狩口が退院する上で一番重要なことが一つだけあった。『狩口をどこに住まわせるか』だ。
もちろん、一人暮らしさせてもいいが、今の心理状況だとそれはかなり厳しい。宮市のところは親が少し厳しいからやめといたほうがいいって言っていた。つまり、必然的に俺が自分の親に説得しなければならない。狩口を守るにはそれしかなかった。
親と話をするためのここまで緊張したのはいつぶりだろう。
「お母さん、お父さん、話があるんだ」(藤野)
「なんだ?」(藤野父)
怖い、逃げ出してしまいたい。でも、狩口は逃げなかった。あの母親から。
「俺の同級生に両親をなくして今、入院中のやつがいるんだ。この前ニュースになってた親族惨殺事件の唯一の生き残りだ。それで、今あいつを助けてくれる家がどこにもなくて、でも、あいつは1人で暮らせるような状況じゃないんだ。だから、俺の、この家に住まわせてあげられないかな?」(藤野)
「無理だ。」(藤野父)
え?即答されるとは思わなかった。父はシステムエンジニアとして病院の患者をよく見ているはずだから救いの手を差し伸べてくれると心の何処かで思っていた。
「な、なんでよ。住まわせてあげてくれるなら、俺だってちゃんと家の子と手伝うしそれ相応の条件には耐えるからさ。」(藤野)
「だめだ。悠太は今、彼女のことを考えてるようで自分のことしか考えてない。彼女が安心して暮らしていないと自分が落ち着けないからだろう?そもそも、同い年の異性がひとつ屋根の下で暮らすということは周りからどう思われるかも考えないとだ。そこまで考えたか?」(藤野父)
それを言われて、自分がどこまで愚かだったかようやく気づけた。
「考えてはなかった。でも、なら、彼女に会ってくれないか?そして今のあいつを見てほしい。その後に彼女と暮らすことを許可してくれないのなら、俺がこの家を出て借金抱えてでもどんなに現実的じゃなくても守ります。」(藤野)
「そこまで言うのなら会ってみませんか?悠太がここまで必死になるんだから。好きなんでしょうから。」(藤野母)
すると父は諦めたかのように「わかった」と言ってくれた。
「じゃあ、明日の学校終わりに迎えに行くから3人で行きましょうか。にしても、親子ねえ…あなた達2人は」(藤野母)
お母さんのその言葉の意味は理解できなかったが、会ってくれると言ってくれと嬉しかった。
翌日、帰りのHRが終わると宮市にお願いして俺は部活を休ませてもらうことにした。
玄関を出るとお母さんとお父さんが車でもう来ていた。
「ごめん、おまたせ。」(藤野)
「いいわよ、それじゃあ行きましょうか。」(藤野母)
そう言ってお母さんは車を出した。
「お前、ちゃんと彼女に今日来ることを伝えてるんだろうな?」(藤野父)
「いや、伝えてない。でも、彼女の担当医には言ってあるから大丈夫だと思う。」(藤野)
「そうか。」(藤野父)
病院に着くと、俺が受付を済ませて3人で担当医と話すことになった。
「……ということがあり、今の狩口さんの状態では1人で生活することは不可能です。ですから、私からも同居していただきたいです。無理なお願いをしているのは重々承知ですが…」(担当医)
「頭を上げてください。彼女に会ってみないと無責任に「わかりました」とも言えませんから。」(藤野父)
担当医がお父さんに狩口の状態のついて説明をしたあと、俺たちは4人で狩口の病室に向かった。
「狩口、入るぞ」(藤野)
「あ、藤野やっほー」(狩口)
少しだけ体調が戻ったのか顔色はよく力なく笑うようになっていた。
「狩口、俺はお前が今1人で暮らせる状況じゃないことを医者から聞いた。それで俺の両親に話をして一緒に暮らせないか相談したんだ。勝手なことをしてごめん。」(藤野)
「そっか、藤野は相変わらずよく見てるね。昔と変わらない…」(狩口)
「え?」(藤野)
「ああ、なんでもないよ。それで、両親が来てるってことなのかな?ずっと立たせてちゃ悪いから早く入ってもらって。」(狩口)
