現し世での祝言を終え、金雀児に連れられて隔り世へ渡れば、私はとてもとても大きな屋敷に案内されたの!
ここが全部私のものになるのね!なんてステキなの!?

そして宴会場ではさまざまな豪華な食事が用意されている!

そして奥にうつるひときわ豪華な席!きっとあそこが私の席だわ!金雀児の配下の鬼たちが揃っている中、まっすぐに宴会場を進もうとすれば。

「待て!待つんだ、白梅!私たちの席はこちらだ!」
ものすごい形相の金雀児に腕を掴まれ、一番端の席に座らされる。

は?何で。何で私がこんな席に?

「金雀児!私の席はあそこでしょう!?」
そう叫んで一番奥の席を指差せば、金雀児の部下の鬼たちが一斉に私を見る。うふふ。そうでしょう?私にはあの席がふさわしい!よく分かっているじゃない?
この美しい私にふさわしいのは……

「やめるんだ!白梅!」
しかし金雀児は私に怒鳴るようにそう告げる。
「うぅ、こわぁい。なんで白梅を怒鳴るのぉ……」
ぐすんっと目に指を添えれば、すかさず金雀児が私を慰めてくれる。ふん、なら今すぐに私をあの席に……!

そう、思った時だった。

襖が開かれて、とても美しい鬼が入ってきたのだ。あの鬼……!欲しいわ!

でも、不思議。どこかで見たような……。あぁ、もしかして、これが運命と言うものなのかしら!神さまが運命の相手だと知らせてくれているのね!

そしてその美しい鬼は、一番奥の席についた。あぁ、私に侍ってくれるってことね!?なんて最高な宴なのかしら!そろそろ現し世に飽きてきた頃だし……次は隔り世ですべての鬼を統べるのよ。だだて鬼って美男揃いなの!

……うん?女鬼?知らないわ。私よりも美しい女は、鬼も、人間も、いらないの。

例えば……金雀児の部下にも女鬼がいるようだけど。まずはあの女鬼を始末するわ。いらないもの。でもまず一番優先すべきことは……私のために用意されたあの鬼だわっ!

私は立ち上がり、早速その鬼のもとへ行こうとした。

「やめろ!白梅!大人しくしていてくれ!」
「ちょっ!?金雀児ったら!私のための宴なのだから、私の好きにしていいはずでしょ!?」

「ち、違う……違うんだ、白梅!ここでそんなことをしたら……っ」

「なんでよおぉぉっ!!なんでよおぉぉっ!!?この宴は私のためのもの!この鬼どもも、この屋敷もみんなみんな私のものになるのにいぃぃっ!!?」

「し、白梅……?何を言って……」
金雀児が、私を何か恐ろしいものを見るような目で見つめてくる。何よ……何よ何よ……!

あの目、どこかで見たような。
農夫がいなくなった、荒れ果てた田んぼ。小高い丘の上から見下ろし、そして命令した。木の枝から吊り下がった縄。使えなくなったそれは、自ら首をくくり……

今の、何……?違う、私はこんなの知らない!
とにかく、この広いお屋敷も、鬼どもも、全部全部、金雀児の花嫁となった私のものなのだから!

「そうね、まず女はいらないわ!あんたはいらない!」
私が黒い角の女鬼を指差せば、女鬼は驚いて私を見上げる。あははははっ!自分が不要とされるとは思ってもみなかった感じね。いいざまだわ。私よりも美しい女はいらないの。

「ねぇ、金雀児!私はあの鬼が欲しいの!」
奥の席に座る鬼を指差す。

「な……何をしているんだ……!!」
金雀児が強引に手首を下ろさせる。

「痛い……っ!痛いわ金雀児……っ!何でこんなことを……っ!」
「何と言う不敬なことを!申し訳……っ」
金雀児が何故か部下の鬼に謝ろうとしてる?
あれは私のもの!つまりは所有物よ!?

「何してるのよ、金雀児!金雀児は現し世でも隔り世でも、一番偉い頭領なんでしょ!?家来の鬼くらい、顎で使いなさいよ!」
堂々と告げた私に、金雀児が呆然としている。うふふ、私の美しさと凛とした迫力にぐうの音もでないのね?分かるわ……。私の美しさにあなたが惚れているのは、分かっているのよ。

「ふっ、ふふ、なんとまぁ」
「長を顎で使うだと?」
「お前はいつからそんなに偉くなったんだ?」
「現し世でも、隔り世でも一番……ねぇ?」
その時、金雀児の家来どもが嘲笑しだす。ちょ……っ、何で、嗤われてるのよ……!

「金雀児!!あんたのせいよ!あんたが家来どもから私までこんな惨めな思いを……っ!もう知らないわ!」
私は怒って宴会場を出た。でも知ってるの。金雀児はすぐに私を追いかけてきて謝罪するのよ。そして私を嘲笑った家来どもに仕置きをして……あの奥にいた鬼には、私にたんまりと奉仕させるのよ……!!

そんな時だった。憎き、仇敵……鴉木アリスを見付けたのは。

※※※

何で……っ!何でここに!?
怒りに震える私は、早速アリスに積めよった。

「何であんたがここにいるのよ!」
だけど相変わらず私の言うとおりにならない!思いどおりにならない!

しかし、その時だった。
「こんなところにいたのか、白梅」
やっぱひ追いかけてきてくれた金雀児!あぁ、金雀児!やっぱりあなたは最高だわ!いつだって私を追いかけてきてくれるの!

「アリスが……っ!アリスがこんなところにまで追ってきたの!また私を虐めるためだわ……っ!今もまた、私の頬をぶって、手首を強く掴んで締め付けて……っ!」
そう訴えたら、金雀児はここは隔り世だから、もうアリスを煮るなり焼くなり好きにできるとアリスをその手で始末してくれようとしたの!

でもアリスのやつ……イグリに命じて御守りを作らせていたのよ。あぁ、ムカつく!!

だけどそれは金雀児の攻撃で霧散した……。次がアリスの最期だあぁぁぁぁっ!!さぁ、殺せ!アリスを……あの女をおぉぉぉぉ――――――――っ!!

だけどその瞬間、訳も分からず爆風によりぶっ飛ばされて、壁に叩きつけられた。

「あ……ぐ……」
何で、私は……私は……いつだって一番なのに……。

【愛されたいの】

誰……?

【誰も、私を愛してはくれないの。だから、愛して、愛して、愛して。あなたも、私を愛してくれるでしょう?】

【そんな力を使って得た愛なんて、愛じゃない】

え……??

「……めっ!白梅!」
目を覚ませば、金雀児が私を腕に抱いていた。