「さ、次はお待ちかね、プレゼント開封よ!」
タルトを食べ終えると、隣の部屋に行っていたお母さんがプレゼントを抱えてリビングに戻ってきた。
「わぁ!かわいい!」
プレゼントを開けて、私は歓声を上げた。
「ずっと欲しがっていたでしょう、ヘッドフォン。」
お母さんが私の様子を見てうれしそうに言った。bluetooth搭載の真っ白なヘッドフォンは軽いし、何よりデザインがかわいい。
「俺のプレゼントは?どうだ?」
「お父さんのプレゼントも嬉しいよ。海外のブランドコスメで私に似合いそうなものをたくさん送ってくれたし。」
お父さんに苦笑しつつ、私はお姉ちゃんからのプレゼントを開ける。かわいくラッピングされたプレゼントをそうっと開けると、かわいいノートとペンケースが入っていた。
「あのノート、もう無くなりそうだったかなって思って。後はペンケース。中にもプレゼント、入ってるよ。」
お姉ちゃんに言われ、私はペンケースを開けた。すると、中から大量の可愛いフレークシールが!
「すごいかわいい!ありがとう!」
笑顔でお礼を言うと、お姉ちゃんも笑顔を返してくれた。
そういえば、陽彩たちって私の誕生日を知っていたっけ…?
ふいに陽彩たちのことを思い出して、私は少し落ち込む。もし知っていたとしても、私をお祝いしてくれることはないだろう。ひどい言葉をいっぱい言ってしまったのだから。
ピンポーン!
「誰かしら?」
急に鳴り響いたインターホンの音に、お母さんが首をかしげて玄関まで向かった。私もお姉ちゃんと顔を見合わせて、「誰だろう?」と首をかしげていると、お母さんが戻ってきた。
「朱莉のお友達よ。紺野陽彩…って言ってるけれど。」
「え⁉」
急いで私が玄関まで向かうと、そこに立っていたのは陽彩だった。
「なんでここに…。」
「朱莉を連れてくるため。葵に「連行して来い!」って言われたから。」
そういえば、葵ちゃんには私の家の場所を教えたような気がする。「学区が違っただけで私たちの家って意外と近いね!」と喜んでくれた記憶がある。そのまま立ち尽くしている私に、
「行くよ。」
と言って腕をつかんだ。
「い、行けない。」
「なんで?」
「私なんかが…。」
「それは呪いの言葉。どっちみち、連行して来いって言われたから行くよ。」
私の意志は関係ないのか。背後に来ていたお母さんに助けを求めようとした時、
「行ってきなさい、何かよく分からないけど、友達が呼んでいるんでしょう?」
「でも…。」
「いいから。ほら!」
背中を押されて送り出されてしまった。「ありがとうございます。」と陽彩はお礼を述べると、私の腕をつかんだまま走り出した。
「ねえ、どこに行くの?」
「僕の家。そのあと葵の家に行くから。」
「え!」
突然引っ張られたことに驚いている私には目もくれず、陽彩はズンズンと家に向かって進んでいく。私はそれに着いて行くのに精一杯だった。
「はい、ここ座って。」
私の家から数十分の陽彩の家に着くなり、私は椅子に座らされた。困惑している私をよそに陽彩はどんどん準備を進めていく。
「ちょっと待って。何をするの?」
「メイク。これから葵の家に行くから。」
「はい、目瞑って。」とコンシーラーを手に私の目の前に立った。理由を聞けるひまもなく、私はおとなしく目を瞑る。家族以外の人にメイクをしてもらうのが初めてで、私はくすぐったいような気持ちになりながら問いかける。
「葵ちゃんの家に行くってなんで?」
「行けば分かるよ。今いろいろと準備してると思うよ。」
目を瞑ったままだから陽彩の感情はよく分からない。でも、何故か少し怒っているように感じた。
「あの…、怒って、る?」
おずおずと聞くと、「はい、目開けていいよ。」と言われた。
「なんも事情説明しないで、急にふさぎ込まれて避けられたんだから。ちょっと怒ってる。」
「ごめん、なさい。」
私のせいだ。またうじうじとへこみそうになると、陽彩がアイブロウを手に、少し私を睨んだ。
