久しぶりに実家に泊まり、朝から働かされてしまった。
「人足りてないんじゃないの?」
よくこれまでやってたね! 俗に言うブラック企業なの、うちって!?
「仕方がないだろう。人気になりすぎたんだから。ほら、手を動かしな」
動かしているよ! 誰よりも!
今日は特に人が多いせいか、昼まで休む暇もない。やっとお昼を食べ、また夕方まで休む暇なく働かされた。
夜は新しく出来た従業員の家で休み、次の日は朝の仕事を手伝ってから山の家に帰ることにした。わたしにもやることがあるからね。
「店の体制、何とかしないといけないわね」
リュードさんたちはまだ買い物があると言うので一人で帰った。
ティナたちは山に入っているのか姿が見えない。なので、民宿に行ってレンラさんにローザ亭のことを話した。
「そんなに人気になっていましたか」
「人は増やしたほうがいいですよ。ここでお母ちゃんが倒れたら仕切る人がいなくなりますからね。店は頓挫します」
「キャロルさんが言うなら速やかに検討する必要がありますね。明日にでも山を下りてみます」
こういうところが優秀な所以よね。問題が出たらすぐ行動出来るんだから。
ローザ亭に関わった者ではあるけど、経営に口出す立場ではない。まあ、横から口は出しているけどね。
夕食の下拵えをしたら作業小屋に向かってマッチ作りや新しい鞄に入れる編み籠作りを開始した。
夕方になりティナたちが帰って来た。狼を担いで。
「また狼がいたんだね」
「たぶん、はぐれだと思う。他には見えなかったから」
一匹でいたところを狩られるとか可哀想だこと。まあ、狩ってしまったのなら美味しく食べてあげましょう。
ここには道具と調味料、水が揃っているので捌くのも楽でいいわ。民宿の料理人さんも手伝ってくれたからその日で捌くことが出来たわ。
食べるには二日三日掛かるので食べるのは先。今日は熟成させた猪の肉で夕食を作った。
次の日にはリュードさんたちが帰って来た。
「必要なものは買えましたか?」
「ああ。初めて何も考えず欲しいものを買ったよ」
魔法の鞄がないと持ち歩ける量は決まってくるからね。厳選して買う必要があるか。
「明日にでもここを発つよ」
夕食の席でリュードさんがそんなことを口にした。
「そう言えば、依頼の途中でしたっけね」
青実草を採取しに来てたんだったわ。すっかり忘れていたよ。
「じゃあ、明日のお弁当を作りますね」
魔法の鞄とは別にここに泊まるお金はもらっている。明日のお弁当くらい作らないと罰が当たるってものでしょう。
……一日銀貨一枚とか高位冒険者は違うわよね……。
「それは助かる。パンを多めに頼むよ」
そうなると今から作る必要があるわね。
夕食が終われば仕込みを始め、朝はちょっと早く起きて窯と竈をフルに使ってパンを焼いた。
焼き上がったものは木の皮で編んですぐに魔法の鞄に入れてもらった。
朝を食べたらサナリクスの面々が旅立って行った。
「あっさりしたものね」
サナリクスの面々がいる間、ずっと黙っていたルルが口を開いた。
「冒険者だからね。風の吹くままなんでしょう」
わたしたちもあんな風にならないとね。いちいち別れを惜しんでいたらどこにも行けなくなっちゃうわ。
「キャロ、また冒険に行く?」
「鞄の材料が来ると思うから待っているわ。ティナはルルと山葡萄を積んで来てよ」
ルルに乗れば山葡萄が生っているところまですぐだし、ティナ用の鞄があるのでたくさん摘み放題。わたしが留守番でも問題ないでしょうよ。
「たくさん採って来てね。ジャムも作りたいから」
砂糖の消費量が増えたからかバイバナル商会もたくさん買い付けてくれている。その循環で砂糖が少し安くなったのよね。この世界、どこで砂糖を作って、どこから運ばれて来るのかしらね?
「わかった」
ティナが出掛けてしばらくすると、バイバナル商会の馬車がやって来た。
民宿の荷物もありから三台でやって来て、受け取りに民宿に向かった。
「ご苦労様です」
「ああ、ご苦労さんな」
三日に一度の割合でやって来るから御者の人ともすっかり馴染みになったものだわ。
朝に出て昼に着くので、わたしがいるときはサンドイッチを差し入れする。たまに個人的に買い物をお願いするからね。
「小屋まで運んでやるよ」
思った以上に荷物があったので御者さんたちが運んでくれた。ありがとうございます。
御者さんたちは明るいうちに帰らなくちゃならないので、昼を食べたらすぐに帰って行った。
「さて。鞄を作りますか」
作業小屋に籠り、鞄──リュックサックを作り始めた。
山葡萄採りや山菜採りはティナとルルに任せ、わたしはリュックサック作りに集中。五日くらいで一つを完成させた。
まずはティナの体に合わせて調整し、アイテムバッグ化の付与魔法を施した。
マッチで訓練したお陰で気絶することもない。わたしの魔力、上昇してるの? それとも熟練度? 数値化されてないからわかんないわね。
「斧がリュックサックの横に付けられるのがいいね」
「バランス悪くない?」
「大丈夫。あ、反対側に山刀を付けて。山歩きだと槍のほうがいいから」
まあ、ティナは体が柔らかいからリュックサックに付けていてもすぐ抜けるでしょうよ。
「村に行ってマルケルさんに見せて来てよ。あと、布を買って来てちょうだい」
「わかった」
さて。次はわたしのリュックサックを作りますか。
「人足りてないんじゃないの?」
よくこれまでやってたね! 俗に言うブラック企業なの、うちって!?
