あぁ、今日、私の誕生日か。
文化祭から1か月たった日のこと、私はカレンダーを見て気が付いた。ずっと死人のような顔で日々を過ごしていたからなのか、日付の変化にも気が付かなかった。お姉ちゃんやお母さん、それに海外出張をしているお父さんまでもがリモートで私の誕生日会に参加すると言い出し、今リビングでは盛大に飾り付けがされていると思う。
「朱莉~!準備できたよー!」
しばらく自分の部屋でぼうっとしていると、お姉ちゃんが私を呼んだ。
「わぁ…!」
リビングに入った途端、私はそう声を漏らした。綺麗に飾り付けがされたリビングにはコンフェッティバルーンや大量のプレゼントが積みあがったタワー、それに、かわいいガーランドまで飾られていた。
「すごいでしょ?頑張って作り方調べて作ったんだよ。」
「お父さんったら郵送でプレゼント送りすぎ。何個買ってあったのよ。」
「これでも5個だけだぞ?ほんとはもっと買いたかったし送りたかったのにこれまでしか送れなくて…。」
誇らしげに言うお姉ちゃんや、プレゼントを贈りすぎて怒られているお父さんや困ったように笑うお母さんを見て、私もつられて少し笑った。
「ありがとう。」
「さ、ご飯食べてプレゼント開けしましょ。」
少ししんみりしてしまった空気を換えるようにお母さんがそう言ってキッチンに立った。
「ん。おいしい!」
テーブルの上に大量に並んだ料理のうちの一つを手に取って私は一つ頷く。お母さんの手作りピザはチーズがたっぷり乗っていてとってもおいしい。それに、かわいいスコーンや唐揚げ、フライドポテトなど私やお姉ちゃんが好きそうな料理ばかりだ。しばらく夢中になって食べていると、お姉ちゃんが急に部屋の電気を消した。
「え⁉」
「ハッピバースデーテューユー、ハッピバースデーテューユー。ハッピバースデーディア朱莉ー!ハッピバースデーテューユー!」
お母さん、リモートのお父さん、そしてお姉ちゃんの大合唱でケーキが運ばれてきた。私の大好きなフルーツタルトだ。上にはメッセージプレートが乗っていて、『朱莉 誕生日おめでとう!』と書かれている。
「朱莉の大好きなフルーツタルトにしてみました!未来のパティシエの味を味わって!」
「え⁉これ手作りなの⁉」
キラキラときらめくみかんにブルーベリー、イチゴやマンゴーがふんだんに乗せられたタルトを見て私は驚く。お店で買ったものだと思っていた。
「お姉ちゃんね、実は大学じゃなくて製菓学校に通ってるの。将来はパティシエになりたいと思っているんだ。今まで言ってなくてごめんね。」
初めて知ったことだった。お母さんたちは知っていたのだろうかと視線を向けると何も驚いた様子はない。私だけが知らなかったのか、と少し落ち込んでいると、
「朱莉がずっと落ち込んでいたから。元気になるようなケーキを作れるまで秘密にしておいて、って言ったの。」
お姉ちゃんが私の頭をなでながら言った。お姉ちゃんが製菓学校生になったのは多分私が一番荒れていた時のことだと思う。誰も信じられていない私に向かって、「自分の夢に一歩近づいた」なんて言えなかったのだろう。
「私こそ、ごめんなさい。何にもできてなくて…。」
「そんなことないわよ。いろんな素敵なものを私たちにもたらしてくれたわ。」
お母さんが即座に否定して、少し顔をほころばせる。
「生まれてきてくれたことが何よりの幸せだし、私の仕事に興味を持ってくれたのも嬉しかった。幸せそうに笑っている姿を見ているだけで私は幸せよ。」
「それを言うなら俺もだ。朱莉にも、紫にも毎日元気をもらって仕事をしているんだからな。早く会いたい…。」
お父さんも、お母さんも私たちに微笑みかけながらそう話してくれた。私は両親に迷惑しかかけていない気がしていたけれど、そうではなかったのかもしれない。
初めて感じたことがたくさんあって、私は思わず涙がこぼれた。
「ちょ!なんで泣いてるのよ。」
「嬉しかった、から。こんな愛されてたんだなって感じたから。」
「当たり前でしょう。親は子を愛しているのよ。ほら、おいしいうちにタルト、食べましょ。」
お母さんにそう言われて、私は泣きながらタルトを食べた。
