「そろそろ冒険者としての修業を始めようと思うんだけど、どうかな?」
民宿も形になり、運営はバイバナル商会が行い、料理長さんとミーカさんは帰ってしまった。
わたしたちが手伝うこともないので山に入って己を鍛えようとティナに相談してみた。
「いいんじゃない。そろそろ秋の山菜が生えてくる頃だし、またマコモがあるかもよ」
あーマコモね。あれは美味しかったっけ。
「ミソとショーユは出来たの?」
「味噌は出来たけど、醤油は無理。諦めたわ」
マコモに醤油を掛けて食べたかったけど、上手く行かないから諦めました。マー油や塩を掛けても美味しいしね。
「食を求めたいけど、このままやっていたら料理人にさせられちゃいそうだしね、料理は民宿に任せるわ。あっちのほうが設備も経験も上なんだしね」
食べたいものはあちらにお願いすればいいでしょう。狩ったものや採ったものを差し出せばもらえると思うしね。
「ボクはキャロが作る料理が好きだな」
「わたしも~」
やだ。嬉しいこと言ってくれるじゃない。野営のとき美味しいものを作れるように調味料類は持って行くとしましょうか。
「冒険に困らないよう山菜や獣を捕獲しましょうか」
体力増強しながら食材の確保。冬もやって来るしね。
「それならウルカを採りに行こうか。山の上なら生っているかも」
ウルカは木の実の種で、それを潰すと香辛料になるヤツだ。胡椒みたいなものかな? 猪の肉に付けると美味しくなるのだ。
「まず三日くらいにする?」
「それでいいと思う」
じゃあ、三日分のパンと下着を持って行かないとね。
冒険しているときはお風呂に入れないけど、下着だけは毎日着替えたいわ。
準備に一日かけ、夜、民宿の代表であるレンラさんに伝えに行った。
バイバナル商会でもかなり高い地位にいたはずのレンラさん。なぜか民宿の代表となった。そこまで遣り甲斐のある仕事なんだろうか? まあ、本人はやる気に満ちているので口にはしないけどさ。
「そうですか。気を付けて、無事帰って来てくださいね」
「はい。ありがとうございます。民宿はどうです? 食材を積んだ馬車が来たみたいですけど」
「裕福な方々には広まっていて、三十日先まで予約が埋まりましたよ」
「そんなにですか!?」
どんだけ裕福な方々がいるのよ? 結構な値段を設定してたのに!
「ええ。日帰り宿屋のことが広まり、裕福な方々もそういう場が欲しかったようです」
そんなに娯楽に飢えてんのかしら? この国、そんなに平和なの? それはそれでいいけど、冒険者としては仕事がないんじゃないの?
「ゴルフのほうも男性陣に広まり、やってみたいとおっしゃる方が多くいるそうです」
「だから木を伐っていたんですね」
陶芸をやるのかと思ってたわ。
「山が剥げない程度にお願いしますね。禿げ山にしすぎると山が崩れちゃったりしますから」
「禿げ山になると不味いのですか?」
「木はたくさんの水を吸収します。大雨が降ったらその水は地面に染み込むしかありません。溢れた水は地盤を崩しやがて崩壊します。被害を生まないためにも木を伐りすぎないことです」
「……博識ですね……」
「そうですか? 山で暮らしている人なら経験則で知っているんじゃないですか?」
平野で暮らす人は知らなくても山で暮らしている人なら知っている常識でしょうに。
「まあ、山で暮らす人に尋ねてみるといいですよ。自然の山を人工的にするには山に詳しい人がいたほうがいいですからね」
「ええ、そうします」
「では、明日の朝、早くでますね。家は開けておくんで好きに使ってください」
わたしたちの部屋はさすがに鍵を掛けるけど、他なら自由に使ってくれて構わないわ。
「ありがとうございます。マッチはいつもの棚ですか?」
「はい。物置小屋にも置いてあるので好きなだけ持って行ってください」
今日の夕食をいただいて帰り、食べたらすぐに就寝した。
朝になり、この日のために買っておいた革の鎧と山刀を装備し、アイテムバッグ化させたリュックを背負った。
外に出たらルルがわたしのリュックの上に飛び乗った。
「わたしも行くわ」
「いいの? 今回は結界は使わないし、なるべく煮るものにするよ」
さすがに快適に慣れすぎた。冒険に出るなら質素な食事にも慣れおかないとね。
……ま、まあ、だからって不味いのは食べたくないから可能な限り美味しいものは作るけどさ……。
「構わないわ。あなたたちといたほうが気が楽だしね」
いつも気を楽にしている姿しか見てないんだけど。
「仕方がないわね。でも、わたしたちの仲間として働いてもらうからね」
わたしとティナは姉妹みたいなものだけど、冒険に出るなら仲間として信頼を築かなくちゃならない。お互いを支え合い、役割を決めてともに歩む仲間としてね。
「任せなさい。食べられるものか食べれないものかの見極めは得意だから」
悪食の能力の一つらしいわ。悪食も何でも食べられるってわけじゃないみたいよ。
「よし。いざ冒険の修業へ行くわよ!」
