「今日から2日間、文化祭が開催されますっ!」

いろいろなコスプレをした生徒がわくわくした様子で文化祭開始のベルを待つ中、学級委員長が教卓の前に立ってそう宣言した。

「楽しみー!」
「今年の後夜祭もキャンドルファイヤーあるらしいよ。めっちゃ幻想的だって。」
「頑張ろうな。」

その声に、みんながわぁっと盛り上がり、口々に言い合う。私もパチパチと手を叩きながら、芹菜ちゃんと顔を見合わせて笑った。

「頑張りましょうね。」
「うん。芹菜ちゃんのコスプレ、中世の騎士なんだ。かっこいい!」
「朱莉の魔法使いのローブも可愛いわよ。本当に魔法をかけてくれそう。」

私が芹菜ちゃんのコスプレをほめると、嬉しそうに頬を赤らめて私のコスプレもほめてくれた。二人で顔を見合わせていると、後ろから可愛い女の子が「2人とも、メイクはしないの?」と声をかけてきた。

「え?」
「陽彩、完成度高すぎない?どれだけ努力したのよ?」

困惑する私とは違い、芹菜ちゃんは平然とした顔でその女の子を見た。

「いいじゃん、コスプレなんだから。かわいいでしょ?一回全力メイクで可愛くしたかったんだー!」

え、え?もしかして…。

「陽彩⁉」
「あれ、今気づいた?そうだよ。」

にこりと可憐な笑みを浮かべた女の子…もとい陽彩は「メイクしたらもっと可愛くなるのにな…。」と私の顔を覗き込んだ。

女の子の姿だけど、声は陽彩だからなんか変な感じ…。

まじまじと陽彩の姿を見ていると、ふふっと可愛く笑いかけられた。

「ま、朱莉はそのままでも十分可愛いから安心して。」
「うぇ⁉」

唐突な発言に周りにいた女の子たちが「ね、今の聞いた?」「可愛いのに、言うことかっこよ。」などときゃあきゃあ声をあげている。

なんか、きゅんとしてしまった。

胸のあたりをそっと抑えて、私はルンルンで去っていった陽彩の後ろ姿を見つめた。