「さぁ!文化祭、始まるよ!」
ホームルーム後、私たちの席のそばまで来た桃花ちゃんはぴょこぴょことうさ耳パーカーの耳を動かしながら言った。
「ここに来るまでにいろいろあったわねぇ。男子とのいざこざとか衣装切り裂き事件とか。」
「でも乗り越えられて本当によかった!」
感極まったように衣装係のメンバーが口にする。みんなそれぞれコスプレをして、メイクもしているから、誰が誰だかわからない人もいるけど。
「今日は私達もいろいろと仕事があるけど、頑張っていこうね!」
「了解!」
みんなで顔を見合わせてフフッと笑うとそれぞれが持ち場に着いた。
まずはキッチンの仕事からか…。普段バイトでやってるからそれほど大変なことはない、と信じたいけど…。
机で仕切られたスペースには机が3つくっつけられて並べられており、そのすぐそばには冷蔵庫が置いてある。このカフェで出すのは主に飲み物だ。火を使うものは室内では禁止だから、市販のドーナツにお好みのトッピングをしたり、フルーツポンチやサンドイッチ、手作りパフェを出すことになっている。何から手を付ければいいんだろう、と悩んでいると、机の横からひょこりとキッチンの司令塔を務める皆方さんの顔が出てきた。
「白石さん、とりあえず、ドリンク類お願いしてもいい?」
「了解です。」
いつもの青山さんに返事するように返してしまい、ちょっと怪訝そうな顔で見られてしまった。気まずくなった私はサッと視線を逸らすと、グラスを用意し始めた。
「メロンソーダとオレンジジュース、1つずつお願いします!」
「ストロベリーパフェ、注文入りました。」
文化祭開始のベルが鳴るとともに、お客さんが一気に校舎内に入ってきた。外はまだ暑かったからか、飲み物や冷たいスイーツを頼む人が多く、キッチンの中はてんやわんやだ。まだ始まったばかりなのにこんなにお客さんが来るなんて…と思いつつ、私は大急ぎで冷蔵庫からオレンジジュースのパックを取り出して注ぎ始めた。
「白石さん、お客さんの対応お願いできる?今こっちが人手不足なの。」
「はーい。」
しばらくキッチンで頑張っていると、私は皆方さんに呼ばれて、お客さんが飲んだり食べたりしているカフェスペースに出た。外では呼び込み係の子が「1-Dコスプレカフェでーす!」と大声で呼びかけている。その効果もあってか、どんどんとお客さんが入ってくる。大急ぎで空いているテーブルを片付けながら、入ってくるお客さんに挨拶をする。
「いらっしゃいませー」
挨拶は接客の基本、と教えられたから自然と声が出るようになった。挨拶をすることは大切、と接客を担当する人たちに教えたことで、みんなすんなりと受け入れてくれた。笑顔で接客をするクラスメイトに思わず私も笑みを浮かべていると、
「すみません、注文したいのですが。」
とさっきは言ったお客さんが手を挙げて呼んでいた。「ご注文お伺いします。」と言いながら、私はひらりとローブの裾を揺らした。
「はぁ。こんなにお客さんが来るとは思わなかったよ。」
お昼休憩の時間、葵ちゃんがため息をついた。お昼休憩はシフトを組むときに1人1人違うタイミングで入っている。私は、偶然葵ちゃんとお昼休憩が被ったので、人気の少ない中庭でお昼ご飯を食べていた。
「あんまり椅子がある出し物がないっていうのも理由の一つだろうね…。」
「なんでみんな屋台形式なのよ!」
プンプンと文句を言いながらおにぎりをほおばる葵ちゃんに私は苦笑しつつ、卵焼きをパクリと食べる。午後は、お姉ちゃんとできればお母さんも来てくれるらしく、「どんなコスプレしてるか楽しみだわ!」とワクワクしていた。
期待にこたえられるように頑張らないと!
