キャロルの記憶からここはパルセカ村と言うらしい。
らしいと言うのはキャロルがうっすらにしか覚えてないから。村で通じるからパルセカって名前がなかなか出てこなかったのよ。
わたしも前世の住所なんて知らないも同然。何県だったかも怪しいものよ。
まあ、それはいいとして、キャロルは十歳。ここでは立派な働き手みたい。朝食が終われば水汲みがわたしの仕事となる。
水道なんてものはなく、家に水瓶があって、そこに水を溜めるようだ。
漫画で見たことあるけど、まさか仕事としてやらされるとはね。楽しいじゃない!
ただ、井戸から水を汲んで水瓶に溜めるだけの行動なのに、不思議と楽しかった。
と言うか、キャロルって凄くない? 五往復しても疲れてないわ。前世のわたしなら一回で死んでいるわ。
「健康って何て素晴らしいんだろう!」
キャロルは嫌だったみたいだけど、前世のわたしは体が動くことに楽しくて仕方がなかった。
「今日はやけに張り切っているわね? いつもは嫌がってんのに」
お母ちゃんもいつもと違うキャロルに訝しげになっていた。
まあ、仕方がないわよね。十歳の女の子が生きるための仕事を楽しいと思うわけないしね。
「他にやることある?」
「本当に今日はどうしたんだい? 熱でもあるのかい?」
おでこに手を当てられてしまった。
「熱はないわ。超元気よ」
「ちょ、ちょう? なんだい?」
おっと。前世のわたしが出てしまった。しばらくはキャロルとして生きないとね。
キャロルの記憶に前世のわたしがプラスされた感じだから、キャロルの魂を奪ったわけじゃないはず。二つの記憶が落ち着くまでは、いつものキャロルを家族に見せておくとしましょう。
「まあ、いいわ。なら、裏の畑の草むしりでもしておくれ」
「わかった」
お母ちゃんから平籠を受け取り、家を出て裏の畑に向かった。
この畑は自分たちで食べるようの畑で、芋や豆、葉物類が植えてある。
今の季節は春かしら? 今の畑には芋が半分。残りは春豆とミニトマトみたいなものが収穫を待っていた。
草むしりは記憶にあるので、雑草をむしり、平籠に入れた。雑草は潰して肥料にするみたいよ。
やはりキャロルは体力があるのか、お昼まで続けても疲れることはなく、粗方草をむしってしまったわ。
──ぐぅ~。
こ、これは、お腹の虫が鳴いたってヤツ? これが空腹なのね!
キャロルは空腹になることが嫌みたいだけど、わたしは初の空腹に感動してしまった。
「キャロ! お昼だよ!」
昔は二食が当たり前だと聞いたことあるけど、ここでは朝昼晩と食べるみたい。家はボロいけど、うちって裕福なのかしら?
井戸で手と顔を洗い、家に入るとお父ちゃんがいた。
お父ちゃんは離れた畑で麦を育てている、らしい。わたしはまだ家の回りしか動けないので、そこに行ったことはないのよね。
「キャロ。今日はやけにがんばっているみたいだな」
近所に同年代の子がいないからキャロルが怠け者かはわからないけど、記憶からは結構働いているように思えるんだけどな~?
「まーね!」
下手な言い訳はせず、テーブルについた。
昼は朝と同じ茹でた芋と黒いパン。そして、朝に作った塩スープだ。
代わり映えのしない食事だけど、わたしには味があって歯応えがあるものはご馳走だ。残さずいただいた。
「ご馳走さまでした!」
って、また言っちゃったよ。日本人の心は魂にまで刻まれているの?
「お母ちゃん、次は何する?」
「本当に今日はどうしたんだい? いつも仕事を渋ってんのに」
キャロル、あなたって子は。まあ、わたしの前世がアレだしね。普通に生きてたらこんな生活嫌かもしれないわね……。
でも、前世のわたしはこの生活を楽しいと思っている。この自由に動ける体を堪能したいのよ!
「草むしりは終わったのかい?」
「うん。畑の中は粗方終わったよ。外のほうもやる?」
「いや、外のほうはいいよ。虫が畑に来ちゃうからね」
へー。周りの草を生やしてるのってそう意味があったんだ。農業、奥が深いわ~。
「それなら縄の編み方でも教えたらどうだ? キャロも十歳だし、手仕事を覚えるのもいいだろう」
縄? って縄のことよね?
「そうだね。キャロでも縄くらいなら編めるだろうね」
キャロル、不器用なの? 記憶にはそんなことないみたいだけど……。
洗い物も木皿とお椀が三つだけなので手伝うこともなく、藁を置いてある納屋に向かった。
あ、ここ、ネズミがよく巣くっていた記憶があるわ。
「ねぇ、お母ちゃん。ネズミって食べられるの?」
「ネズミ? まあ、食べられないことはないけど、病気とか持っているかもしれないから死んでいても食べるんじゃないよ。あんたはよく落ちてるもの食べちゃうんだから」
確かに木の実とか食べてた記憶がある。そのあとお腹壊していたわ。
……キャロルぅ……。
「ネズミは食べないよ。でも、お肉は食べてみたいかな」
滅多なことでは食卓に上がらない。キャロルの記憶にも肉を食べた記憶がないわ。
「今度、市場に行ったときにあったらね」
市場? この村にも市場があるんだ。行ってみたいわ。
らしいと言うのはキャロルがうっすらにしか覚えてないから。村で通じるからパルセカって名前がなかなか出てこなかったのよ。
わたしも前世の住所なんて知らないも同然。何県だったかも怪しいものよ。
まあ、それはいいとして、キャロルは十歳。ここでは立派な働き手みたい。朝食が終われば水汲みがわたしの仕事となる。
水道なんてものはなく、家に水瓶があって、そこに水を溜めるようだ。
漫画で見たことあるけど、まさか仕事としてやらされるとはね。楽しいじゃない!