文化祭から1か月たった日のこと、私はカレンダーを見て気が付いた。ずっと死人のような顔で日々を過ごしていたからなのか、日付の変化にも気が付かなかった。お姉ちゃんやお母さん、それに海外出張をしているお父さんまでもがリモートで私の誕生日会に参加すると言い出し、今リビングでは盛大に飾り付けがされていると思う。
「朱莉~!準備できたよー!」
しばらく自分の部屋でぼうっとしていると、お姉ちゃんが私を呼んだ。
「わぁ…!」
リビングに入った途端、私はそう声を漏らした。綺麗に飾り付けがされたリビングにはコンフェッティバルーンや大量のプレゼントが積みあがったタワー、それに、かわいいガーランドまで飾られていた。
「すごいでしょ?頑張って作り方調べて作ったんだよ。」
「お父さんったら郵送でプレゼント送りすぎ。何個買ってあったのよ。」
「これでも5個だけだぞ?ほんとはもっと買いたかったし送りたかったのにこれまでしか送れなくて…。」
誇らしげに言うお姉ちゃんや、プレゼントを贈りすぎて怒られているお父さんや困ったように笑うお母さんを見て、私もつられて少し笑った。
「ありがとう。」
「さ、ご飯食べてプレゼント開けしましょ。」
少ししんみりしてしまった空気を換えるようにお母さんがそう言ってキッチンに立った。
「ん。おいしい!」
テーブルの上に大量に並んだ料理のうちの一つを手に取って私は一つ頷く。お母さんの手作りピザはチーズがたっぷり乗っていてとってもおいしい。それに、かわいいスコーンや唐揚げ、フライドポテトなど私やお姉ちゃんが好きそうな料理ばかりだ。しばらく夢中になって食べていると、お姉ちゃんが急に部屋の電気を消した。
「え⁉」
「ハッピバースデーテューユー、ハッピバースデーテューユー。ハッピバースデーディア朱莉ー!ハッピバースデーテューユー!」
お母さん、リモートのお父さん、そしてお姉ちゃんの大合唱でケーキが運ばれてきた。私の大好きなフルーツタルトだ。上にはメッセージプレートが乗っていて、『朱莉 誕生日おめでとう!』と書かれている。
「朱莉の大好きなフルーツタルトにしてみました!未来のパティシエの味を味わって!」
「え⁉これ手作りなの⁉」
キラキラときらめくみかんにブルーベリー、イチゴやマンゴーがふんだんに乗せられたタルトを見て私は驚く。お店で買ったものだと思っていた。
「お姉ちゃんね、実は大学じゃなくて製菓学校に通ってるの。将来はパティシエになりたいと思っているんだ。今まで言ってなくてごめんね。」
初めて知ったことだった。お母さんたちは知っていたのだろうかと視線を向けると何も驚いた様子はない。私だけが知らなかったのか、と少し落ち込んでいると、
「朱莉がずっと落ち込んでいたから。元気になるようなケーキを作れるまで秘密にしておいて、って言ったの。」
お姉ちゃんが私の頭をなでながら言った。お姉ちゃんが製菓学校生になったのは多分私が一番荒れていた時のことだと思う。誰も信じられていない私に向かって、「自分の夢に一歩近づいた」なんて言えなかったのだろう。
「私こそ、ごめんなさい。何にもできてなくて…。」
「そんなことないわよ。いろんな素敵なものを私たちにもたらしてくれたわ。」
お母さんが即座に否定して、少し顔をほころばせる。
「生まれてきてくれたことが何よりの幸せだし、私の仕事に興味を持ってくれたのも嬉しかった。幸せそうに笑っている姿を見ているだけで私は幸せよ。」
「それを言うなら俺もだ。朱莉にも、紫にも毎日元気をもらって仕事をしているんだからな。早く会いたい…。」
お父さんも、お母さんも私たちに微笑みかけながらそう話してくれた。私は両親に迷惑しかかけていない気がしていたけれど、そうではなかったのかもしれない。
初めて感じたことがたくさんあって、私は思わず涙がこぼれた。
「ちょ!なんで泣いてるのよ。」
「嬉しかった、から。こんな愛されてたんだなって感じたから。」
「当たり前でしょう。親は子を愛しているのよ。ほら、おいしいうちにタルト、食べましょ。」
お母さんにそう言われて、私は泣きながらタルトを食べた。