「仕方がないだろう。人気になりすぎたんだから。ほら、手を動かしな」
動かしているよ! 誰よりも!
今日は特に人が多いせいか、昼まで休む暇もない。やっとお昼を食べ、また夕方まで休む暇なく働かされた。
夜は新しく出来た従業員の家で休み、次の日は朝の仕事を手伝ってから山の家に帰ることにした。わたしにもやることがあるからね。
「店の体制、何とかしないといけないわね」
リュードさんたちはまだ買い物があると言うので一人で帰った。
ティナたちは山に入っているのか姿が見えない。なので、民宿に行ってレンラさんにローザ亭のことを話した。
「そんなに人気になっていましたか」
「人は増やしたほうがいいですよ。ここでお母ちゃんが倒れたら仕切る人がいなくなりますからね。店は頓挫します」
「キャロルさんが言うなら速やかに検討する必要がありますね。明日にでも山を下りてみます」
こういうところが優秀な所以よね。問題が出たらすぐ行動出来るんだから。
ローザ亭に関わった者ではあるけど、経営に口出す立場ではない。まあ、横から口は出しているけどね。
夕食の下拵えをしたら作業小屋に向かってマッチ作りや新しい鞄に入れる編み籠作りを開始した。
夕方になりティナたちが帰って来た。狼を担いで。
「また狼がいたんだね」
「たぶん、はぐれだと思う。他には見えなかったから」
一匹でいたところを狩られるとか可哀想だこと。まあ、狩ってしまったのなら美味しく食べてあげましょう。
ここには道具と調味料、水が揃っているので捌くのも楽でいいわ。民宿の料理人さんも手伝ってくれたからその日で捌くことが出来たわ。
食べるには二日三日掛かるので食べるのは先。今日は熟成させた猪の肉で夕食を作った。
次の日にはリュードさんたちが帰って来た。
「必要なものは買えましたか?」
「ああ。初めて何も考えず欲しいものを買ったよ」
魔法の鞄がないと持ち歩ける量は決まってくるからね。厳選して買う必要があるか。
「明日にでもここを発つよ」
夕食の席でリュードさんがそんなことを口にした。
「そう言えば、依頼の途中でしたっけね」
青実草を採取しに来てたんだったわ。すっかり忘れていたよ。
「じゃあ、明日のお弁当を作りますね」
魔法の鞄とは別にここに泊まるお金はもらっている。明日のお弁当くらい作らないと罰が当たるってものでしょう。
……一日銀貨一枚とか高位冒険者は違うわよね……。
「それは助かる。パンを多めに頼むよ」
そうなると今から作る必要があるわね。
夕食が終われば仕込みを始め、朝はちょっと早く起きて窯と竈をフルに使ってパンを焼いた。
焼き上がったものは木の皮で編んですぐに魔法の鞄に入れてもらった。
朝を食べたらサナリクスの面々が旅立って行った。
「あっさりしたものね」
サナリクスの面々がいる間、ずっと黙っていたルルが口を開いた。
「冒険者だからね。風の吹くままなんでしょう」
わたしたちもあんな風にならないとね。いちいち別れを惜しんでいたらどこにも行けなくなっちゃうわ。
「キャロ、また冒険に行く?」
「鞄の材料が来ると思うから待っているわ。ティナはルルと山葡萄を積んで来てよ」
ルルに乗れば山葡萄が生っているところまですぐだし、ティナ用の鞄があるのでたくさん摘み放題。わたしが留守番でも問題ないでしょうよ。
「たくさん採って来てね。ジャムも作りたいから」
砂糖の消費量が増えたからかバイバナル商会もたくさん買い付けてくれている。その循環で砂糖が少し安くなったのよね。この世界、どこで砂糖を作って、どこから運ばれて来るのかしらね?
「わかった」
ティナが出掛けてしばらくすると、バイバナル商会の馬車がやって来た。
民宿の荷物もありから三台でやって来て、受け取りに民宿に向かった。
「ご苦労様です」
「ああ、ご苦労さんな」
三日に一度の割合でやって来るから御者の人ともすっかり馴染みになったものだわ。
朝に出て昼に着くので、わたしがいるときはサンドイッチを差し入れする。たまに個人的に買い物をお願いするからね。
「小屋まで運んでやるよ」
思った以上に荷物があったので御者さんたちが運んでくれた。ありがとうございます。
御者さんたちは明るいうちに帰らなくちゃならないので、昼を食べたらすぐに帰って行った。
「さて。鞄を作りますか」
作業小屋に籠り、鞄──リュックサックを作り始めた。
山葡萄採りや山菜採りはティナとルルに任せ、わたしはリュックサック作りに集中。五日くらいで一つを完成させた。
まずはティナの体に合わせて調整し、アイテムバッグ化の付与魔法を施した。
マッチで訓練したお陰で気絶することもない。わたしの魔力、上昇してるの? それとも熟練度? 数値化されてないからわかんないわね。
「斧がリュックサックの横に付けられるのがいいね」
「バランス悪くない?」
「大丈夫。あ、反対側に山刀を付けて。山歩きだと槍のほうがいいから」
まあ、ティナは体が柔らかいからリュックサックに付けていてもすぐ抜けるでしょうよ。
「村に行ってマルケルさんに見せて来てよ。あと、布を買って来てちょうだい」
「わかった」
さて。次はわたしのリュックサックを作りますか。