それで俺は外に待機してて2人を呼びに行った。
もちろん、一人暮らしさせてもいいが、今の心理状況だとそれはかなり厳しい。宮市のところは親が少し厳しいからやめといたほうがいいって言っていた。つまり、必然的に俺が自分の親に説得しなければならない。狩口を守るにはそれしかなかった。
親と話をするためのここまで緊張したのはいつぶりだろう。
「お母さん、お父さん、話があるんだ」(藤野)
「なんだ?」(藤野父)
怖い、逃げ出してしまいたい。でも、狩口は逃げなかった。あの母親から。
「俺の同級生に両親をなくして今、入院中のやつがいるんだ。この前ニュースになってた親族惨殺事件の唯一の生き残りだ。それで、今あいつを助けてくれる家がどこにもなくて、でも、あいつは1人で暮らせるような状況じゃないんだ。だから、俺の、この家に住まわせてあげられないかな?」(藤野)
「無理だ。」(藤野父)
え?即答されるとは思わなかった。父はシステムエンジニアとして病院の患者をよく見ているはずだから救いの手を差し伸べてくれると心の何処かで思っていた。
「な、なんでよ。住まわせてあげてくれるなら、俺だってちゃんと家の子と手伝うしそれ相応の条件には耐えるからさ。」(藤野)
「だめだ。悠太は今、彼女のことを考えてるようで自分のことしか考えてない。彼女が安心して暮らしていないと自分が落ち着けないからだろう?そもそも、同い年の異性がひとつ屋根の下で暮らすということは周りからどう思われるかも考えないとだ。そこまで考えたか?」(藤野父)
それを言われて、自分がどこまで愚かだったかようやく気づけた。
「考えてはなかった。でも、なら、彼女に会ってくれないか?そして今のあいつを見てほしい。その後に彼女と暮らすことを許可してくれないのなら、俺がこの家を出て借金抱えてでもどんなに現実的じゃなくても守ります。」(藤野)
「そこまで言うのなら会ってみませんか?悠太がここまで必死になるんだから。好きなんでしょうから。」(藤野母)
すると父は諦めたかのように「わかった」と言ってくれた。
「じゃあ、明日の学校終わりに迎えに行くから3人で行きましょうか。にしても、親子ねえ…あなた達2人は」(藤野母)
お母さんのその言葉の意味は理解できなかったが、会ってくれると言ってくれと嬉しかった。
翌日、帰りのHRが終わると宮市にお願いして俺は部活を休ませてもらうことにした。
玄関を出るとお母さんとお父さんが車でもう来ていた。
「ごめん、おまたせ。」(藤野)
「いいわよ、それじゃあ行きましょうか。」(藤野母)
そう言ってお母さんは車を出した。
「お前、ちゃんと彼女に今日来ることを伝えてるんだろうな?」(藤野父)
「いや、伝えてない。でも、彼女の担当医には言ってあるから大丈夫だと思う。」(藤野)
「そうか。」(藤野父)
病院に着くと、俺が受付を済ませて3人で担当医と話すことになった。
「……ということがあり、今の狩口さんの状態では1人で生活することは不可能です。ですから、私からも同居していただきたいです。無理なお願いをしているのは重々承知ですが…」(担当医)
「頭を上げてください。彼女に会ってみないと無責任に「わかりました」とも言えませんから。」(藤野父)
担当医がお父さんに狩口の状態のついて説明をしたあと、俺たちは4人で狩口の病室に向かった。
「狩口、入るぞ」(藤野)
「あ、藤野やっほー」(狩口)
少しだけ体調が戻ったのか顔色はよく力なく笑うようになっていた。
「狩口、俺はお前が今1人で暮らせる状況じゃないことを医者から聞いた。それで俺の両親に話をして一緒に暮らせないか相談したんだ。勝手なことをしてごめん。」(藤野)
「そっか、藤野は相変わらずよく見てるね。昔と変わらない…」(狩口)
「え?」(藤野)
「ああ、なんでもないよ。それで、両親が来てるってことなのかな?ずっと立たせてちゃ悪いから早く入ってもらって。」(狩口)
それで俺は外に待機してて2人を呼びに行った。