「なんかまた悩んでるでしょ。抱え込まないで話してよ、友達なんだから。」
友達…。あんなひどいことを言われてもまだ友達として接してくれるのか。私が目を瞬くと、陽彩は私の頬をつねった。
「言わないならいいけど。でも、何を抱えているのか知らないと、急に距離を取られても困るんだよ。」
少し悲しそうに目を伏せられ、私は俯いた。ずっと話さないでいられたら、私はきっと楽だった。でも、いつかは話さなきゃいけない時が来る。そう感じて、私は、「葵ちゃんの家に言ったら話す。」とだけ答えた。
「分かった。」
陽彩もその答えに納得してくれたらしく、そのあとは何も聞かずにただ黙々とメイクを続けてくれた。
「はい、いいよ。」
「ありがとう。」
最後に私の愛用しているオレンジ色のリップを塗って、陽彩は笑顔を浮かべた。鏡には、綺麗にメイクをされた私の姿が映っていた。
「なんだか見違えたみたい…。」
「でしょ?メイクは世界を変えてくれるんだよ。」
「世界を?」
「そう。自分の目の前を明るく変えてくれるってこと。」
世界、か。
「ほら、早くいかないと葵が何やってんの!って乗り込んでくるよ。」
おどけたようにそう言って、陽彩は私の背中を押した。
「朱莉ちゃん!ハッピーバースデー!!」
葵ちゃんの家に着いた途端、パンッと目の前で色がはじけた。色とりどりのテープに囲まれて、私が困惑したようにあたりを見回していると、「はいはい、入って入ってー」と桃花ちゃんに背中を押された。そのまま、リビングに入ると、色とりどりの風船で飾り付けられたかわいい空間が広がっていた。
「今日は朱莉ちゃんの誕生日でしょ?だから、お祝いしようと思って!」
そう言いながら、私を椅子に座らせると、「ケーキとか準備する暇がなかったんだけど…。」と奥から包みを持ってきた。
「これ、私達からのプレゼント!」
「いいの?」
「うん。」
私は恐る恐る包みを開けると、中から私によく似た天使のジグソーパズルが出てきた。
「私たちお手製のジグソーパズル!みんなで絵を描いたんだ。」
「朱莉ちゃんをモデルにしたの。」
葵ちゃんや芹菜ちゃんが笑顔でそう言ってくれた。
「みんな、ありがとう…。ごめんね…。」
「え、泣くほどうれしかった?」
桃花ちゃんがフフッと笑ってくれた。私はこの人たちに何もかもを偽っていた。みんなはこんなに私のことを純粋に友達だと思ってくれていたというのに。
「みんなのこと、騙しててごめん。」
その言葉に陽彩を含めた全員が真剣な顔になった。
タルトを食べ終えると、隣の部屋に行っていたお母さんがプレゼントを抱えてリビングに戻ってきた。
「わぁ!かわいい!」
プレゼントを開けて、私は歓声を上げた。
「ずっと欲しがっていたでしょう、ヘッドフォン。」
お母さんが私の様子を見てうれしそうに言った。bluetooth搭載の真っ白なヘッドフォンは軽いし、何よりデザインがかわいい。
「俺のプレゼントは?どうだ?」
「お父さんのプレゼントも嬉しいよ。海外のブランドコスメで私に似合いそうなものをたくさん送ってくれたし。」
お父さんに苦笑しつつ、私はお姉ちゃんからのプレゼントを開ける。かわいくラッピングされたプレゼントをそうっと開けると、かわいいノートとペンケースが入っていた。
「あのノート、もう無くなりそうだったかなって思って。後はペンケース。中にもプレゼント、入ってるよ。」
お姉ちゃんに言われ、私はペンケースを開けた。すると、中から大量の可愛いフレークシールが!
「すごいかわいい!ありがとう!」
笑顔でお礼を言うと、お姉ちゃんも笑顔を返してくれた。
そういえば、陽彩たちって私の誕生日を知っていたっけ…?
ふいに陽彩たちのことを思い出して、私は少し落ち込む。もし知っていたとしても、私をお祝いしてくれることはないだろう。ひどい言葉をいっぱい言ってしまったのだから。
ピンポーン!
