お嬢様の朝は意外と早かった。
わたしたちはいつも太陽が昇るくらいに、タワシが鳴くのでそれで起きる。
お城ではタワシがいないので起きれるかなと心配したけど、朝になると下女さんが鐘を鳴らして回るので全然起きられたわ……。
鐘で起こされたらすぐに起きて身だしなみを整える。
そしたらお嬢様の側仕え(二交代制で常に二人は付いているそうよ)のところに向かった。
夜のことを側仕えの方から聞いて、待合室でお嬢様が起きる時間まで待機する。
マリー様も起きて来て、一緒にお嬢様を起こしに向かった。
お嬢様の世話は側仕えの方がやってくれるので、わたしたちは壁の側で整うのを待つ。
顔を洗い歯を磨く。貴族でもその辺は同じなのね。歯ブラシは布を巻いたヤツと爪楊枝みたいなので磨く。貴族の世界でも歯ブラシは発明されてないようだ。
洗顔が終われば今日着る服に着替え、テラスに出て体を解したら縄跳びを始めた。
……ローダルさん、もう縄跳びを売り出したんだ……。
ただ、まだ上手く跳べないようで、三回くらい続けるのがやっと。それでも十分くらい続けた。
軽い運動でも息を切らしてしまうとは、お嬢様ってそんなに動かないものなね。
今日はお嬢様の一日を知るための日なので余計なことは言わない。十五分くらいで終わったらお湯が運ばれてきて側仕えの方が体を拭いた。
……お風呂はないんだ……。
伯爵家のお嬢様となると自分では洗わないようで、最初から最後まで側仕えの方が行った。
体を清めたらまたお着替え。事ある毎に着替えるとか大変よね。無駄なんだことばかりたわ。
次は朝食かと思ったらお茶だった。水分補給ってこと?
わたしたちも同じテーブルに着いてハーブティーっぽいものを飲む。
「不思議な味ですね」
余計なこと言っちゃダメかと思ったけど、初めて口にする味に思わず言葉にしてしまった。
「紅茶を飲むのは初めてなの?」
「紅茶? 紅茶ってこんな味をしていたんですね」
漫画かアニメな世界なようで味まで同じには出来なかったようね。まるでコーヒーだわ。
「お嬢様はこれが好きなんですか?」
「あまり好きではないわ。苦いし」
「砂糖と羊乳を入れてはどうでしょうか? まだ飲めるものになると思います」
これからわたしたちも飲まなくちゃならないのかと思うと黙っていられないわ。
「美味しくはならないの?」
「配分さえわかれば美味しくなると思います」
砂糖も羊乳も飲んだことはないけど、手に入るものではある。バイバナル商会であるのは見たわ。
「マリー。用意してくれる? わたしも美味しいものが飲みたいわ」
「畏まりました。キャロル。次からあなたがお嬢様にお茶を用意しなさい」
わたしが? と言いかけて無理矢理飲み込んだ。
「畏まりました」
としか言いようがないんだからね。
今日は苦いだけの紅茶を飲み、朝食の時間になったらお嬢様は食堂に向かって行った。
「ふー」
思わず息を吐いてしまった。
「余計な口を出して申し訳ありませんでした」
側仕えの方も残ったので、余計な口を出したことに謝罪した。恨まれても嫌だしね。
「いいのよ。余ったものはわたしたちが飲まなくちゃならないからね。美味しくなるならそれに越したことはないわ。あの紅茶、本当に苦いから」
側仕えの方もあれには辟易していたそうだ。でも、貴族としての嗜みとかで飲まなくちゃならないとか。でも、お嬢様は嫌いなそうで、その余りは側仕えの方々で処理しなくちゃならないんだってさ。もったいないってことでね。
……絶対、この世界の元になっているのは日本人だわ……。
「さあ、わたしたちも食事を済ませるわよ」
お嬢様が朝食している間、側仕えの方が一人残り、もう一人の方と朝食を摂るそうだ。
昨日でわかったけど、やはりお城の食事は質素なもの。パンと野菜スープが基本で、朝はチーズが付いていた。せめて玉子焼きを出してもらいたいものだわ。
お嬢様たち伯爵一家の食事は長いそうなので、朝食はゆっくり食べられるそうだ。
体感で四十分。また歯を磨く。
「それ、何なの?」
歯ブラシで歯を磨いていたら側仕えの方に歯ブラシのことを訊かれたので教えた。別に秘密でもないし、秘密で使うこともできないからね。
「どこで買ったの?」
「自分で作りました。わたし、手先が器用なので」
「これ、もうないの? あれば売って欲しいのだけれど」
「代えが一本あるのでいいですよ」
猪の毛はまだあるし、木材も鞄に入れてきた。作るのは難しくないわ。
「銅貨五枚でいいですよ」
余った材料で作ったものだけど、屋台でお城で働く人の給料がどのくらいか大体は把握できた。側仕えの給料なら銅貨五枚くらいは余裕で出せるはずだわ。
「そんな値段でいいの?」
「家に帰れば予備がありますので」
ずっとお城に缶詰めってわけじゃない。七日に一回は家に帰られるそうよ。あと、何か行事があってお嬢様がいないときも休みになるそうだ。
歯ブラシの使い方を教え、すっきりしたようで、また売って欲しいとお願いされた。
了解し、お金は後で、ってことで、お嬢様の部屋に向かった。
