朝食を食べたらお昼のお弁当を包み、市場で売るためのものを背負子に積み込んだ。
ティナには籠や笊を棒に下げてもらい出発する。
「雨が降らないといいわね」
今日はちょっと曇り空。天気予報もないから不安だわ。
「うん。でも、最近降ってないから降って欲しいっておじ様が言ってた」
何気に様呼びが上品な響きのよね。本当はいいところの出なのかな?
市場は前に来たときと同じくらいの感じで、兵士さんに今日売る籠と竹水筒を渡して市場に入った。
蓙が敷かれたほうに向かい、左右に店を出してない一角で商売することにした。
「市場、か。ちょっと緊張する」
「わたしも最初のときは緊張したわ」
それ以上に楽しみもあったけどね。
蓙を敷き、売り物の籠や笊、竹水筒、そして、矢を並べた。
「買いにくるかな?」
「どうだろうね? まあ、のんびりやりましょう」
珍しいものを売るわけじゃない。売れなくても仕方がないものばかりなんだから意気込まず、のんびり待つとしましょうか。
まあ、ただ待つってのも暇なので、石の鏃を削るとする。
ある程度形は出来ているので、砥石で研ぐだけ。ただ、水をちょくちょく汲みに行かないとならないのが面倒だけどね。
「……キャロル、暇……」
水汲みから帰って来ると、ティナが泣き言を口にした。いや、表情でも語っているわね。
「暇なら市場を見てきてもいいわよ。わたしが見てるから」
誰一人として見に来る者はなし。二人でいる必要はないわ。まあ、わたしは鏃を研いでるだけなんだけどね。
「キャロルがいかないならいい」
何気に人見知りなところがあるティナ。山奥で暮らしてたからコミュニケーションの取り方がわからないんでしょうね。
「じゃあ、ちょっと遊びましょうか」
「遊び?」
「そうよ」
わたしたちの前に店を開いている人はいないので、三メートルくらい離れた場所に円を描き、四重丸にした。
「石がないし、矢を使いましょうか」
万が一のときのためにティナに弓矢を持ってきてもらっている。
ちょうど矢は六本。三本ずつ分け、まずはわたしが円に向かって矢を投げてみる。要はダーツね。
「丸の真ん中に当てたほうが勝ちよ。ティナ、やってみて」
ちなみにわたしの矢は円から外れました。
「わかった」
ティナはひょいって投げると、円の中に入った。さすがね。
何回かやると、ティナは二重丸の中に刺せるようになった。わたしは円の中に入ったり入らなかったりね。わたし、ノーコンやん。
「わたしじゃティナに勝てないから左でやってよ」
「わかった」
それでもティナのコントロールは凄いもので、三重丸の中には入っていて、わたしが勝てることはなかった。
「ティナは矢の後ろのほうを持って投げてよ。全然勝てないっ!」
「……仕方がないな……」
それでどっこいどっこいになり、やっとこさわたしが勝てた。
なんてことやっていたら人が集まり出し、おじちゃんがやらして欲しいと言ってきた。
「じゃあ、小銅貨一枚ね」
ここはお金を取るところだと思って言ってみたらおじゃんがすんなり小銅貨を一枚払ってくれた。
「ティナ、相手してあげて。おじちゃん。ティナに勝ったら小銅貨は返すよ」
勝負のほうが燃えるはずだとティナに相手させることにした。
「よし、いいだろう。嬢ちゃん、勝負だ」
「三本勝負で一番真ん中に当てたほうか勝ちだからね」
おじちゃんとの勝負はもちろん、利き手でやったティナの勝ち。
「もう一勝負だ!」
勝負魂に火が点いたようで、小銅貨を一枚出してきた。
それから三度、勝負を挑んできたが、ティナには勝てず仕舞い。怒るかな? と心配したけど、やりたい人が出てきておじちゃんを押し退けた。
「次はおれだ。ほら、小銅貨一枚な」
そのおじちゃんも三回勝負したけど、ティナには勝てず仕舞い。ただ、結構いい勝負だった。
「おじちゃん、上手いね! ティナに勝ちそうだったじゃない!」
下手に機嫌を損ねられても困ると、おじちゃんを煽てた。
「まーな。これでも昔は冒険者をしてたんだぜ」
「どおりで強いわけだよ! 練習されたらティナも危ないよ!」
わたしの煽てに満更でもないようで、鼻の穴を大きくしていた。チョロいな、このおじちゃん。
「次はおれにやらせてくれ!」
そこからは三番勝負にして、ティナと競わせた。
お昼を過ぎても挑む人はやってきたので、別の人との勝負を勧め、矢を銅貨一枚で売ったら即完売。もっと作っておくんだったよ。
ただ、人が集まると、なぜか他の物も買ってくれる不思議。すべてを完売してしまった。
小銅貨三十八枚。銅貨十四枚になってしまった。わたし、商売の才能があったりする?
なんてね。儲けたとは言え、物語の転生者からしたら雑魚みたいなものね。リバーシ、わたしやったことないし。
「ティナ。お肉買って帰ろうか」
この世界でお金持ちになるより、美味しいものを食べるためにお金を使いたい。わたしは花より団子な女の子なのよ。
「うん。豚肉食べたい!」
鳥には鳥の美味しさはあるけど、やはり豚肉のほうが食べ応えがある。明日の分も買うとしましょうかね。うふふ。
ティナには籠や笊を棒に下げてもらい出発する。
「雨が降らないといいわね」
今日はちょっと曇り空。天気予報もないから不安だわ。
「うん。でも、最近降ってないから降って欲しいっておじ様が言ってた」
何気に様呼びが上品な響きのよね。本当はいいところの出なのかな?
