そこにいた人物の姿に、私は息を吞んだ。
「あー!やっぱり白石さんだったぁ。見た目が変わってたから一瞬違うかと思った。久しぶり~。」
にこにこと人当たりのよさそうな笑みを浮かべているのは私の中学時代のクラスメイト、小金井明日香さんだった。その後ろには、小金井さんと仲良しの緑川るきさんがいた。
「なんでここにいるの…?」
「白石さんに会いに来たの!ねぇ、るき?」
「う、うん。」
優しくてふわふわした感じを待とう小金井さんは私に向かってまた微笑みかけた。その笑顔に、私の心は見る見るうちに冷めていく。
「友達?」
「あ、葵ちゃん…。」
「えーこの子だぁれ?」
お客さんの会計を済ませた葵ちゃんが固まっている私に聞いてきた。相変わらずよそゆきの笑みを浮かべて小金井さんはコロコロと笑う。葵ちゃんは「すごい可愛いですね!」と笑顔で話しかけているが、私にはその笑顔に騙されないで、と言いたくなってしまう。
「ちょっと白石さん借りてもいい?」
「どうぞどうぞ!こっちの仕事はもうあらかた終わったから。」
気を利かせたように葵ちゃんは私の背中を押すと、さっさとキッチンへ引っ込んでしまった。
あぁ、終わった。
絶望した表情を浮かべる私をそのまま引っ張って、人目があまりない非常階段まで来ると、フッと小金井さんは笑みを消した。
「あんたにも友達、できたんだね。びっくりしちゃった。もしかして中学時代の自分を隠してるの?」
「ほんとほんと!『空気』にはできないかと。」
けらけらとさっきとは打って変わったように笑う小金井さんたちに私は思わずうつむいてしまった。
「ねぇ、なんか言いなよ。もしかしてまだ『空気』のままだったり?」
「っ…。」
顔をあげるのが怖くて、私は俯いたままただ小さく震えていた。その様子に埒が明かないと感じたらしく、ニヤリと意地悪く笑って、
「あんたってほんと変わってないよね。あ、そうだ。いいもの見せてあげる。」
スマホをいじり始めた。何をするつもりなんだろう、と様子をうかがっていると、誰かの足音が近づいてきた。
「えっ!」
「びっくりしたでしょう?実は、私の彼氏、なの。」
勝ち誇ったような笑みを浮かべた小金井さんはするりと甘えるようにその人に近づいた。
「あんたの初恋の相手、だもんね。」
「なんで…。」
「久しぶり。」
私の目の前に立っていたのは中学時代のクラスメイト、黒瀬類だった。私が恋をしていた相手。中学とは変わらない笑顔を向けてきた類に私は言葉を失った。
「と、いうことだから、あんたには勝ち目ないよ。なんだかちょーぜつ可愛い女子と仲良くなってる見たいだけど、彼氏いないんでしょ?ま、デブだったもんね。」
「あ、あの子は…。」
「言い訳はどうでもいいから。あんたは一生ぼっちで生きてくのがお似合いだよ。ってことでじゃーねー。」
「ま、待って!なんで私がこの学校にいるってわかったの?」
「真凛に聞いたの。美少年に媚びてる愚か者がいるって聞いたから。」
そこまで言うと、ひらりと手を振って類と緑川さんを連れて去って行ってしまった。
「あー!やっぱり白石さんだったぁ。見た目が変わってたから一瞬違うかと思った。久しぶり~。」
にこにこと人当たりのよさそうな笑みを浮かべているのは私の中学時代のクラスメイト、小金井明日香さんだった。その後ろには、小金井さんと仲良しの緑川るきさんがいた。
「なんでここにいるの…?」
「白石さんに会いに来たの!ねぇ、るき?」
「う、うん。」
優しくてふわふわした感じを待とう小金井さんは私に向かってまた微笑みかけた。その笑顔に、私の心は見る見るうちに冷めていく。
「友達?」
「あ、葵ちゃん…。」
「えーこの子だぁれ?」
お客さんの会計を済ませた葵ちゃんが固まっている私に聞いてきた。相変わらずよそゆきの笑みを浮かべて小金井さんはコロコロと笑う。葵ちゃんは「すごい可愛いですね!」と笑顔で話しかけているが、私にはその笑顔に騙されないで、と言いたくなってしまう。
「ちょっと白石さん借りてもいい?」
「どうぞどうぞ!こっちの仕事はもうあらかた終わったから。」
気を利かせたように葵ちゃんは私の背中を押すと、さっさとキッチンへ引っ込んでしまった。
あぁ、終わった。
絶望した表情を浮かべる私をそのまま引っ張って、人目があまりない非常階段まで来ると、フッと小金井さんは笑みを消した。
「あんたにも友達、できたんだね。びっくりしちゃった。もしかして中学時代の自分を隠してるの?」
「ほんとほんと!『空気』にはできないかと。」
けらけらとさっきとは打って変わったように笑う小金井さんたちに私は思わずうつむいてしまった。
「ねぇ、なんか言いなよ。もしかしてまだ『空気』のままだったり?」
「っ…。」
顔をあげるのが怖くて、私は俯いたままただ小さく震えていた。その様子に埒が明かないと感じたらしく、ニヤリと意地悪く笑って、
「あんたってほんと変わってないよね。あ、そうだ。いいもの見せてあげる。」
スマホをいじり始めた。何をするつもりなんだろう、と様子をうかがっていると、誰かの足音が近づいてきた。
「えっ!」
「びっくりしたでしょう?実は、私の彼氏、なの。」
勝ち誇ったような笑みを浮かべた小金井さんはするりと甘えるようにその人に近づいた。
「あんたの初恋の相手、だもんね。」
「なんで…。」
「久しぶり。」
私の目の前に立っていたのは中学時代のクラスメイト、黒瀬類だった。私が恋をしていた相手。中学とは変わらない笑顔を向けてきた類に私は言葉を失った。
「と、いうことだから、あんたには勝ち目ないよ。なんだかちょーぜつ可愛い女子と仲良くなってる見たいだけど、彼氏いないんでしょ?ま、デブだったもんね。」
「あ、あの子は…。」
「言い訳はどうでもいいから。あんたは一生ぼっちで生きてくのがお似合いだよ。ってことでじゃーねー。」
「ま、待って!なんで私がこの学校にいるってわかったの?」
「真凛に聞いたの。美少年に媚びてる愚か者がいるって聞いたから。」
そこまで言うと、ひらりと手を振って類と緑川さんを連れて去って行ってしまった。