わたしたちはいつも太陽が昇るくらいに、タワシが鳴くのでそれで起きる。
お城ではタワシがいないので起きれるかなと心配したけど、朝になると下女さんが鐘を鳴らして回るので全然起きられたわ……。
鐘で起こされたらすぐに起きて身だしなみを整える。
そしたらお嬢様の側仕え(二交代制で常に二人は付いているそうよ)のところに向かった。
夜のことを側仕えの方から聞いて、待合室でお嬢様が起きる時間まで待機する。
マリー様も起きて来て、一緒にお嬢様を起こしに向かった。
お嬢様の世話は側仕えの方がやってくれるので、わたしたちは壁の側で整うのを待つ。
顔を洗い歯を磨く。貴族でもその辺は同じなのね。歯ブラシは布を巻いたヤツと爪楊枝みたいなので磨く。貴族の世界でも歯ブラシは発明されてないようだ。
洗顔が終われば今日着る服に着替え、テラスに出て体を解したら縄跳びを始めた。
……ローダルさん、もう縄跳びを売り出したんだ……。
ただ、まだ上手く跳べないようで、三回くらい続けるのがやっと。それでも十分くらい続けた。
軽い運動でも息を切らしてしまうとは、お嬢様ってそんなに動かないものなね。
今日はお嬢様の一日を知るための日なので余計なことは言わない。十五分くらいで終わったらお湯が運ばれてきて側仕えの方が体を拭いた。
……お風呂はないんだ……。
伯爵家のお嬢様となると自分では洗わないようで、最初から最後まで側仕えの方が行った。
体を清めたらまたお着替え。事ある毎に着替えるとか大変よね。無駄なんだことばかりたわ。
次は朝食かと思ったらお茶だった。水分補給ってこと?
わたしたちも同じテーブルに着いてハーブティーっぽいものを飲む。
「不思議な味ですね」
余計なこと言っちゃダメかと思ったけど、初めて口にする味に思わず言葉にしてしまった。
「紅茶を飲むのは初めてなの?」
「紅茶? 紅茶ってこんな味をしていたんですね」
漫画かアニメな世界なようで味まで同じには出来なかったようね。まるでコーヒーだわ。
「お嬢様はこれが好きなんですか?」
「あまり好きではないわ。苦いし」
「砂糖と羊乳を入れてはどうでしょうか? まだ飲めるものになると思います」
これからわたしたちも飲まなくちゃならないのかと思うと黙っていられないわ。
「美味しくはならないの?」
「配分さえわかれば美味しくなると思います」
砂糖も羊乳も飲んだことはないけど、手に入るものではある。バイバナル商会であるのは見たわ。
「マリー。用意してくれる? わたしも美味しいものが飲みたいわ」
「畏まりました。キャロル。次からあなたがお嬢様にお茶を用意しなさい」
わたしが? と言いかけて無理矢理飲み込んだ。
「畏まりました」
としか言いようがないんだからね。
今日は苦いだけの紅茶を飲み、朝食の時間になったらお嬢様は食堂に向かって行った。
「ふー」
思わず息を吐いてしまった。
「余計な口を出して申し訳ありませんでした」
側仕えの方も残ったので、余計な口を出したことに謝罪した。恨まれても嫌だしね。
「いいのよ。余ったものはわたしたちが飲まなくちゃならないからね。美味しくなるならそれに越したことはないわ。あの紅茶、本当に苦いから」
側仕えの方もあれには辟易していたそうだ。でも、貴族としての嗜みとかで飲まなくちゃならないとか。でも、お嬢様は嫌いなそうで、その余りは側仕えの方々で処理しなくちゃならないんだってさ。もったいないってことでね。
……絶対、この世界の元になっているのは日本人だわ……。
「さあ、わたしたちも食事を済ませるわよ」
お嬢様が朝食している間、側仕えの方が一人残り、もう一人の方と朝食を摂るそうだ。
昨日でわかったけど、やはりお城の食事は質素なもの。パンと野菜スープが基本で、朝はチーズが付いていた。せめて玉子焼きを出してもらいたいものだわ。
お嬢様たち伯爵一家の食事は長いそうなので、朝食はゆっくり食べられるそうだ。
体感で四十分。また歯を磨く。
「それ、何なの?」
歯ブラシで歯を磨いていたら側仕えの方に歯ブラシのことを訊かれたので教えた。別に秘密でもないし、秘密で使うこともできないからね。
「どこで買ったの?」
「自分で作りました。わたし、手先が器用なので」
「これ、もうないの? あれば売って欲しいのだけれど」
「代えが一本あるのでいいですよ」
猪の毛はまだあるし、木材も鞄に入れてきた。作るのは難しくないわ。
「銅貨五枚でいいですよ」
余った材料で作ったものだけど、屋台でお城で働く人の給料がどのくらいか大体は把握できた。側仕えの給料なら銅貨五枚くらいは余裕で出せるはずだわ。
「そんな値段でいいの?」
「家に帰れば予備がありますので」
ずっとお城に缶詰めってわけじゃない。七日に一回は家に帰られるそうよ。あと、何か行事があってお嬢様がいないときも休みになるそうだ。
歯ブラシの使い方を教え、すっきりしたようで、また売って欲しいとお願いされた。
了解し、お金は後で、ってことで、お嬢様の部屋に向かった。