そう、あれは中学に上がって初めての休日だった。僕はお菓子が作りたくなったのでキッチンに向かった。けど、そこで見たのは泡立て器やケーキの型を透明なビニールのゴミ袋に無造作に突っ込んでいる母の姿だった。
僕に気が付いた母は、無表情で言った。
「中学生なんだから、もう夢を見るのはお終いね」
「……え?」
「パティシエなんて、なれるわけがないでしょう? もっと現実を見なさい。馬鹿みたいな夢を口にするくらいなら勉強なさい」
「お母さん……」
「大学に行って、良いところに就職するの。それがあなたの進む道よ」
そう言い放って、母はどこかに消えた。おそらくはゴミ捨て場。僕は追いかけようとしたけれど、足を上手に動かせず、しばらくの間キッチンで固まっていた。
あの楽しかった時間はなんだったのだろうか。僕は頭の中が真っ白になった。僕は魔法を使いたかったのに、まるで自分にかけられた魔法が解けてしまったかのようだった。
僕に気が付いた母は、無表情で言った。
「中学生なんだから、もう夢を見るのはお終いね」
「……え?」
「パティシエなんて、なれるわけがないでしょう? もっと現実を見なさい。馬鹿みたいな夢を口にするくらいなら勉強なさい」
「お母さん……」
「大学に行って、良いところに就職するの。それがあなたの進む道よ」
そう言い放って、母はどこかに消えた。おそらくはゴミ捨て場。僕は追いかけようとしたけれど、足を上手に動かせず、しばらくの間キッチンで固まっていた。
あの楽しかった時間はなんだったのだろうか。僕は頭の中が真っ白になった。僕は魔法を使いたかったのに、まるで自分にかけられた魔法が解けてしまったかのようだった。