手のひらをわたしの顔の前で見せてきて、ふうと息を吐くユーイチ。

 どこか切なそうな顔をしながら、再び空を見上げる彼だけれど、もう飛行機は去ったあとで、どこにもその姿はなし。

 ユーイチの瞳には、緑色の木々とやたらと青い空、そして遠くで浮かぶ入道雲しか映っていないだろう。

 クリームソーダ。

 青に映えるフロートのような雲を目に、頭の中のアルバムから、ひとひらの写真が舞い踊った。

 それはまだ、わたしが小学校に上がる前の、保育園児の頃だろうか。

 休みの日に、ユーイチとわたしを喫茶店へと連れて行ってくれたユーイチのお父さんがご馳走してくれたクリームソーダは絶品で、今でもその味は、この舌が明瞭に覚えている。

 半袖だった。確かあの日も夏だった。

 ちーちゃんとユーイチのお父さん。そういえば、わたしがふたりと会えなくなったのは、翌年の同じ季節だ。