両親は病室に入ると絶句していた。
「なんで、、、あなたが…」(藤野母)
「お前…」(藤野父)
2人が驚いていることが理解できなかった。すると、狩口はベットから降りて両親に向き合った。
「はじめまして。…いや、お久しぶりです藤野夫妻。狩口愛佳です。名字は変わりましたが覚えていますか?」(狩口)
お久しぶりです?名字が変わった?狩口が言っていることが何一つ理解できなかった。
「愛佳ちゃん、なの?」(藤野母)
「はい、覚えててくれたんですね。」(狩口)
「ねえ待って、話についていけないんだけど。どういうこと?2人は前から狩口の事知ってたのか?」(藤野)
俺がそう言うとお母さんが少ししてから口を開いた。
「お父さんがシステムエンジニアになったのはつい最近でしょ?その前はある会社の社長の側近として働いてたの。その社長が愛佳ちゃんのお父さんよ。それで、社長さんが病気で亡くなってしまって会社が潰れてしまったんだれど、その前は小さい頃からあなた達は2人でよく遊んでて両親ともに仲良かったから婚約しようってことになってて2人も同意してたの。でも、会社が潰れたあと愛佳ちゃんと愛佳ちゃんのお母さんの2人が一切音沙汰なくて、野垂れ死んだんじゃないかって1年探したけど見つからなくて諦めたの。それがあなたが小学6年生だった頃の話。」(藤野母)
淡々と告げられた事実に頭がついていかなかった。
「じゃ、じゃあ狩口は小5から宮市と幼馴染ってことか?転校して。」(藤野)
「うん、そういうことになるね。」(狩口)
「じゃあなんで俺は狩口と仲良かったことを忘れてるんだよ!」(藤野)
俺が怒鳴ると病室は静まり返った。
「お前が忘れたんだよ。記憶を…」(藤野父)
「は?…」(藤野)
「だってお前の頭には中学からの記憶しかないだろ?」(藤野父)
そう言われて記憶を探るけど、言われた通り中学からの記憶しかない。
「ショックによる記憶喪失だってさ。医者はそう言っていたよ。私達だって最初は戸惑ったさ。そんな状態で小学校からの知り合いがいる中学には行かせられないから転校して不自然に思われないように平然を装って…」(藤野父)
「なんだよそれ。じゃあ、狩口と今日会わなかったら俺は一生そのこと知らなかったのかよ!?ふざけんなよ!」(藤野)
俺はそう言って、病室を飛び出した。