私は気合を入れて、お弁当を食べ終えた。
教室に戻り、またキッチンに立ってしばらく注文された食べ物を作っていたら、末澤さんに声をかけられた。
「白石さん、窓際のテーブル、片づけてくれる?私がこっちやっとくから。」
「分かった。」
キッチンから出て、ふきんとトレーを手に指定されたテーブルまで向かっていると、途中でお客さんに「すみませーん。」と後ろから声をかけられた。
「はい。どうなさいましたか?」
私は後ろを振り向いて、固まった。
「なん、で…。」
ホームルーム後、私たちの席のそばまで来た桃花ちゃんはぴょこぴょことうさ耳パーカーの耳を動かしながら言った。
「ここに来るまでにいろいろあったわねぇ。男子とのいざこざとか衣装切り裂き事件とか。」
「でも乗り越えられて本当によかった!」
感極まったように衣装係のメンバーが口にする。みんなそれぞれコスプレをして、メイクもしているから、誰が誰だかわからない人もいるけど。
「今日は私達もいろいろと仕事があるけど、頑張っていこうね!」
「了解!」
みんなで顔を見合わせてフフッと笑うとそれぞれが持ち場に着いた。
まずはキッチンの仕事からか…。普段バイトでやってるからそれほど大変なことはない、と信じたいけど…。
机で仕切られたスペースには机が3つくっつけられて並べられており、そのすぐそばには冷蔵庫が置いてある。このカフェで出すのは主に飲み物だ。火を使うものは室内では禁止だから、市販のドーナツにお好みのトッピングをしたり、フルーツポンチやサンドイッチ、手作りパフェを出すことになっている。何から手を付ければいいんだろう、と悩んでいると、机の横からひょこりとキッチンの司令塔を務める皆方さんの顔が出てきた。
「白石さん、とりあえず、ドリンク類お願いしてもいい?」
「了解です。」
いつもの青山さんに返事するように返してしまい、ちょっと怪訝そうな顔で見られてしまった。気まずくなった私はサッと視線を逸らすと、グラスを用意し始めた。
「メロンソーダとオレンジジュース、1つずつお願いします!」
「ストロベリーパフェ、注文入りました。」
文化祭開始のベルが鳴るとともに、お客さんが一気に校舎内に入ってきた。外はまだ暑かったからか、飲み物や冷たいスイーツを頼む人が多く、キッチンの中はてんやわんやだ。まだ始まったばかりなのにこんなにお客さんが来るなんて…と思いつつ、私は大急ぎで冷蔵庫からオレンジジュースのパックを取り出して注ぎ始めた。
「白石さん、お客さんの対応お願いできる?今こっちが人手不足なの。」
「はーい。」
しばらくキッチンで頑張っていると、私は皆方さんに呼ばれて、お客さんが飲んだり食べたりしているカフェスペースに出た。外では呼び込み係の子が「1-Dコスプレカフェでーす!」と大声で呼びかけている。その効果もあってか、どんどんとお客さんが入ってくる。大急ぎで空いているテーブルを片付けながら、入ってくるお客さんに挨拶をする。
「いらっしゃいませー」
挨拶は接客の基本、と教えられたから自然と声が出るようになった。挨拶をすることは大切、と接客を担当する人たちに教えたことで、みんなすんなりと受け入れてくれた。笑顔で接客をするクラスメイトに思わず私も笑みを浮かべていると、
「すみません、注文したいのですが。」
とさっきは言ったお客さんが手を挙げて呼んでいた。「ご注文お伺いします。」と言いながら、私はひらりとローブの裾を揺らした。
「はぁ。こんなにお客さんが来るとは思わなかったよ。」
お昼休憩の時間、葵ちゃんがため息をついた。お昼休憩はシフトを組むときに1人1人違うタイミングで入っている。私は、偶然葵ちゃんとお昼休憩が被ったので、人気の少ない中庭でお昼ご飯を食べていた。
「あんまり椅子がある出し物がないっていうのも理由の一つだろうね…。」
「なんでみんな屋台形式なのよ!」
プンプンと文句を言いながらおにぎりをほおばる葵ちゃんに私は苦笑しつつ、卵焼きをパクリと食べる。午後は、お姉ちゃんとできればお母さんも来てくれるらしく、「どんなコスプレしてるか楽しみだわ!」とワクワクしていた。
期待にこたえられるように頑張らないと!
私は気合を入れて、お弁当を食べ終えた。
教室に戻り、またキッチンに立ってしばらく注文された食べ物を作っていたら、末澤さんに声をかけられた。
「白石さん、窓際のテーブル、片づけてくれる?私がこっちやっとくから。」
「分かった。」
キッチンから出て、ふきんとトレーを手に指定されたテーブルまで向かっていると、途中でお客さんに「すみませーん。」と後ろから声をかけられた。
「はい。どうなさいましたか?」
私は後ろを振り向いて、固まった。
「なん、で…。」