「誰かしら?」
急に鳴り響いたインターホンの音に、お母さんが首をかしげて玄関まで向かった。私もお姉ちゃんと顔を見合わせて、「誰だろう?」と首をかしげていると、お母さんが戻ってきた。
「朱莉のお友達よ。紺野陽彩…って言ってるけれど。」
「え⁉」
急いで私が玄関まで向かうと、そこに立っていたのは陽彩だった。
「なんでここに…。」
「朱莉を連れてくるため。葵に「連行して来い!」って言われたから。」
そういえば、葵ちゃんには私の家の場所を教えたような気がする。「学区が違っただけで私たちの家って意外と近いね!」と喜んでくれた記憶がある。そのまま立ち尽くしている私に、
「行くよ。」
と言って腕をつかんだ。
「い、行けない。」
「なんで?」
「私なんかが…。」
「それは呪いの言葉。どっちみち、連行して来いって言われたから行くよ。」
私の意志は関係ないのか。背後に来ていたお母さんに助けを求めようとした時、
「行ってきなさい、何かよく分からないけど、友達が呼んでいるんでしょう?」
「でも…。」
「いいから。ほら!」
背中を押されて送り出されてしまった。「ありがとうございます。」と陽彩はお礼を述べると、私の腕をつかんだまま走り出した。
「ねえ、どこに行くの?」
「僕の家。そのあと葵の家に行くから。」
「え!」
突然引っ張られたことに驚いている私には目もくれず、陽彩はズンズンと家に向かって進んでいく。私はそれに着いて行くのに精一杯だった。
「はい、ここ座って。」
私の家から数十分の陽彩の家に着くなり、私は椅子に座らされた。困惑している私をよそに陽彩はどんどん準備を進めていく。
「ちょっと待って。何をするの?」
「メイク。これから葵の家に行くから。」
「はい、目瞑って。」とコンシーラーを手に私の目の前に立った。理由を聞けるひまもなく、私はおとなしく目を瞑る。家族以外の人にメイクをしてもらうのが初めてで、私はくすぐったいような気持ちになりながら問いかける。
「葵ちゃんの家に行くってなんで?」
「行けば分かるよ。今いろいろと準備してると思うよ。」
目を瞑ったままだから陽彩の感情はよく分からない。でも、何故か少し怒っているように感じた。
「あの…、怒って、る?」
おずおずと聞くと、「はい、目開けていいよ。」と言われた。
「なんも事情説明しないで、急にふさぎ込まれて避けられたんだから。ちょっと怒ってる。」
「ごめん、なさい。」
私のせいだ。またうじうじとへこみそうになると、陽彩がアイブロウを手に、少し私を睨んだ。
「なんかまた悩んでるでしょ。抱え込まないで話してよ、友達なんだから。」
友達…。あんなひどいことを言われてもまだ友達として接してくれるのか。私が目を瞬くと、陽彩は私の頬をつねった。
「言わないならいいけど。でも、何を抱えているのか知らないと、急に距離を取られても困るんだよ。」
少し悲しそうに目を伏せられ、私は俯いた。ずっと話さないでいられたら、私はきっと楽だった。でも、いつかは話さなきゃいけない時が来る。そう感じて、私は、「葵ちゃんの家に言ったら話す。」とだけ答えた。
「分かった。」
陽彩もその答えに納得してくれたらしく、そのあとは何も聞かずにただ黙々とメイクを続けてくれた。
「はい、いいよ。」
「ありがとう。」
最後に私の愛用しているオレンジ色のリップを塗って、陽彩は笑顔を浮かべた。鏡には、綺麗にメイクをされた私の姿が映っていた。
「なんだか見違えたみたい…。」
「でしょ?メイクは世界を変えてくれるんだよ。」
「世界を?」
「そう。自分の目の前を明るく変えてくれるってこと。」
世界、か。
「ほら、早くいかないと葵が何やってんの!って乗り込んでくるよ。」
おどけたようにそう言って、陽彩は私の背中を押した。
「朱莉ちゃん!ハッピーバースデー!!」
葵ちゃんの家に着いた途端、パンッと目の前で色がはじけた。色とりどりのテープに囲まれて、私が困惑したようにあたりを見回していると、「はいはい、入って入ってー」と桃花ちゃんに背中を押された。そのまま、リビングに入ると、色とりどりの風船で飾り付けられたかわいい空間が広がっていた。
「今日は朱莉ちゃんの誕生日でしょ?だから、お祝いしようと思って!」
そう言いながら、私を椅子に座らせると、「ケーキとか準備する暇がなかったんだけど…。」と奥から包みを持ってきた。
「これ、私達からのプレゼント!」
「いいの?」
「うん。」
私は恐る恐る包みを開けると、中から私によく似た天使のジグソーパズルが出てきた。
「私たちお手製のジグソーパズル!みんなで絵を描いたんだ。」
「朱莉ちゃんをモデルにしたの。」
葵ちゃんや芹菜ちゃんが笑顔でそう言ってくれた。
「みんな、ありがとう…。ごめんね…。」
「え、泣くほどうれしかった?」
桃花ちゃんがフフッと笑ってくれた。私はこの人たちに何もかもを偽っていた。みんなはこんなに私のことを純粋に友達だと思ってくれていたというのに。
「みんなのこと、騙しててごめん。」
その言葉に陽彩を含めた全員が真剣な顔になった。