まずはティナの案内でウルカが生る山へと向かって出発した。
民宿も形になり、運営はバイバナル商会が行い、料理長さんとミーカさんは帰ってしまった。
わたしたちが手伝うこともないので山に入って己を鍛えようとティナに相談してみた。
「いいんじゃない。そろそろ秋の山菜が生えてくる頃だし、またマコモがあるかもよ」
あーマコモね。あれは美味しかったっけ。
「ミソとショーユは出来たの?」
「味噌は出来たけど、醤油は無理。諦めたわ」
マコモに醤油を掛けて食べたかったけど、上手く行かないから諦めました。マー油や塩を掛けても美味しいしね。
「食を求めたいけど、このままやっていたら料理人にさせられちゃいそうだしね、料理は民宿に任せるわ。あっちのほうが設備も経験も上なんだしね」
食べたいものはあちらにお願いすればいいでしょう。狩ったものや採ったものを差し出せばもらえると思うしね。
「ボクはキャロが作る料理が好きだな」
「わたしも~」
やだ。嬉しいこと言ってくれるじゃない。野営のとき美味しいものを作れるように調味料類は持って行くとしましょうか。
「冒険に困らないよう山菜や獣を捕獲しましょうか」
体力増強しながら食材の確保。冬もやって来るしね。
「それならウルカを採りに行こうか。山の上なら生っているかも」
ウルカは木の実の種で、それを潰すと香辛料になるヤツだ。胡椒みたいなものかな? 猪の肉に付けると美味しくなるのだ。
「まず三日くらいにする?」
「それでいいと思う」
じゃあ、三日分のパンと下着を持って行かないとね。
冒険しているときはお風呂に入れないけど、下着だけは毎日着替えたいわ。
準備に一日かけ、夜、民宿の代表であるレンラさんに伝えに行った。
バイバナル商会でもかなり高い地位にいたはずのレンラさん。なぜか民宿の代表となった。そこまで遣り甲斐のある仕事なんだろうか? まあ、本人はやる気に満ちているので口にはしないけどさ。
「そうですか。気を付けて、無事帰って来てくださいね」
「はい。ありがとうございます。民宿はどうです? 食材を積んだ馬車が来たみたいですけど」
「裕福な方々には広まっていて、三十日先まで予約が埋まりましたよ」
「そんなにですか!?」
どんだけ裕福な方々がいるのよ? 結構な値段を設定してたのに!
「ええ。日帰り宿屋のことが広まり、裕福な方々もそういう場が欲しかったようです」
そんなに娯楽に飢えてんのかしら? この国、そんなに平和なの? それはそれでいいけど、冒険者としては仕事がないんじゃないの?
「ゴルフのほうも男性陣に広まり、やってみたいとおっしゃる方が多くいるそうです」
「だから木を伐っていたんですね」
陶芸をやるのかと思ってたわ。
「山が剥げない程度にお願いしますね。禿げ山にしすぎると山が崩れちゃったりしますから」
「禿げ山になると不味いのですか?」
「木はたくさんの水を吸収します。大雨が降ったらその水は地面に染み込むしかありません。溢れた水は地盤を崩しやがて崩壊します。被害を生まないためにも木を伐りすぎないことです」
「……博識ですね……」
「そうですか? 山で暮らしている人なら経験則で知っているんじゃないですか?」
平野で暮らす人は知らなくても山で暮らしている人なら知っている常識でしょうに。
「まあ、山で暮らす人に尋ねてみるといいですよ。自然の山を人工的にするには山に詳しい人がいたほうがいいですからね」
「ええ、そうします」
「では、明日の朝、早くでますね。家は開けておくんで好きに使ってください」
わたしたちの部屋はさすがに鍵を掛けるけど、他なら自由に使ってくれて構わないわ。
「ありがとうございます。マッチはいつもの棚ですか?」
「はい。物置小屋にも置いてあるので好きなだけ持って行ってください」
今日の夕食をいただいて帰り、食べたらすぐに就寝した。
朝になり、この日のために買っておいた革の鎧と山刀を装備し、アイテムバッグ化させたリュックを背負った。
外に出たらルルがわたしのリュックの上に飛び乗った。
「わたしも行くわ」
「いいの? 今回は結界は使わないし、なるべく煮るものにするよ」
さすがに快適に慣れすぎた。冒険に出るなら質素な食事にも慣れおかないとね。
……ま、まあ、だからって不味いのは食べたくないから可能な限り美味しいものは作るけどさ……。
「構わないわ。あなたたちといたほうが気が楽だしね」
いつも気を楽にしている姿しか見てないんだけど。
「仕方がないわね。でも、わたしたちの仲間として働いてもらうからね」
わたしとティナは姉妹みたいなものだけど、冒険に出るなら仲間として信頼を築かなくちゃならない。お互いを支え合い、役割を決めてともに歩む仲間としてね。
「任せなさい。食べられるものか食べれないものかの見極めは得意だから」
悪食の能力の一つらしいわ。悪食も何でも食べられるってわけじゃないみたいよ。
「よし。いざ冒険の修業へ行くわよ!」
まずはティナの案内でウルカが生る山へと向かって出発した。