市場は前に来たときと同じくらいの感じで、兵士さんに今日売る籠と竹水筒を渡して市場に入った。
蓙が敷かれたほうに向かい、左右に店を出してない一角で商売することにした。
「市場、か。ちょっと緊張する」
「わたしも最初のときは緊張したわ」
それ以上に楽しみもあったけどね。
蓙を敷き、売り物の籠や笊、竹水筒、そして、矢を並べた。
「買いにくるかな?」
「どうだろうね? まあ、のんびりやりましょう」
珍しいものを売るわけじゃない。売れなくても仕方がないものばかりなんだから意気込まず、のんびり待つとしましょうか。
まあ、ただ待つってのも暇なので、石の鏃を削るとする。
ある程度形は出来ているので、砥石で研ぐだけ。ただ、水をちょくちょく汲みに行かないとならないのが面倒だけどね。
「……キャロル、暇……」
水汲みから帰って来ると、ティナが泣き言を口にした。いや、表情でも語っているわね。
「暇なら市場を見てきてもいいわよ。わたしが見てるから」
誰一人として見に来る者はなし。二人でいる必要はないわ。まあ、わたしは鏃を研いでるだけなんだけどね。
「キャロルがいかないならいい」
何気に人見知りなところがあるティナ。山奥で暮らしてたからコミュニケーションの取り方がわからないんでしょうね。
「じゃあ、ちょっと遊びましょうか」
「遊び?」
「そうよ」
わたしたちの前に店を開いている人はいないので、三メートルくらい離れた場所に円を描き、四重丸にした。
「石がないし、矢を使いましょうか」
万が一のときのためにティナに弓矢を持ってきてもらっている。
ちょうど矢は六本。三本ずつ分け、まずはわたしが円に向かって矢を投げてみる。要はダーツね。
「丸の真ん中に当てたほうが勝ちよ。ティナ、やってみて」
ちなみにわたしの矢は円から外れました。
「わかった」
ティナはひょいって投げると、円の中に入った。さすがね。
何回かやると、ティナは二重丸の中に刺せるようになった。わたしは円の中に入ったり入らなかったりね。わたし、ノーコンやん。
「わたしじゃティナに勝てないから左でやってよ」
「わかった」
それでもティナのコントロールは凄いもので、三重丸の中には入っていて、わたしが勝てることはなかった。
「ティナは矢の後ろのほうを持って投げてよ。全然勝てないっ!」
「……仕方がないな……」
それでどっこいどっこいになり、やっとこさわたしが勝てた。
なんてことやっていたら人が集まり出し、おじちゃんがやらして欲しいと言ってきた。
「じゃあ、小銅貨一枚ね」
ここはお金を取るところだと思って言ってみたらおじゃんがすんなり小銅貨を一枚払ってくれた。
「ティナ、相手してあげて。おじちゃん。ティナに勝ったら小銅貨は返すよ」
勝負のほうが燃えるはずだとティナに相手させることにした。
「よし、いいだろう。嬢ちゃん、勝負だ」
「三本勝負で一番真ん中に当てたほうか勝ちだからね」
おじちゃんとの勝負はもちろん、利き手でやったティナの勝ち。
「もう一勝負だ!」
勝負魂に火が点いたようで、小銅貨を一枚出してきた。
それから三度、勝負を挑んできたが、ティナには勝てず仕舞い。怒るかな? と心配したけど、やりたい人が出てきておじちゃんを押し退けた。
「次はおれだ。ほら、小銅貨一枚な」
そのおじちゃんも三回勝負したけど、ティナには勝てず仕舞い。ただ、結構いい勝負だった。
「おじちゃん、上手いね! ティナに勝ちそうだったじゃない!」
下手に機嫌を損ねられても困ると、おじちゃんを煽てた。
「まーな。これでも昔は冒険者をしてたんだぜ」
「どおりで強いわけだよ! 練習されたらティナも危ないよ!」
わたしの煽てに満更でもないようで、鼻の穴を大きくしていた。チョロいな、このおじちゃん。
「次はおれにやらせてくれ!」
そこからは三番勝負にして、ティナと競わせた。
お昼を過ぎても挑む人はやってきたので、別の人との勝負を勧め、矢を銅貨一枚で売ったら即完売。もっと作っておくんだったよ。
ただ、人が集まると、なぜか他の物も買ってくれる不思議。すべてを完売してしまった。
小銅貨三十八枚。銅貨十四枚になってしまった。わたし、商売の才能があったりする?
なんてね。儲けたとは言え、物語の転生者からしたら雑魚みたいなものね。リバーシ、わたしやったことないし。
「ティナ。お肉買って帰ろうか」
この世界でお金持ちになるより、美味しいものを食べるためにお金を使いたい。わたしは花より団子な女の子なのよ。
「うん。豚肉食べたい!」
鳥には鳥の美味しさはあるけど、やはり豚肉のほうが食べ応えがある。明日の分も買うとしましょうかね。うふふ。