスの男子に恋をした。かっこよくて、優しくて。すごく好きになった。おしゃべりをする機会も増えたし、一緒に放課後遊びに言ったりもした。
でも…。

「これから、あんたがターゲットね。」

ある日、クラス1の美少女の小金井明日香さんという人に呼び出され、そう言われた。小金井さんは気に入らない人をいじめのターゲットにして、学校に来させないようにしていた。先生たちには気づかれない方法で。私はその言葉を聞いた時、絶望した。

どこが気に食わなかったのか。今なら分かる。

小金井さんは私が好きになった男子のことを好きだったのだ。それも、ずっと前から。

それから、小金井さんの陰湿ないじめが始まった。ものを隠されたり、盗られたりすることもしょっちゅうだったし、クラスの女子全員に無視をされた。ブスだの、デブだの、陰口もさんざん言われた。友達だと思っていた人たちはいじめのターゲットになることを恐れて、私に話しかけなくなった。そして、決定打だったのは、私の片思い相手に勝手に気持ちを告げられたことだった。

「俺のこと、好き、だったの…?」
「え?」

いつかは告白しようかな、と考えていた。けれど、小金井さんがこっそりと伝えたことで私の想いはあっけなく知られてしまった。小金井さんには何も言っていなかったのに。知っていたのは私が親友だと思っていた、舞やすず、心実の3人だけだったのに。そのことがあまりにもつらくて、それから1週間ほど学校を休み、「学校に行かなきゃ」と思った時には私の体はもう学校のことを拒否していた。

いじめられても、この想いがあればまだ学校へ通っていられる、と心のどこかで思っていたのかもしれない。

私は友達に裏切られたと思ったことから人のことを素直に信じられなくなり、中学を卒業する残り1年ちょっとは学校に行けなくなった。たまに、勇気を振り絞って学校へと行き、別室で授業を受けたりしたが、どうしても教室に足を踏み出すことはできなかった。それでも、高校に何とか受かることができたのは、私が学校に行かなくなる前の成績と出席日数、そして3年生になってから先生が認めてくれたことでリモートで授業を受けることができるようになったからだ。

高校に入ってから、少しは人との関わりが変わって自分も成長したかも、と思ったけど、全然だった。いじめっ子を見ただけで怖くなるし、過去がリフレインしてきてきつかった。自分を変えるために、必死になってダイエットしてみたけど、変わったのは外面だけ。内面は一ミリも変わらなかった。過去の自分を知られるのが怖くて、何も言えなかった。ごめんなさい。」

全てを話し終えた私は、シンと静まり返った部屋で、頭を下げた。