ただ、井戸から水を汲んで水瓶に溜めるだけの行動なのに、不思議と楽しかった。
と言うか、キャロルって凄くない? 五往復しても疲れてないわ。前世のわたしなら一回で死んでいるわ。
「健康って何て素晴らしいんだろう!」
キャロルは嫌だったみたいだけど、前世のわたしは体が動くことに楽しくて仕方がなかった。
「今日はやけに張り切っているわね? いつもは嫌がってんのに」
お母ちゃんもいつもと違うキャロルに訝しげになっていた。
まあ、仕方がないわよね。十歳の女の子が生きるための仕事を楽しいと思うわけないしね。
「他にやることある?」
「本当に今日はどうしたんだい? 熱でもあるのかい?」
おでこに手を当てられてしまった。
「熱はないわ。超元気よ」
「ちょ、ちょう? なんだい?」
おっと。前世のわたしが出てしまった。しばらくはキャロルとして生きないとね。
キャロルの記憶に前世のわたしがプラスされた感じだから、キャロルの魂を奪ったわけじゃないはず。二つの記憶が落ち着くまでは、いつものキャロルを家族に見せておくとしましょう。
「まあ、いいわ。なら、裏の畑の草むしりでもしておくれ」
「わかった」
お母ちゃんから平籠を受け取り、家を出て裏の畑に向かった。
この畑は自分たちで食べるようの畑で、芋や豆、葉物類が植えてある。
今の季節は春かしら? 今の畑には芋が半分。残りは春豆とミニトマトみたいなものが収穫を待っていた。
草むしりは記憶にあるので、雑草をむしり、平籠に入れた。雑草は潰して肥料にするみたいよ。
やはりキャロルは体力があるのか、お昼まで続けても疲れることはなく、粗方草をむしってしまったわ。
──ぐぅ~。
こ、これは、お腹の虫が鳴いたってヤツ? これが空腹なのね!
キャロルは空腹になることが嫌みたいだけど、わたしは初の空腹に感動してしまった。
「キャロ! お昼だよ!」
昔は二食が当たり前だと聞いたことあるけど、ここでは朝昼晩と食べるみたい。家はボロいけど、うちって裕福なのかしら?
井戸で手と顔を洗い、家に入るとお父ちゃんがいた。
お父ちゃんは離れた畑で麦を育てている、らしい。わたしはまだ家の回りしか動けないので、そこに行ったことはないのよね。
「キャロ。今日はやけにがんばっているみたいだな」
近所に同年代の子がいないからキャロルが怠け者かはわからないけど、記憶からは結構働いているように思えるんだけどな~?
「まーね!」
下手な言い訳はせず、テーブルについた。
昼は朝と同じ茹でた芋と黒いパン。そして、朝に作った塩スープだ。
代わり映えのしない食事だけど、わたしには味があって歯応えがあるものはご馳走だ。残さずいただいた。
「ご馳走さまでした!」
って、また言っちゃったよ。日本人の心は魂にまで刻まれているの?
「お母ちゃん、次は何する?」
「本当に今日はどうしたんだい? いつも仕事を渋ってんのに」
キャロル、あなたって子は。まあ、わたしの前世がアレだしね。普通に生きてたらこんな生活嫌かもしれないわね……。
でも、前世のわたしはこの生活を楽しいと思っている。この自由に動ける体を堪能したいのよ!
「草むしりは終わったのかい?」
「うん。畑の中は粗方終わったよ。外のほうもやる?」
「いや、外のほうはいいよ。虫が畑に来ちゃうからね」
へー。周りの草を生やしてるのってそう意味があったんだ。農業、奥が深いわ~。
「それなら縄の編み方でも教えたらどうだ? キャロも十歳だし、手仕事を覚えるのもいいだろう」
縄? って縄のことよね?
「そうだね。キャロでも縄くらいなら編めるだろうね」
キャロル、不器用なの? 記憶にはそんなことないみたいだけど……。
洗い物も木皿とお椀が三つだけなので手伝うこともなく、藁を置いてある納屋に向かった。
あ、ここ、ネズミがよく巣くっていた記憶があるわ。
「ねぇ、お母ちゃん。ネズミって食べられるの?」
「ネズミ? まあ、食べられないことはないけど、病気とか持っているかもしれないから死んでいても食べるんじゃないよ。あんたはよく落ちてるもの食べちゃうんだから」
確かに木の実とか食べてた記憶がある。そのあとお腹壊していたわ。
……キャロルぅ……。
「ネズミは食べないよ。でも、お肉は食べてみたいかな」
滅多なことでは食卓に上がらない。キャロルの記憶にも肉を食べた記憶がないわ。
「今度、市場に行ったときにあったらね」
市場? この村にも市場があるんだ。行ってみたいわ。